GOHさんの記事のなかに、ジョーのこんなコメントが含まれていました。
「日本人は能力、技術が高く、ウチのチームにはボランチをやってるかと思えば、サイドハーフ、フォワード、ウイングをやっていたり、ディフェンスをやる選手がいて、驚いたよ(笑笑)」
そう、誰もがニヤリと笑ってしまうその人は、和泉竜司。
欧州の有名選手に例えるなら、トラップならデニス・ベルカンプ。時折見せるトラップは、まるで磁石に吸い付くよう。ユーティリティーさで言えば、バルセロナのセルジ・ロベルト。彼同様に、やったことがないのはゴールキーパーだけ、というような選手です。ドリブルも正確でヌルヌルとしたものをもち、鋭い切り返しはDFを置き去りにします。
残念なことにベルカンプそのままとはいきません。たとえば見えている視界が良すぎるのか、それともイップスなのか、ここでクロスを上げない?普段見せる切り返し一発でクロス上げられるだろう?と思うこともあり、シュートもベルカンプのようには決まりません。あと少しなのかな、と思わされることが多いです。
2016年の入団。小倉隆史政権下では序盤でチャンスを掴みますが、すぐに怪我を負って離脱。その後はなかなか出場機会に恵まれませんでした。結局2016年は8試合の出場に留まりました。しかし小倉隆史監督(当時)が休養に入ることになる柏レイソル戦、そこで見せたライン際でドライブをかけた40mのスルーパスには度肝を抜かれました。
左サイドでパスを出したあと、そのまま駆け上がり、永井謙佑のパスを受けてラストパス。川又堅碁のゴールに繋げます。その時の感想は、「こいつはすげえ。本物だ!」そう思わせるだけのものがありました。
しかし、降格。チーム解体。
僕らサポーターからしてみれば未来のバンディエラ候補といっていいでしょう。地元出身で高校・大学サッカーの大スター。誰もが輝かしい未来を期待したはずです。
しかしここまで順調とは言い難かったのが和泉竜司のグランパス人生でした。2016年の降格を味わい、J2を経て、苦しい時期を過ごすことになります。
2018年のポジション遍歴
2017年も実はそうだったんですが、手元に記録が残っていなくて、2018年以降の記録になります。本当にどこでもやらされた、というのが和泉竜司でした。ザ・便利屋。
このまま和泉竜司は便利屋で終わってしまうのだろうか。そんな危惧を覚えながら見ていました。
- 左インサイドハーフ(4-3-3)
- 左インサイドハーフ(4-3-3)
- 左インサイドハーフ(4-3-3)
- 左インサイドハーフ(4-3-3)
- ベンチ外
- 右ウィング(4-3-3)
- 左ウィング(4-3-3)
- 左サイドバック(4-3-3)
- ベンチ:45分イン:左インサイドハーフ(4-3-3)
- 右ウィング(3-4-3)
- 左セントラルMF(4-4-2)
- 左サイドハーフ(4-4-2)
- 左インサイドハーフ(4-3-3)
- ベンチ:61分イン:右インサイドハーフ(4-3-3)
- 左インサイドハーフ(4-3-3)
- 左サイドバック(4-4-2)
- 右サイドバック(4-4-2)
- ベンチ:67分イン:左ストッパー(3-4-3)※延期のため30節後に実施
- 左セントラルMF(4-4-2)
- ベンチ:45分イン:左サイドハーフ(4-4-2)
- ベンチ外
- ベンチ:62分イン:左サイドハーフ(4-4-2)
- ベンチ:55分イン:左サイドハーフ(4-4-2)※ゴール
- ベンチ:62分イン:左サイドハーフ(4-4-2)
- ベンチ:58分イン:左サイドハーフ(4-4-2)※ゴール
- ベンチ:45分イン:左サイドハーフ(4-4-2)
- 左サイドハーフ(4-4-2)
- 左ストッパー(3-4-3)※延期のため31節後に実施
- 左セントラルMF(4-4-2)
- 左サイドハーフ(3-4-3)
- ベンチ:45分イン:左サイドハーフ(3-4-3)
- 左ストッパー(3-4-3)
- 左ストッパー(3-4-3)
- 左ストッパー(3-4-3)
2018年のポジション統計
左サイドハーフ | 10 |
左インサイドハーフ | 7 |
左ストッパー | 5 |
左セントラルMF | 3 |
左サイドバック | 2 |
右ウィング | 2 |
右インサイドハーフ | 1 |
左ウィング | 1 |
右サイドバック | 1 |
2017年の統計はフットボールラボさん https://www.football-lab.jp/player/1503926/?year=2017 にありますが、それと同様に本当にヤバイレベルのバラバラさ加減です。2018-19オフにはオファーもあったと聞きますが、よくこれで名古屋グランパスに残ろうと思ってくれたものです。
2019年のポジション遍歴
- ベンチ:88分イン:右サイドハーフ(4-4-2)※ゴール
- 左サイドハーフ(4-4-2)
- 左サイドハーフ(4-4-2)
- 左サイドハーフ(4-4-2)
- 左サイドハーフ(4-4-2)
- 左サイドハーフ(4-4-2)
- 左サイドハーフ(4-4-2)
- 左サイドハーフ(4-4-2)
- 左サイドハーフ(4-4-2)
- 左サイドハーフ(4-4-2)
- ベンチ:63分イン:左サイドハーフ(4-4-2)
- ベンチ:56分イン:左サイドハーフ(4-3-3)
- 左サイドハーフ(4-4-2)
- 左サイドハーフ(4-4-2)
- 左サイドハーフ(4-4-2)
- ベンチ:71分イン:左サイドハーフ(4-4-2)
- 左サイドバック(4-4-2)※ゴール
- 左サイドハーフ(4-4-2)
- 左ウィングバック(3-5-2)
- 左ウィング(3-4-3)
- 右ウィングバック(3-4-3)※ゴール
- 左サイドハーフ(4-4-2)※2ゴール
2019年22節までのポジション統計
左サイドハーフ | 18 |
右サイドハーフ | 1 |
左ウィング | 1 |
右ウィングバック | 1 |
左ウィングバック | 1 |
今年の特徴は、そもそも怪我人が出るまではほとんど4-4-2で固定で、しかも左サイドハーフがほとんどです。怪我人が出て、フォーメーションをいじくっていた3試合は仕方が無いですね。でもサイドハーフで固定されたことで、これまでになかったほどの攻撃の意識が高まっていることを感じます。
2018年と19年の変化
まず、2018年の和泉竜司のゴールのうちジュビロ磐田戦のゴールがこれです。
ジョーのスルーパスに飛び出して取ったものです。
サガン鳥栖戦のゴールはネットのクロスにダイレクトで飛び込んだケース
どちらもワンタッチでの飛び込みのゴールです。
一方で、川崎戦では、和泉竜司自身が得意のワンタッチのゴールだけでなく、冷静に2タッチでシュートを蹴り込んだり、3点目ではゴールへの組み立てをシミッチとともに行えているのが大きな変化です。
それだけでなく、得点には直接関係ありませんが、サイドチェンジの素晴らしいパスを前田直輝に通すなど、これまでに見れなかった素晴らしいプレーを見せてくれました。これはもう覚醒と言ってもいいのではないでしょうか。
もともと才能があった選手であるのも間違いありませんが、上記にも見たような紆余曲折を経てなお、グランパスにいてくれて、そして新たな世界を開いて行ってくれている希有な選手。それが和泉竜司です。
名古屋グランパスの新たなるバンディエラとして、是非末永くグランパスを支えていって欲しいと思います。
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