読了しました。これは良い本です。良著です。皆さんに読んで欲しいなと思うので、紹介させてください。
サッカー観戦に欠かせない用語『戦術』とは
人によってはこの単語を見る・聞く時点でもう拒否感を抱かれるかもしれません。何故そうなってしまうのか? 恐らく、多くの人にとっては『意味がわからない』からじゃないでしょうか。自分のわからない言葉やモノって得体が知れないから怖いし、拒否したくなりますよね。それならば、意味を知っておけば、少なくとも得体は知れる。本書はその助けになります。
戦術とは『戦い方』
サッカーで戦術って何かと言うと、試合に勝利するための『戦い方』です。そして、戦い方には概要と詳細とがあります。例えば『選手達が考える自分たちのサッカーで勝利を目指す』だって立派な戦い方ですし戦術です。ただしそれは概要ですから、詳細を決めていかなければ実際のプレーはなかなか難しいでしょう。一方、我々ファンが試合を見る際には、わかる範囲で概要と詳細とを読み取ってああだこうだ言って楽しんだりもします。ただし、自分の知らない現象については、「なんだかよくわからないけどすごい!」くらいのフワッとした理解にしかなりません。現象は名づけられて初めて理解できる。古くは、オフト元日本代表監督によって「アイコンタクト」「スモールフィールド」「トライアングル」と言った言葉が日本国内で可視化されたりもしました。
世界で最優秀監督の一人、ジョゼップ・グアルディオラの戦術
ある程度、欧州サッカーについて知識のある方ならば、バルセロナ、バイエルン・ミュンヘン、マンチェスター・シティを率いて、それぞれリーグ優勝等の結果を出したジョゼップ・グアルディオラが世界で最先端を行く、最優秀な監督の一人だということには異論は無いかと思います。本書の主な内容は、マンチェスター・シティを中心に、欧州強豪チームの戦い方=戦術の解説をすることで、世界最先端の戦術を読者に理解してもらおう、というものです。
ちょっとだけ具体的なキーワードを
これ以上を語ってしまうと本の内容ネタバレになってしまいますのでキーワードをいくつか。
- 3つの優位性
- ポジショナルプレー
- ボールの即時奪回(ゲーゲンプレッシング)
- 可変システム
- 5レーン理論
このあたりの言葉で、「ネットとかで見たことあるけど、そういえば意味がわからない・知りたい」と思うあなたは本書を買って読もう!
最後に『さいきょうのせんじゅつ』は存在しない
どんな競技であっても、何か新しい戦術が猛威を振るえば、その戦術に対抗するための別の新たな戦術が生まれ、または過去の戦術が『再発見』されたりするものです。これさえやっておけば万事解決、勝利間違いなし、そんな戦術はこの世に存在しません。我々ファンとしては、最先端かつその時点で猛威を振るっている戦術をつい至高のものと扱い・語ってしまいがちですけども、そうじゃないんだよ、ということまで教えてくれる本書はタイトルどおりに正に『教科書』で『参考書』です。個人的なことを申しますと、10年ほど欧州サッカーを積極的にウォッチしていなかった僕にとって、勉強し直しになりました。著者のレナート・バルディさん、片野道郎さんに心から感謝します。