ちょっとした思い付きで、タイトルについてどの選手が相応しいかを自分のツイッターアカウントでアンケートを取ってみたところ、ビックリするほど多くの投票をいただきました。投票いただいた皆様ありがとうございました。当初は1位になった選手についてだけ書こうと思っていたけど、せっかくなので票の入った全選手の苦労について書きます。どうぞご笑覧ください。
1票:名古屋グランパスファン
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いきなり選手じゃない! 票のコメントを要約すると、『色々苦しい思いもした2017年のグランパスファンこそ苦労人大賞に相応しいのではないか』というところで、それはそうかもしれないが、選手じゃない! でもね、わかるんですよ。グランパスファンの胃腸をストレスという矢で刺しまくってきた風間さん・フロント……その他……。もっと『まともな』チームであれば、ストレスにしてももう少し胃が痛くならない程度だったのではないか。しかしそうも言っていられない。グランパスは『一見まともじゃないようでものすごく王道』な風間方面に舵を切ったのだ。僕達と風間グランパスの航海は始まったばかり! J1には日本代表選手を始めJ2基準とは段違いの決定力を持つ選手が多くいるので、来シーズンのやっちまった失点は今シーズン以上に増えることでしょう。胃薬と逃避用の酒完備で頑張ろう! 応援しよう! 名古屋グランパスファン!
1票:ヤキモフスキー
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今シーズン在籍していない選手に投票してきた中国地方在住の某グランパスファンさん! ちょっと正座してください正座! と思いつつヤキがどういう状況なのかを調べてみると、今シーズンにイタリアセリエAに昇格したはいいがダントツ最下位のベネヴェントでベンチ外なようだ。彼のキャリア的には2017年もかなり苦労した年なのかもしれない。グランパスに来たこと自体だいたいピクシー・ストイコビッチが悪かったような気もするが、ヤキも老ける歳ではない。グランパスでのプレーを見る限り、そうとう成長しないと欧州トップカテゴリは正直辛いだろうが頑張って欲しい。
1票:シャルレス
シーズン終わったと思ったら大本営こと某スポーツ新聞で風間さんと確執あったなどと報道されたシャルレスさん! 試合に出ていた時には恐らく監督の指示を完全に無視してディフェンスラインを下げ、これが勝つための定石だろうとプレーで示していた! わかる、わかるぞその気持ち。当然そうなりますよね。ゴール前を普通固めますよね。でも風間さんのチーム、もっと言うとJ1優勝争いをするためのチーム基礎構築過程においてそれは許されないプレーだったのだ。シャルレスの勝手にライン下げは風間教育対象となったはずが、それ以前に本人の怪我で離脱。一ファンとしては稼働率に文句を言いたくなるも、選手にしてみれば怪我は苦労とほぼイコール。そして考えて欲しい。ブラジル人選手がJに来ることについてサッカーファンはごく普通のことと思っているけど、ブラジルから地球の反対側の日本にやって来て、生活環境等も激変して、移籍してくること自体がそもそも大変ですよね。更に風間さんみたいな変わった監督の下で練習させられて、シャルレスはものすごく苦労したはずだ。すまん、ありがとう、シャルレス。と言うわけで、シャルレスに投票しつつも、最大の功績はシャビエルと入れ替わったこととコメントしていた名古屋グランパス某ゴール裏民君は大いに反省してください。
1票:ワシントン
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シャルレス同様、そもそも日本に移籍してきたことが大苦労なのに、風間指導で色々やった結果、シーズン終盤にはセンターバックとして定着。
「俺ボランチなんだけどね(笑)」
という本人コメントの(笑)は限りなく社交辞令だっただろうし、それでも笑えるところに人柄の良さが溢れ出ている。ファンサ方面でも練習レポート等でもとにかく人柄の良いエピソードしか無く、苦労を表に出さずに笑顔でいられるって本当に強いよなと驚嘆します。それでもセンターバック起用された左隣にはベストフレンド和泉竜司がいたから、苦労もちょっとだけ軽減されたのかもしれない。和泉がいないとボールを誰に預けるか困っていたシーズン当初が懐かしい。特にプレーオフでの獅子奮迅のセンターバックっぷりが記憶に新しいけど、思い出してみればシーズン序盤の色々酷かった頃に中盤で頑張っていたのはワシントンだった。シーズン通じて苦労しまくりだっただろうなあ……。サンキューワシ。
1票:杉本竜士
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鮮烈な働きをした一方で、シーズンを通しては出場機会をあまり得られなかった左サイドの仕掛人。風間さんのコメント、起用や他の教育対象等を観察する限り、どうも風間さんにとっては『得意な形でボールを貰ってから仕事をするタイプ』は漏れなく特別教育対象らしい。完全に推測でしかないのですが、ボールを貰う=受身ということで、受身にならず積極的にボールに関与した上で得意なプレーをやれ、ということなんでしょうね。それは恐らく杉本の価値観や拘りをぶっ壊して再構築することでもあり、本人のサッカー人生において今年は最も苦労した年の一つかもしれない。杉本がいきなり坊主頭にした日に、本人の胸中について思いを馳せたグランパスファンも多かったことでしょう。どういうつもりだったのか知らないが、髪も伸びてきたので何か吹っ切れたのかもしれない。本人の苦労がグランパスイケメンオブザイヤー受賞でちょっとでも報われたことを祈ります。大丈夫、君は坊主でもイケメンだ。
1票:佐藤寿人
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思いっきり本気な候補の推薦がありました! 佐藤寿人キャプテンです! インタビューで「功労者だからいるだけでチヤホヤしてくれる広島よりも選手として必要としてくれたグランパスに来た(意訳)」と語り、本人の人生的にひょっとして不必要だったかもしれない苦労をわざわざ背負ってくれた僕達のキャプテン。他にも「シーズン中のマズイ時期では空元気でも声を出してチームを纏めようとした(意訳)」等々、グッとくるコメントの数々(詳しくは赤鯱新報を各自ご確認ください)が泣ける。個性の違いはあり、誰でもできるわけではないだろうが、寿人方式のキャプテンシーはチームのノウハウとして受け継いでいきたい。キャプテンとしての苦労だけでなく、慣れ親しんだ最前線から左サイド&左シャドーにポジション変更されたり等、本人も年齢・実績を問わない風間指導に苦労していた。そこで寿人が反乱していたらチーム崩壊待ったなしだったでしょうし、『若手の手本になるベテラン』は本当に大事だってよくわかりました。去年までは、ベテラン=良くも悪くもアクの強い闘莉王や背中で語る楢崎や下を纏めるわけではない小川だったからなあ……。来シーズンも選手の入替はあるだろうし、キャプテンとして苦労することが予想されます。よろしくお願いします。
2票:フェリペ・ガルシア
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スタメン出場2試合、途中出場18試合の計20試合出場、プレー時間計524分。特に22節以降のシーズン後半では計66分しか出場しておらず、使われ方を見る限り永井龍との争いに負けたようだ。10番を背負った選手としては正直物足りないのだけど、そのプレー時間を見ると、試合に出てナンボのサッカー選手としての苦労を感じさせる。選手なら誰だってホントはスタメンで出たいし、せめてベンチに入っていたいですからね……。シーズン終盤には『練習で右サイドバックをやっていた』情報があって、本格的なコンバートかと思いきや、どうも人のいないポジションを練習で埋めた&ちょっとしたテストだったようだ。フォワードのスタメンとしては恐らく構想外だったのだろうが、けっこう酷い話ですよね。本人にとってもストレスフルな状況だったはずだのに、それでも真面目に練習に取り組み、少なくとも表立っては不平不満も言わず、耐える姿はまさに苦労人。比較的高年俸らしいのでJから声がかかるかわからないけど、特にJ2のロングカウンター&放り込み系チームでフルに使ったら何点取るのかは見てみたい。松本さんとかけっこうハマりそうな気がする。あと降格組の新潟さんとかどうしょうか。
ここからトップ3です。
3位 自分を殺してしまった苦労人賞 13票:内田健太
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愛媛FCで不動の左ウィングバックとして走り回っていたウッチー。足元は決して上手くなく、独力でのドリブル突破もできないが、運動量豊かでコンビネーションで高い位置に侵入して左足クロス……という愛媛時代。その、原則コンビネーションで前進するという意識が風間グランパスに上手くはまったんじゃないでしょうか。シーズン序盤ではピッチ左側の潤滑油としてボールを受けてパスを出していたウッチー。問題はそのポジションが主に3バックの左ストッパーだったこと! 愛媛時代でも明らかにドリブル対応に不安があったそうで、けっこう危ない対応をしていたりもしたが、まさか本人もそこで出場するとは思ってはいなかったはず。全ては風間起用のせいです。他にも、センターハーフでスタメン出場したこともあり、しかもまあまあ無難にこなしていた。コンバート上等の風間さんですが、完全なお試し起用を除き実際の試合で3ポジション以上で使われた人数は少ない。ウッチーの苦労が偲ばれます。そんなウッチーもシーズン後半での出場は1試合1分だけ。シーズン最後に「自分を殺しすぎたかも」とコメントしていたことから、潤滑油になりすぎて左足の一発という長所が消えてしまったのか。苦労しすぎて良さが消えたって思わず泣くしかない。左足の『入った得点は常にスーパーゴールの法則』は天皇杯で炸裂していたので、来年はもっとそういう得点を見たいですね。
2位 便利使いされすぎ苦労人賞 99票:和泉竜司
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左ウィングバック→センターハーフ→左ウィングバック→センターハーフ→右ウィングバック→センターハーフ→右サイドハーフ→左サイドハーフ→左サイドバック→左ストッパー→左サイドバック→左サイドハーフ→左サイドバック→左サイドハーフ→センターハーフ→左サイドハーフ→センターハーフ→左サイドバック→左ウィングバック。……お分かりいただけるでしょうか……間違いや抜けもあるかもしれないが、今シーズンの和泉のスタメンポジションの変遷です。他にも試合中に一時的に右サイドバックに入ったりもしていた。怪我離脱も数回あったのにJ2で39試合3270分+天皇杯+プレーオフに出場。すごい。もうこれ以上語る必要がないのではないか。主に左側で使われていたとは言え、これだけポジションをころころ動かされて、そしてどこでもそれなりに働いていた和泉。風間さんとしては、ベストメンバーのいないところにとりあえず和泉入れておけば良いやくらいの意識なんじゃないかと疑わせられる。和泉はどこのポジションでも『相手を剥がしてボールを持ち出す・前進する』というドリブル能力な長所を失わなかったことがウッチーとの違いで、だからメンバー・ポジションが変わってもスタメンであり続けたんでしょうね。欲を言えばシュート精度やクロス精度がもうちょっと欲しいのだけど、基本後ろ目のポジションで使われていたからシュートのイメージや感覚的にはとても難しかったかもしれない。そもそも学生時代はセカンドトップ、トップ下あたりで王様アタッカープレーをしていた選手なので、そんな和泉がサイドバックをしていたりすること自体すごい。本人も内心嫌だったんじゃないのか。でも、そういう状況で責任感だったりサッカーに対する真面目さだったりが試されるんでしょうね。和泉以上に便利使いできる選手が現れない限り来シーズンも使い倒されるだろう。苦労をかけて本当に申し訳ないがコンディション管理に気をつけつつよろしくお願いします。
1位 2017名古屋グランパス苦労人大賞 126票:小林裕紀
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残念そこはコバユーだ。シーズン中にピッチ上のありとあらゆる場所でスペースを埋めていたコバユーが苦労人大賞のスペースまで埋めてしまった! シーズン開幕戦のスタメンだったのに2節で懲罰交代し3節にはもうベンチ外。間に13節を挟みベンチに復帰したのが17節。スタメン復帰したのが18節。ただし復帰したポジションはセンターバックでしたけどね! そこからセンターバックでスタメン出場を続け、本来のポジションであるセンターハーフに復帰したのは23節。以後、出場停止の1試合を除いて全試合センターハーフでスタメンフル出場し続けた。今でこそ近年のグランパス最高のセンターハーフコンビと言われる田口コバユーは23節からだったんですね。その経歴で既に苦労人感がものすごいのだが、本当に苦労しているのはピッチ上のタスクの多さ。味方のフリーダムなポジショニングに負けずスペースを埋め、相手にボールを奪われたら危ないスペースを埋め、味方が下がりきったら相手最終ラインまでプレスに行き、味方がボールを出したいところに顔を出し、ボールが詰まったらサイドを変え、時には味方を追い越した。J2はトラッキングデータの対象外だったので試合で何km走っているのか不明ながらも、絶対コバユーがチームで1番走ってるよな、12kmくらい走ってるんじゃないのかと思っていました。トラッキングの対象となったプレーオフ決勝で確認してみたら、走行距離は10.8kmと意外と少なかったもののやっぱり一番走っていた。
そんなコバユーは2017シーズンの移籍加入組で、グランパスの1年目がようやく終わったところです。今シーズンのコバユーを新潟ファンの方にも是非見ていただきたい。新潟ファンの間では、2014年のパフォーマンスがピークでそこから下がる一方だったと評されているようなので。新潟のチーム事情等を詳しくは知らないけれど、きっと今シーズンのウッチーのように、新潟でのコバユーは自分を段々殺してしまっていたのだと思う。新潟でも色々と苦労していたようで、心機一転グランパスに来たらやっぱり苦労しているのだけど、多分、グランパスでの苦労の仕方の方がサッカー選手としては幸せなんじゃないだろうか。コバユーがいなくなった瞬間に崩壊するグランパスの中盤にしてしまったのは何よりもコバユー本人の働きです。まったく罪な奴。本当にありがとう。コバユーの流した汗に乾杯。あなたこそ2017名古屋グランパス苦労人大賞に相応しい。来シーズンも残念そこはコバユーが埋めているぞ。
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シーズンの終わりに
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最後に、こういった記事を楽しく書けるのも全ては昇格したおかげで、選手、スタッフ、フロント、サポーター等、全ての関係者の苦労が実ったから。一ファンとして感謝しかない。来年の今頃もこんな風に楽しかったなと思える2018シーズンになることを期待しています。最後まで読んでいただいてありがとうございました。
とても楽しい記事をありがとうございます。『一見まともじゃない』道を歩んできたチームが来季どのように花開いていくか楽しみでなりません。
逃避にも祝いにもお酒が欠かせなくなりそうですがくれぐれもご自愛ください。
コメントありがとうございます。
来シーズンも時にドキドキ時にキリキリすると思われますが、一緒に見守っていきたいですね。