グラぽ

名古屋グランパスについて語り合うページ

メニュー

[コラム] 監督交替をするべきタイミングとは

2017年7月3日付けの朝刊にて、ヴィッセル神戸ネルシーニョ監督の退任を伝える報道がありました。

第2ステージで2位に入った昨季のホーム最終戦後、三木谷会長はサポーターの前で「来年は必ず優勝します」と宣言した。積極補強も敢行して迎えた今季は、開幕4連勝を飾りながら、負傷者が続出したこともあり失速。川崎F戦で前半戦の負け越しが決まり、11位と苦戦する中で解任に至った。

暫定的に吉田ヘッドコーチが監督代行として指揮を執り、欧州路線を中心に調査を進めている後任監督の選定に着手する。同時に、強化部にもテコ入れを断行。昨季は強化本部長だった村野晋アカデミー本部長(53)が強化部に復帰することが濃厚となった。

出典:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170703-00000003-spnannex-socc で続きを読む

ヴィッセル神戸は今シーズン、橋本和、高橋秀人、渡部博文、大森晃太郎、田中順也、大槻周平、ブラジル人MFウェスクレイらを獲得、7月にはドイツ人FWポドルスキー、ハーフナー・マイクを獲得するなどの積極的な補強を展開していました。

神戸、見えた最高順位 三木谷会長「来年は優勝」
観戦した三木谷会長は「来年は必ず優勝します」と宣言。来季続投が確実なネルシーニョ監督も「今年から来年へと成長を続けていく。(来季は)新たな戦力を獲得するだろうし、タイトルの可能性を上げていきたい」。実りの秋。若手の成長は、着実に来季へつながる。
出典:https://www.nikkansports.com/soccer/news/1731351.html で全文を読む

サッカー好きで知られる三木谷会長としては、悲願の優勝。期待を持って臨んだ2017シーズンでした。期待通りのスタートダッシュを見せるものの、GK吉丸絢梓、DF岩波拓也、DF高橋峻希、DF橋本和、MF藤田直之、MF高橋秀人、FWレアンドロ、FW大槻周平、FW小川慶治朗ら負傷者が相次ぎました。(一部復帰済み)すると順位は下降、結局は11位で前半戦をフィニッシュをしました。

優勝と11位では差が大きかった

多額の費用をかけて補強をするということは、それと同時に求められる結果も上がるということです。その点だけを見たら解任もやむなしなのかもしれません。

しかし、これだけの負傷者が出ていたら「運が悪かった」という側面もあったと言えるでしょう。そこをどこまで斟酌するか。最終的な判断はヴィッセル神戸の経営陣が行うことになるかと思いますが、ここから優勝を狙うには何か手を打つ必要があると思われます。その手段の選択にはかなりのセンスと先を見通すチカラが必要になるでしょう。

報道では欧州路線を模索

上記記事では以下のようにも書かれています。

暫定的に吉田ヘッドコーチが監督代行として指揮を執り、欧州路線を中心に調査を進めている後任監督の選定に着手する。同時に、強化部にもテコ入れを断行。昨季は強化本部長だった村野晋アカデミー本部長(53)が強化部に復帰することが濃厚となった。

出典:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170703-00000003-spnannex-socc で続きを読む

あくまでこれは報道に過ぎませんので、実際のところはどうなのかはわかりません。うまくいっていないからには何かを変えていこうという流れがあることだけは間違いありません。

またこれから加入するポドルスキーとの相性を考えてのことである可能性はあります。

名古屋グランパスの現状と重なる部分も大きい

名古屋グランパスも現在6位、ここ5試合を1勝4敗として、大きく順位を落としています。その一番の原因となったのは上位との5連戦に、チームの攻撃の組み立て役でもあるFW28玉田圭司とその控えMF21八反田康平が同時に離脱してしまったということでした。またDF3櫛引一紀が不調、前半戦の攻撃陣を支えたFW38永井龍はなかなか復帰できず、天皇杯、長崎戦とチームに光明をもたらしたMF23青木亮太も離脱。左サイドバックDF39内田健太も負傷離脱してしまい、さらには度重なる負傷で稼働率の上がらないDF4シャルレスが契約解除という野戦病院とも例えられるような状況に陥っています。

期待されているのは1年での昇格、それに対して現状ではやっとプレーオフ圏内、という状態です。やはりここでも期待値と現実の乖離が見られます。

実際、名古屋サポーターの一部からは風間八宏監督の解任を求める声も挙がっています。

監督の解任を行うのはどういうときか

一般的に監督の解任が行われるのはどういうときでしょうか。

  1. コンプライアンス違反(法律違反、公序良俗違反など)があったとき
  2. チームの方針と監督の方針が一致しなくなったとき
  3. チーム内での人心掌握が難しくなる事象があったとき(主力選手との衝突など)
  4. このままではチームの目標が達成できなくなるのでは?と予想されるとき
  5. チームの目標が達成できなくなることが確定したとき

だいたい、上記の5パターンに集約されると思われます。1.コンプラ違反は論外ですが、2.方針の不一致はままあり得ることです。また名古屋では3.主力選手との衝突で監督が解任されることが何度もありました。選手側が解雇されたこともありますが、そのようなことがあった場合に監督の任期も長くはなりません。かつて名古屋時代のネルシーニョ監督とウェズレイの間の確執は双方にとって良い結果にはなりませんでした。

今回の神戸の場合は、いったん報道は否定されています。

サッカーJリーグ1部のヴィッセル神戸がネルシーニョ監督を解任し、監督代行に吉田孝行ヘッドコーチを起用するとした一部報道について、クラブ関係者は3日、「報道されたような事実はありません」と否定した。

出典: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170703-00000010-kobenext-socc で続きを読む

とはいえ、パターン4.このままではチームの目標を達成できなくなるのでは?と予想される状態に陥っています。ですから今回否定はされてはいるものの、クラブとしては少なくとも準備くらいはしている可能性は高いと思われます。何よりも「火のないところに煙は立たない」わけで、検討くらいはあってもおかしくないわけです。

グランパスが風間八宏監督を解任する可能性は?

風間八宏監督の場合も、4.に抵触する可能性があります。そういう意味では解任の可能性はゼロではないと思っています。

風間八宏の解任にはメリット・デメリットがあると思います。

■メリット

  • 戦犯を明らかにして責任を取らせることで、不満を持っている人間のガス抜きができる
  • 即効性を持つタイプの監督に入れ替えることで巻き返しが期待できる

■デメリット

  • これまでの積み重ねがリセットされる
  • 風間八宏監督に最適化されつつある選手編成では、後任監督が力を発揮できない可能性がある
  • ここまで力をつけた若手の活躍の機会が奪われ、ベテラン偏重の起用になる

風間八宏監督を解任した場合、大武峻選手(元名古屋)のような、現体制に不満を持っている選手にとっては福音ですし、現状の成績に満足できないサポーターにとってもガス抜きになるでしょう。今年から指揮を取ったにも関わらず、既にある程度のチームの仕上がりを見せているロディーナやロドリゲス監督のような指導者がいれば、ある程度即効性のある対策はできるかもしれません。

しかし思い出していただきたいのが、昨年末のボスコ・ジュロヴスキー監督の状況です。ある程度厳しい状況でチームを渡されたとしても、そこから修正することは難しくなります。ボスコ監督はある程度自分のやり方を知っている選手に限定して起用し、あわや残留できるところまで持っていけました。しかし最後の3試合はあまり成果は出せず、結局は降格をしています。自分の思い通りの編成でもなく、チームを仕込む時間もなく、そのなかで立て直すのは相当難しかったでしょう。

次の監督も、ボスコと同じような状況になる可能性は一定以上あります。ましてや中断期間がほとんどないJ2です。簡単ではありません。

一方で育成者としての風間八宏監督の手腕には疑いを持つ向きはいないでしょう。大器と期待されながらもイマイチ殻を破りきれなかった和泉竜司と青木亮太、杉森考起がレギュラークラスに成長したのは風間八宏監督の功績です。またまだ道は半ばとはいえ、苦手湘南ベルマーレのフォアチェックをある程度いなせるようになってきたのも成長です。

また下條GM、大森強化担当の信頼も厚い。

総合すると、名古屋グランパスが風間八宏監督を解任する可能性は低いのではないか、と思われます。

組織として見た場合にトップを交替させるべきなのはどんなときか

サッカーチームをサッカーの世界の常識だけで考えるのは、アイデアを硬直化させる可能性もあります。そこで、一般的な組織論、コーポレート・ガバナンスの観点から見たら、監督人事というのはJリーグチームそのものを出資者と考えた場合の一般的企業の経営者と考えることができると思います。チームの色を決める、または決めたような監督というのは、ある意味会社の創業者に捉えることができると思います。

・創業者はいつまでも創業者である。社内のタイトルがいかに変わっても、創業者の精神は一緒に過ごした経営陣に息づいており、またオーナーであるから、それなりの株式を所有している。資本の論理もあって、後継者を自分で選ぶことができる。

・問題は、創業者が個性溢れるイノベーターであればあるほど、会社の中でのリーダーシップはフルに発揮される。別の言葉でいえば、ワンマンになり、いつのまにか裸の王様になりかねない。ピカピカに輝いていた頃の先を見る力や皆を鼓舞するオーラも、自分では気がつかないが衰えてくる。それを周りに知られてきた時が危ない。(中略)

出典: http://column.ifis.co.jp/toshicolumn/bell/56175 で全文を読む

名古屋で言えば、路線を9年間に渡ってほぼ固定することになったピクシー、鹿島にとってはジーコ、川崎フロンターレにとっては風間八宏。ジーコは厳密には監督ではないので当てはまらないかもしれませんが、ピクシーも川崎時代の風間八宏監督も、長らくチームを率いていることでの弊害が出てきてしまっていたと思います。

・会社の運営において、小さな穴から水が漏れないように、突然想定外の爆発が起きないように、細部にわたって組織を動かす仕組み作りが必要である。それは大変なことである。しかし、人々がきちんと訓練され、カルチャーとして身につけていれば、その基本動作は苦痛でもなんでもない。いつもの仕草である。その組織能力を作り上げるのは、ロケットで成層圏に出る時のGのように大変な圧力がかかるが、成層圏に出てしまえば何ら問題ない、と京セラを創業した稲盛氏は諭す。

出典: http://column.ifis.co.jp/toshicolumn/bell/56175 で全文を読む

ジーコの鹿島のようなオートマティズム、ある意味文化まで昇華できれば良いわけです。上の引用のなかではいったん成層圏まで出てしまえば、きちんと訓練され、カルチャーとして身につけることができていれば良い、ということになります。

・創業家に優秀な人がいない場合は、ファミリーとは関係ない生え抜きを抜擢して社長に据える。この社長が優秀できちんと会社をリードしていく。そして、一族の若手にバトンタッチしていく。この代表例がトヨタ自動車である。トヨタイズムは脈々と継承されている。

・では一族の手を離れて、サラリーマン経営者が社長に就くようになった会社はどうであろうか。日本の大企業にはこのパターンが多い。創業者精神を綱領に掲げていても、それを本当に実践しているかとなると、抜けがでる場合がある。会社は時のリーダーに依存するが、一人のリーダーや一人のイノベーターにのみ左右されない組織能力(オーガニゼーショナル ケイパビリティ)を培っていくことが求められる。

出典: http://column.ifis.co.jp/toshicolumn/bell/56175 で全文を読む

今、川崎フロンターレは鬼木監督のもとで、風間八広監督の創業者として作り上げた組織能力(オーガニゼーショナル・ケイパビリティ)をカルチャーに昇華していこうとしています。

そしてその風間八宏監督を、名古屋グランパスは輸入しました。2016年までのグランパスには依然としてピクシーが作り上げた組織能力がありましたが、それはもうほとんど壊れてしまっていたのではないでしょうか。だからこそ降格をしてしまった。

そこを大幅な人員刷新でほぼゼロから新たに組織を作り上げようとしています。京都サンガF.C.のオーナーでもあり、京セラ、au、JALなどを束ねる稲森会長の仰る通り、「組織能力を作り上げるのは、ロケットで成層圏に出る時のGのように大変な圧力がかかる」わけです。今は産みの苦しみを味わっている時期だと思います。

確かに今の成績に満足できるわけはありません。これはどんな聖人君子でも同様でしょう。でもここで我慢できなければ、組織能力もなにもない、その場限りのチームができあがるのではないでしょうか。それは属人的なチームで、監督や主力選手が入れ替わる度にガラリと内容が変わってしまうことを意味しています。鹿島アントラーズや川崎フロンターレのように、これが名古屋グランパスだ!というサッカーを作り上げて欲しい、筆者自身は、「こういうサッカーをやりたいからこそ名古屋グランパスに行きたい」という風に言われるようなチームになって欲しい、と願っています。

これから先はどうなっていくのか

シーズンが始まる前に風間八宏監督に伺った時には「考え方を変えるつもりはないが、川崎でのやり方とまったく同じ方法を採るつもりはない」と仰っていました。

個人的には、誰か特定のエースに頼らない組織作りを試みているのではないか、と選手起用を見ながら思っています。そう思うと納得の行く部分があります。

実際、名古屋には中村憲剛は居ませんし、大久保嘉人も居ません。同じ方法を採ろうにも、採れないということもあるでしょう。止める・蹴る・動くの3本柱は変わっていなくても、まだチームとしての最適解が見つけられていないですね。(ある意味最適解に近かった長崎戦も、青木亮太の離脱で再現不可能になってしまいました。)

離脱者の多さが組織能力の熟成にマイナスを産んでいることは否めないと思っています。怪我人は注意することはできても、完全に防ぐことはできません。ましてや玉田圭司選手のようなチョークポイントとも言える選手を予備で抱えることなどはできません。

ある程度悔しさを噛みしめて、見守ることしかできないのではないでしょうか。

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

Comments & Trackbacks

  • Comments ( 2 )
  • Trackbacks ( 0 )
  1. 大賛成です。→「こういうサッカーをやりたいからこそ名古屋グランパスに行きたい」という風に言われるようなチームになって欲しい、と願っています。 ーーもう少し我慢の時ですね。

    • ありがとうございます。負けたりするとキーってなっちゃいそうになりますが、冷静に、冷静にと頑張って気持ちを切らさず後押ししていきましょう!

LEAVE A REPLY TO 匿名 CANCEL REPLY

*

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

Share / Subscribe
Facebook Likes
Tweets
Hatena Bookmarks
Pocket
Evernote
Feedly
Send to LINE