約1年前、こんなエントリーを書きました。
Per aspera ad astra.
意味は「困難を乗り越えて、その先へ」
ラテン語の格言で、太陽系の外惑星および太陽系外の探査計画を行う人工衛星、ボイジャー1号と2号にはこの言葉を意味する信号が収められています。
はたして、2020年、僕たちは困難を乗り越えられたのでしょうか?
2019年に提起したポイントは以下の3つでした。
- 選手の質を担保できないとJ1では勝ち続けることはできない
- 変化をし続けられないとJ1では勝ち続けることはできない
- 選手を鍛えるのには限界がある
この3つから振り返って行きましょう。
選手の質は担保できたのか?
2020年、広島から稲垣祥、湘南から山﨑凌吾、川崎から阿部浩之、鳥栖から金崎夢生が加入。相馬勇紀とマテウス、秋山陽介がレンタルバック。新人として三井大輝、石田凌太郎、吉田晃が加入。
ジョー、金井貢史、伊藤洋輝、エドゥアルド・ネット、杉森考起、榎本大輝、和泉竜司、山田康太、赤崎秀平、深堀隼平が去りました。
ジョーと金井貢史は新体制発表会後のお別れでしたが、そのあとは28名、オ・ジェソクを夏に加えて29名でシーズンを戦い抜きました。これは決して多いほうではありません。
獲得出来た実力者
一番大きかった加入選手は「稲垣祥」でしょう。
Jリーグナンバーワンの走行距離
明治安田生命J1リーグ 総走行距離BEST5(2020第1~34節 合計)
1位:402.966km 3036分 稲垣 祥 MF (名古屋)
2位:355.112km 2876分 山口 蛍 MF (神戸)
3位:348.03km 2687分 松岡 大起 MF (鳥栖)
4位:346.994km 2507分 奥埜 博亮 MF (C大阪)
5位:345.865km 2912分 マテウス MF (名古屋)— j1tracking_data (@j1tracking_data) December 19, 2020
2位の山口蛍を47km引き離す走行距離。稲垣祥が崩れがちな名古屋グランパスの中盤を支え続けました。
この記事でも取り上げたように控えに回ることが多かったシミッチも十分に素晴らしい選手。ですが、稲垣祥の献身ぶりはそれを上回るものでした。米本拓司が離脱しても崩壊しなかったのは、稲垣祥の加入が大きかったと思います。
もう一人大きな加入選手は「阿部浩之」。
残念ながら怪我で後半戦は真価を発揮できませんでしたが、前半怪我するまでの彼のパフォーマンスは、優勝請負人の名前に恥じないものでした。金崎夢生と合わせて、この3人の加入はチームを変えたと言って差し支えないでしょう。
確実に「質」が上がりました。
実力者を各ポジションに1人控えにできた。
質が上がっただけではなく、層を厚くすることもできました。
- GK:武田洋平
- CB:藤井陽也
- SB:宮原和也
- CH:シミッチ
- SH:相馬勇紀
- FW:山﨑凌吾、シャビエル
本人たちは面白くないでしょうし、選手によっては十分な出場機会を得られなかったケースもあります。
しかし、2019年に米本拓司とジョーの負傷離脱から坂を転げ落ちるように連敗していったのに対し、今年はジョーの急な契約解除、米本拓司の骨折だけでなく、吉田豊や相馬勇紀の骨折、丸山祐市の肋骨骨折、金崎夢生の靱帯断裂、阿部浩之と山﨑凌吾の膝打撲と、例年以上に怪我人が多かったにもかかわらず、成績をアップさせることができました。
グランパスは変化し続けられたのか?
2019年はグランパスがハイラインを敷き、即時奪回を狙うということがバレると、対策を採られ、ジョーと米本拓司の離脱で質が落ちると戦術を維持できず、エドゥアルド・ネットの一発狙いに頼らざるを得ない状況に陥り、そうなるともう戦術以前の状況になってしまいました。風間八宏前監督の最大の罪は、状況の変化に対応しきれなかったことだと思います。丸山祐市も含めてセンターラインが揃って抜けるというのは相当運の悪いものでしたが、そこからのリカバリーはもっと手が有ったのではないかと思います。
今年も転機がありました。
- 阿部浩之と米本拓司の離脱
- 金崎夢生と山﨑凌吾の離脱
1つ目の転機は、シミッチとシャビエルという2019年までの主力が穴を埋め、そのままサッカーを変えずに乗り切ることができました。
しかし深刻だったのは2つ目です。本格的なセンターフォワードは2人。その2人が抜けてしまったわけです。その解として産み出されたのが「名古屋式0トップ」ファンタスティック4により、ほんの少し風間八宏テイストのあるサッカーがくりひろげられていました。
変化をすることができたのです。
いいことばかりではない
ただ、戦績として言うとその後無敗ではありましたが、大分トリニータ戦、横浜FC戦と「勝ちきれない」試合が何度もありました。
夢生が負傷した広島戦以後の7試合に限って言えば、名古屋の得点期待値は0.85(リーグ最下位)でした。
夢生を欠いた期間が長くなる来季、文中でも言及されているように「ペナルティエリアの中に侵入して、ウィングプレーヤーをサポートしようとする人材」として長澤には期待がかかります。 https://t.co/qZVpa0rbJ7— NeilS (@NeilsXeno) December 29, 2020
Neilsさんが指摘しているように、負けませんでしたが得点の匂いが限りなく薄くなってしまったのです。
選手を鍛えるには限界がある
2019年も指摘したのは、攻撃に良さを持つ選手に守備を仕込むことには限界があるし、守備が特徴の選手に攻撃を仕込むのにも限界がある、ということでした。
2019年のグランパスは攻撃的な選手に選手層が偏っており、そもそも守備を仕込むことが得意ではない監督が攻撃の得意な選手に守備を仕込まざるを得ない状況でした。
2020年のグランパスは稲垣祥と阿部浩之、金崎夢生というセンターラインが機能し、守備が再構築されました。フィッカデンティ監督は守備を構築することに長けている監督。さすがとしかいいようがありません。
とはいえ、フィッカデンティ監督は攻撃を仕込むことが得意なわけではありません。そこで彼を補完する役割だった「司令塔」阿部浩之が負傷でコンディションを下げてしまったことは残念でした。
2020年のグランパスも、やはり選手を鍛えるには限界がある、ということをまざまざと見せつけられました。
カイゼンサイクルはちゃんと回っている
なんだよ、グラぽは2020年の終わりに文句ばかりなのかよ、と思われたかもしれません。
しかしきちんと内省して、改善ポイントを見つけ、そこに着実に対策を打っていくということをくりかえしていけばよいのです。
2020-21年オフに獲得した4選手の特徴は、いまの名古屋グランパスの弱点を的確にカバーするものと考えられます。だから、ちゃんとカイゼンサイクルは回っているといっていいでしょう。
一歩一歩前にちゃんと進んでいます。
困難を乗り越えて、その先へ
無論、そんなにいい話ばかりじゃなくて、きっと計算違いはあるでしょう。想像もしないような困難が待っていることでしょう。太陽系外を進むボイジャーのように、アジアの荒波をかきわけて進んで行かなければなりません。
どんな困難があっても、泥を啜ってでも生き残り、少しでも前に進んで行くようにしましょう。
そして、ボクらファミリーで前に進むグランパスを、少しでも後押ししていきましょう。
2021年もよろしくお願いします。