グラぽ

名古屋グランパスについて語り合うページ

メニュー

2019年第4節FC東京戦プレビュー

FC東京は、グランパスの今シーズンを占う試金石である

名古屋グランパスにとって、FC東京は決して得意な対戦相手ではありません。

思い出して欲しいのです。具体的に苦手意識を覚えるようになったのは、2010年に優勝した直後の試合にとんでもない敗戦を食らった頃からでしょうか。昨年もシーズン・ダブル(ホーム&アウェイ両方とも負けること)を食らったことは記憶に新しいでしょう。どちらの試合でも元名古屋グランパスの永井謙佑に失点しての敗戦でした。

チームが目標と掲げているACLを狙うとしたら、勝ち点70がだいたい必要です。ということは22勝4分8敗の成績で34試合を終えなければなりません。

そうなると8敗しかできないのです。昨年8敗目は早くも4月28日に達成してしまいました。奇しくも対戦相手はFC東京。2:3で敗れました。

8敗なんてあっという間なのです。昨年と同じようにシーズン・ダブルを食らったら、それだけでもう負けられる試合の25%を占めてしまうことになります

昨年と同じようにいいようにやられるようでは、目標の達成は難しくなってしまうでしょう。昨年のグランパスとは違うんだ、ということを証明するには、とても大事な試合だということです。

なぜグランパスはFC東京を苦手なのか

昨年までのグランパスが苦手だったわけ

風間八宏監督のサッカーは、熟成されていないうちは特に攻めに時間が掛かります。きちんと動いて、相手のマーク外して、相手の守備組織を崩して相手にダメージを与えよう、というのがだいたいの形です。

ただ、相手の組織を崩せなかったらどうなるでしょう?

  • →ずっと相手のペナルティーエリアの周りでパスを回し続けることになります。
  • →崩せず時間が掛かりすぎると、そのうちにグランパス側にミスが出て、ボールを奪われます。
  • →選手がみんな攻め上がっているので、ミスが出たときにはDF1枚ないしは2枚しかグランパス側陣内には残ってません。
  • →すると、2017年の大分トリニータ戦のように、キーパー1人に対して相手フォワード3人、なんていう失点の予感しかしないようなシーンが出来上がります。

FC東京は昨年まで韓国代表の主力だったチャン・ヒョンスを中心として固い守備を誇っています。しかも中盤も前線も守備の意識が高いという特徴があります。相手チームからは、DFーMFーFWの三重の壁がそびえ立っているかのようにも見えるでしょう。その壁を崩せないままミスをして、カウンターを食らって失点、というシーンが多く見られました。

アウェイ

ホーム

昨年度のゲームは結局どちらもミスが原因で1枚目(FW)や2枚目(MF)の壁を崩せずにボールを奪われ、失点、敗戦しました。

「名古屋の守備組織が」という声も多く聞かれましたが、それ以前に崩しきることができていないからです。たまにグランパスの試合で、ボールポゼッションが相手よりもものすごく多いのに敗戦してしまうことがあります。まさにそれがそのパターン。前掛かりに相手陣内でパスを回す。しかしゴールにはならない。それは怖くないです。

今年のグランパスが苦手かもしれないわけ

今年のグランパスは、いまのところ3連勝しています。最大の要因は守備の改善です。

2018年の奪取ポイント:http://www.football-lab.jp/summary/cbp_ranking/j1/?year=2018&data=gain

名古屋は最下位です。試合平均はトップの川崎が94.83に対して、名古屋は79.8でした。

2019年(3節まで)の奪取ポイント:http://www.football-lab.jp/summary/cbp_ranking/j1/?year=2019&data=gain

名古屋は2位で、試合平均は103.36ポイントになっています。これが名古屋の問題点を改善したわけです。29.5%の改善になりました。これだけ変われば成績が変わってもおかしくありません。

では、なんでボール奪取があれだけ改善できたのでしょうか。

グランパスのハイライン

[コラム] なぜ中谷進之介が生き残ったのかでも書いたように、今年のグランパスは、ジョアン・シミッチと米本拓司という「強烈な個」を活かすために、最終ラインと中盤の距離感を重要視していると(外側からは)見える戦術を取っています。

(ちなみに余談ですが小倉隆史監督時代は、イ・スンヒという守備的MFのところをボールの奪取ポイントに設定しながらも、最終ラインとの距離が開きすぎて、サポートがまったくできていませんでした。イ・スンヒだけではまったくボールを狩ることができずに最終ラインのところまで攻め込まれる状況になっていました。)

狭いところに面を作って追い込めば、相手チームにとっては選択肢を削ることができ、ボールの奪取もできやすくなります。米本拓司がいかにボール奪取に優れていたとしても、相手選手に選択肢がたくさんある状況ではボールを奪える可能性はそんなに高くないのです。グランパスのハイラインは「強烈な個」が輝けるよう作られた仕組みなのです。

もう一つ理解しておきたいことがあります。奪取ポイント最上位のサンフレッチェ広島のように、どこからでもボールを奪えるわけではありません。名古屋グランパスの奪取ポイントは、なんと1/3を大きく超える値が米本拓司・ジョアン・シミッチの二人で稼がれているのです。グランパスの好調が、この2人でのボール奪取によって支えられていることがわかるでしょうか。

KAGI(Keep Away from Goal Index)

Football labさんが提唱している、新しい指標がKAGIです。以下、説明ページ http://www.football-lab.jp/column/entry/712/ より引用します。

守備の際にどれだけ相手を前進させなかったか、相手を自陣ゴールに近づけなかったか」という観点から、チームの新守備指標「Keep Away from Goal Index」、略して「KAGI」を集計して公開します。具体的には、
・相手の攻撃時間のうち、自陣ゴールから遠い位置でボールを持っていた時間の割合が高い
・相手の攻撃が始まってから、自陣のペナルティエリアまで到達するのにかかった時間が長い
場合に高い評価となるように指標化しています。

http://www.football-lab.jp/summary/team_ranking/j1/?year=2019&data=chance より引用

いまのところ、グランパスはこのKAGIでトップの値を出しています。ハイライン戦術によって、できるだけボールをゴールから遠いところで保持していることがわかります。また守備のときも高い位置(MFのライン)でボールを奪えたり、そこで遅らせることができるのでこのような結果になっています。

守備に関して評価の高い(=披ゴールが少ない)名古屋・広島・FC東京がKAGIの値がばらけていることに注目して下さい。

FC東京はKAGIは低めで、ということは自チームの陣内でボールを保持したり、奪ったりしているということが想像できるでしょう。また、前線や中盤の守備で速攻を許していない、ということでもあります。

勘違いしてはいけないのは、ゴールを割らせていない(披ゴール)が少ないことが大事なわけで、グランパスが優れているとかFC東京が優れているというわけではありません。チームとしてのサッカーの組み立てが違うのです。

参考:披チャンス構築率

http://www.football-lab.jp/summary/team_ranking/j1/?year=2019&data=chance より引用

見どころ1:グランパスのハイライン対裏抜けのプロ

一件素晴らしく見えるグランパスのハイラインですが、万能の戦術はありません。ディフェンスラインを中盤に寄せると、寄せた分キーパーとディフェンスラインの間が開いてしまいます。人と人を寄せて、どこかに数的優位を作ったら、寄せた分どこかが空いてしまいます。

ガンバ大阪戦のレビューにもあったように、ハイラインを敷くということは、裏を狙われるということです。

2失点ともに、DFラインの裏にボールを出されてor抜けられて、の失点でした。

FC東京には永井謙佑とディエゴ・オリヴェイラという裏抜けのプロが2人います。ちょうどファン・ウィジョとアデミウソンがいたガンバ大阪戦と構図は変わりません。

ただガンバ大阪戦よりも悪いことに、既にガンバ大阪が名古屋を寄せて寄せて、余ったサイド(小野瀬康介)から裏への速いクロスを入れることでオウンゴールを誘うという、名古屋グランパス攻略の成功例を見せてしまっていることです。

間違いなくディフェンスラインの4人は対応に苦労をすることになるでしょう。中谷進之介と丸山祐市がどれだけ永井謙佑とディエゴ・オリヴェイラとの駆け引きに勝てるか。

見どころ2:FC東京の3重の壁をどう乗り越えるか

披失点の少ないFC東京は、前節のガンバ大阪と違って守備の面でも手強い相手です。森重・チャン・ヒョンスのセンターバックコンビは守備のポイントでもかなり高くなっています。日本代表室屋も素晴らしい働きを見せ、2枚目の壁(MF)である橋本拳人がかなり効いているのがおわかりいただけると思います。

http://www.football-lab.jp/fctk/report/ より引用

そして、今乗りに乗っているのが小川諒也です。奪取の項目を見てみましょう。

http://www.football-lab.jp/fctk/report/ より引用

ダントツで1位をたたき出しています。対面していた金崎夢生や原輝綺とのデュエル(1対1)に勝った、ということも大きいのかもしれません。いつものsofascoreで小川諒也の項目を見てみると、驚くほど高いのがデュエル(1対1)の数と勝率です。1試合平均で5.3のデュエルをしかけ、その半分に勝っているのです。

恐らく、FC東京はガンバ大阪と同じように横の揺さぶりや、片方のサイドに人数をかける、などの戦略を取ってくると思われます。そのなかで注意したいのが大外に位置する室屋成であり、ここで取り上げた小川諒也です。彼らが余ってサイドを破られると危険です。逆に彼らのところでボールを奪えると、大きなチャンスが広がることになります。ということは彼らとのデュエル(1対1)に勝たねばなりません。

小川諒也と対面するのが宮原和也であり、ガブリエル・シャビエルです。この3人のせめぎ合いにも是非注目して下さい。

https://www.sofascore.com/player/ryoya-ogawa/790973 より引用

ここからの試合、どれだけアタマを使って、ミスなくゲームを進行できるか。ヒリヒリした試合が続きます。

いい試合になることを祈りましょう!

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

Leave A Reply

*

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

Share / Subscribe
Facebook Likes
Tweets
Hatena Bookmarks
Pocket
Evernote
Feedly
Send to LINE