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[マッチレビュー]2018年明治安田生命J1リーグ第9節ヴィッセル神戸戦レビュー なぜグランパスは勝てなくなったのか

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ヴィッセル神戸戦は3-0で敗れました。シャビエルの復帰で大きく期待は膨らみましたが、残念ながら勝利を掴むことはできませんでした。それは何故なんでしょうか。

戦術的なチョーク・ポイントである小林裕紀

名古屋グランパスの攻撃は、多くの場合小林裕紀から始まります。DFラインから直接前列にパスを繋げればいいのですが、グランパス対策として、DFへのハイプレスが常態化している状態なので、そこへの対策として攻撃の開始時には小林裕紀がDF二人の間まで場所を移してボールを受け取ります。センターバック2人にプレスが掛かったとき、3人目が居れば計算上はプレスをかわすことができるはずです。

このような手法のことを「サリーダ・ラボルピアーナ」と呼びます。詳細はフットボリスタの記事をご覧いただくこととして、この3人目の役割を担当するのが、ほぼ小林裕紀であるということが問題なのです。

地政学という分野の学問では、「絞めることで、相手を苦しめられるポイント」をチョーク・ポイントと呼びます。たとえば日本という国は石油が輸入できないと直ぐに破綻してしまいます。海を通じて石油は輸入されるので、一見どんなルートでも運んでこれるように思えます。実はそうではなくて、海上のルートでは必ず通らなければならない「海峡」のような狭い場所を塞がれたら、途端に運ぶことができなくなります。その狭い場所はホルムズ海峡マラッカ海峡などです。これこそがチョーク・ポイントです。

小林裕紀を必ず経由する、ということは小林裕紀を自由にさせないことで、パスを前方に出すことが難しくなります。小林裕紀へのプレスがきつくなったり、終盤小林裕紀が疲れてくると、「苦し紛れのロングボール」が守備陣に増えて、それをすぐに奪われて攻撃されてしまうというシーンを神戸戦でもよく見た光景ではないでしょうか。

また必ずそこにボールが来るということは簡単に奪えるということです。鹿島戦の2点目を見てみて下さい。

終わり近く、4分18秒のあたりから見ていただいてわかるように、フォローのためにDFラインに下がった小林裕紀に対して、鹿島FWが猛然とプレスをかけています。そしてボールを奪ったことでほぼフリーでシュートを打つことができたわけです。

このシーンでは攻撃に重心がかかって、周囲に選手が少なく、パスの出しどころが少なくてその間にプレスを受けてしまったということになります。本職のDFの選手に比べて身体がそれほど強いわけではない小林裕紀は、ボールの取りどころとして完全に狙われているのが現状です。

ではどうすればいいのでしょう。小林裕紀を下げてもプレスをかわせないとしたら、もう1枚の選手がDF近くまで下がればいいのでしょうか?

これについてはノーです。下がる人数が増えてしまっては、ボールのラインよりも前にいる人数が1人減り、前方へのパスコースが少なくなるというデメリットが出てきてしまうのです。

だとしたら、周囲の選手はもっとパスコースを作るべきなのです。風間八宏監督のメソッドであればそうなるはずです。小林裕紀にすべてを任せるのではなくて、周囲がパスコースを作り、パスを回せるようにする。鹿島アントラーズ戦の2失点目のような状況はダイレクトでパスを回すことができる相手が居れば生まれませんでした。

小林裕紀に頼り過ぎ、フォローが少なすぎ」これがグランパスの勝てない理由の1つ目です。

相手ペナルティーエリア脇に侵入したときの問題

神戸戦でもよく見られた光景が、サイド、特に相手ペナルティーエリア脇に侵入した後にチャンスをふいにしてしまうというものです。

  1. ボールを奪う
  2. サイドに繋いでいく
  3. サイドで細かく繋ぐ
  4. 神戸の激しいプレスを受ける
  5. ミスが出て、ボールを奪われる

グランパスサポーターなら、嘆息しながら上記のような光景を見た覚えは絶対にあるでしょう。

完調のシャビエルなら、4の激しいプレスにも負けずボールをキープしてくれるでしょう。ともすれば相手のプレスをかわすことで、決定的なチャンスを作ってくれたかもしれません。

しかし神戸戦のシャビエルは、太もも裏側のテーピングも痛々しく、完調にはほど遠いコンディションだったことがわかります。チームのために無理をおして出場してくれたのがわかりました。この状態のシャビでは相手選手を剥がせません。

それでもいくつもチャンスを作ってくれていましたが、決め手にはなり得ませんでした。

それ以外にペナルティーエリア角を使いこなすことができるポジションの選手は誰でしょう。秋山陽介、宮原和也の両翼。和泉竜司、青木亮太、長谷川アーリアジャスールらのハーフの選手がそれにあたるでしょうか。

比較的左サイドでごちゃごちゃすることが多いのは、和泉竜司と秋山陽介の組み合わせが多いと思います。必死で二人でパスコースを作りながら崩そうとしていますが、対応されてしまっています。理由は多々あると思います。

グラぽが一番気になっている現象があります。それはペナルティーエリア脇まで攻め込んでしまうと、プレーの選択肢が1)すぐ後ろへのパスか、2)間を抜けるスペースへのパス、3)特攻ドリブルくらいしかないことです。

守備をする視点で考えてみましょう。1)すぐ後ろへのパスは黙って下げさせて、その間に自分たちの陣形を整えることができます。ですから放置してもいいでしょう。

そこから大きく逆サイドに振って、守備の弱いポイントを突くなんていうことはありません。唯一前半終わり頃にシャビエルがペナルティーエリア反対側にいた深堀隼平に目の覚めるようなパスを渡して決定的なチャンスを作ったくらいです。

今の名古屋相手であれば、ボールのあるサイドにかなり守備の人数を割いても安全に守れます。すると局地的に数的な優位を簡単に作れます。そうすれば、より守りやすくなります。

2)のように、間を抜けるパスは、数的不利の状態では通りづらいです。無理目の強いパスを出すしかないので、そうなると単純に合いません。神戸戦でもそんなシーンを何度となく見かけました。

3)の特攻ドリブルはJ2相手でも成功することは少なかったと思いますが、J1相手に密集のなかにドリブルで突っ込むのは無理です。結局後ろを向いてボールキープに入ろうとすることになり、そこから奪われるということになります。

今の名古屋の問題点は、このサイドに持ち込んでごちゃごちゃしているなかから相手のミスを待つというプレーばかり選択していることではないかと思います。

守備する側は、相手のプレーの選択肢が多ければ多いほど迷います。迷えば、迷うだけミスをする可能性が増えます。ミスを起こした時こそ得点チャンスです。

ルヴァンカップグループステージの広島戦の勝利を思い出してみて下さい。名古屋らしいボールのつなぎだけではなくて、縦に速い攻撃を織り交ぜることでそこから2得点を奪うことができました。相手がこちらのプレーを読めなくなったことで出来た得点だと思われます。

逆に相手にこちらのプレーの選択肢を読まれたら、どんなスーパープレイヤーであっても局面を打開するのは難しいでしょう。グランパスの選手は、UEFA Champions Leagueに出てくるような個人戦術のお化けではありません。個人戦術だけで打ち勝つのは無理です。パスやドリブルでペナルティーエリア脇に持ち込むばかりという以外の選択肢が必要です。

今現在、青木亮太も和泉竜司も、その他の選手を含めてどうにもプレーの選択が悪くなっているように外から見えます。これがグランパスが勝てない2つ目の理由だと思います。

シャビエルに頼りすぎ

最後に挙げたい勝てない理由が、シャビエルへの過度の依存です。広島戦の勝利を含めて、その前の何試合かで札幌戦ほどの悪い状況から脱しつつあると感じていました。

鹿島アントラーズ戦は2点を奪われ敗戦しましたが、それほど内容が悪かったとは個人的には思っていません。そこからの広島戦の勝利だったので期待をしたのですが、シャビエルが復帰するとすぐに良い流れがなくなってしまいました。

まるで広島戦がなかったかのような試合運びでした。

この神戸戦では、サイドを蹂躙していた高橋峻希に対してシャビエルを途中から当てて、勢いを止めようとしていましたが、それも今のシャビのコンディションでは無理でした。むしろシャビの勢いを止めてしまう結果になったのです。

このチームに今のシャビエルを融合させるためには、シャビエルに依存して、縛りをかけてしまうのは望ましくないと思っています。守備の負担を含めていいことはないでしょう。

チームとして、シャビエルが気持ち良くプレーができるような形を作るべきだとグラぽは考えます。そうなるとしばらくはシャビエルはフリーロールでジョーと2トップ、守備の負担を免除してあげるのが良いのではないでしょうか。

上記のような弱点なんて監督やコーチはとっくに判っている

指導経験のない素人ではなく、プロで選手を経験し、監督歴も10年を超える風間八宏監督がこのような弱点に気づいていないとは思いません。

しかし、どれだけ言葉を尽くして指導をしたとしても、プレーするのは選手です。

イギリスのことわざで、「You can take a horse to the water, but you can’t make him drink.」と言うものがあります。 馬が水を飲むかどうかは馬次第なので、人は他人に対して機会を与えることはできるが、それを実行するかどうかは本人のやる気次第であるという意味です。

監督が指示を出したとしても、それを実行するのは選手です。育成に長らく携わってきたものとして言うと、育成者がどんなに頑張ってもうまく動いてくれないことはあるものです。でも手を変え品を変え、育成者はうまく動いて貰うように工夫します。

今はそういう段階に入っているのだと自分は解釈しています。

まだ25試合残っている

これで6試合連続の敗戦ということになりましたが、25試合残っています。ましてや今年はワールドカップという中断期間も待っています。立て直すチャンスはまだまだあります。

下を向くにはまだ早いです。

チーム好きの人も、個人が好きな人も、是非ここからまた一緒に応援していきましょう。

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About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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