泣いた。
和泉竜司を始め選手のプレーに、
4万2千人以上入ったスタジアムの雰囲気に、
何よりも勝利に。
鯱の大祭典と銘打たれた一連のイベント・試合の中で、集客・営業的にはこの試合が最も重要だったはずだ。豊田スタジアムでの試合(キャパは充分)、小中高生1万人の無料招待、夏休み、お盆突入と人を集める要素が揃った。『当然4万人以上』の集客が目標と思われた一戦、実際に42,819人もの観客を集めた一戦。現地には、初めて、数回目、あるいは久しぶりの観戦のお子様と親御さんも多かったことでしょう。そんな(初めての)ファミリーにとって、この試合はどんな体験だったのか? いち観客ながら、自信を持って言いましょう、最高の体験だったと。また現地に来ればこういう体験をできる。是非とも現地に来て欲しい、と(残念ながら毎回こういう体験とは限らないけど、そこはまあ、うん、スポーツ観戦ってそういうもんだから………(^-^; )。
試合は3-0でグランパスの『完勝』。これほどまでに見事に勝ち切った試合は久しぶり。複数得点かつ無失点。ちょこっと危ない状況もあったけれど、この結果とそして見事な内容は、現地のファミリーも、画面越しのファミリーをも酔わせるものでしたね。順番に振り返っていきましょう。
試合のポイント
- 4-4-2に戻したグランパス
- 変化した守備
- 川崎の誤算、大島の試合直前の出場回避
- 川崎のミス
- 『潜る』和泉竜司と『開く』吉田豊
4-4-2に戻したグランパス
丸山のケガ以来、紆余曲折あったけれど、4-4-2へ回帰したグランパス。前節前々節の、押し込まれた後の攻撃時、後ろが重た過ぎる問題は4バック化で解決されました。この試合を見る限りでは、宮原がこの試合に間に合ったこと、藤井のプレーに目途が立ったことと、ネットのコンディション良化が大きなポイントだったのでしょう。
変化した守備
今シーズン序盤の4-4-2守備は、とにかく前から相手を抑えに行こうというものでした。
ところが、前から抑えに行ったところをかわされ、裏に蹴っ飛ばされてラインを下げられ………と、前から守備が無効化されるようになりました。加えて、ジョーのケガ、丸山と米本の離脱等もあり、チームとして不調に苦しんでいました。ところがこの試合では、とにかく前からではなく、守り方に変化が見て取れました。
前から前からいくのではなく、以前と比べてやや低めに構え、相手パスコースを限定しボールを絡め獲る。こうした理由は、裏に蹴っ飛ばされた場合のリスク低減、暑さとスタミナの考慮、それでも自分たちはボールを握って前へ攻めるんだ、そのあたりと思われます。そして、前節からいきなり変わっていたため、事前の想定が恐らく外され、川崎としても困ったのではないでしょうか。
川崎の誤算、大島の試合直前の出場回避
相手の中村憲剛が、試合後コメントで雄弁に語っていました。
”リョウタ(大島僚太)が出れなくなって、ヤマ(山村和也)が入ったのは無視はできないところ。ヤマが入った状態でうまくいくまでに時間がかかった。その間に2失点してしまった。そこで軽く混乱というか、攻守で自分たちが準備してきたことが出来なかった。そこは周りにいる選手の責任でもあるし、周りがうまくやるべきでもあった。”
引用元→ https://www.frontale.co.jp/goto_game/2019/j_league1/22.html
川崎屈指のトメルケールの申し子、抜群のパスセンスを誇り、攻守への貢献度の高い大島がいれば、グランパスの守備も或いはあっさり突破されていたかもしれません。ところが、大島ではなく山村がいるとの状況に、それ以外の選手達も含めてアジャストするのに時間がかかってしまったとのこと。他チームのことながら、コンディションの難しい選手の見切り発車的起用は難しいなと思わせられますね。
川崎のミス
実際に、グランパスの守備と大島不在の影響が表れていないかと、グランパスボールとなった=川崎のボールロスト回数を手元で数えてみました(画面越し目視、手元集計のため、数え間違いがあるかもしれません。すみません)。
前半で川崎がボールロストした回数は27回。その内、パスミスやトラップミスに加え、グランパスのパスカット(パスをカットできたという事は、川崎の攻撃がグランパスの想定内だったと思われるためカウント)によるロストが14回。
一方、後半では、ミスやグランパスのパスカットによるロストは5回まで減少。グランパス選手陣の体力の消耗によって守備が緩くなったこともあるでしょうが、前後半で数に違いがあり過ぎましたね。これでは前半のドタバタ2失点も当然というもの。
毎度のSofascoreでも、後半に川崎が盛り返していたとわかります。
『潜る』和泉竜司と『開く』吉田豊
グランパスでは和泉と吉田が左サイドで躍動していました。目に留まったのが潜る和泉と開く吉田。どういうことでしょうか。
和泉についてはこう。とにかく相手の間、間に居続け、ボールを受ける。間でボールを受けられるということは『剥がしている』わけで、川崎にしてみれば誰が捕まえに行くのか、なかなか悩ましかったのではないでしょうか。
対して、吉田は外に開いて、相手を引き寄せつつ、和泉の潜るスペースを作ってましたね。結果、グランパスの誇る左のコンビネーションが戻ってきました。
チームとして調子の悪かった頃、和泉は相手DFラインに張り付いちゃって、吉田は吉田で内側に入っちゃって、左が大混雑してたなんて状況が散見されました。狭いところを突破していけるのがグランパスの売りだけど、自分たちで狭くする必要は無いわけで、選手の距離感とは遠過ぎず近過ぎずが大事。難しいけど、吉田もまた殻を一つ破ったのかもしれませんね。
次は
この試合、DAZN解説の秋田さんがちょっと良いことを言っていました。要約すると
「困った時にチームそれぞれ立ち返るポイントがある。大きく分ければ『自分達でボールを持つ』か『守備』だ」
と。
グランパスは前から行くコンセプトへ回帰し、選手の『目が揃った』状態になりましたね。対して大島のアクシデントもあり混乱した川崎とでは、グランパス有利だったのは間違い無し。色々な要素はあったけど、久しぶりの完勝で最高の気分。ところがそんな気分に水を差すかのように、次の相手はソリサッカー松本山雅。こっちの良いところを潰して最少得点で勝点を拾おうとしてくる山雅を『いつも通り』真っ向から殴り倒せるか。今年のホームでは山雅に負けているだけに、アウェーで今度こそ勝てれば、チームはまた一つ自信を得られるのではないでしょうか。ソリサッカー松本山雅は難敵ながら、グランパスがより上の順位を狙うために絶対に勝たなければならない相手です(22試合で勝点19、12得点で、17位のチームに連敗してはならない………)。暑い夏の熱い勝利に期待しましょう。
最後に、このすばらしい現地体験よ
現地、リアルタイムでツイートもしたんですが、この試合でのスタジアムの雰囲気、僕の体感では2017J1昇格プレーオフ決勝戦以来のものでした。ひょっとしたら招待券その他の関係で、普段ゴール裏にいらっしゃる方が指定席にも流れていたのかもしれませんね。指定席エリアでも手拍子をする方が多く見られ(中にはチャントを歌う方もいらっしゃって)、スタジアムのグランパスファミリー全体が、勝ちたいんだという意思を応援に乗せていたように感じられました。このスタジアムを体験できたこと、自分も応援の一員となっていたこと、そして応援に背中を押されたかのような快勝。自分のグランパス応援の記憶にずっと残る試合の一つとなりました。素晴らしいファミリーによる素晴らしいスタジアムに酔いしれた素晴らしい夜、忘れないよ。