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[コラム] 風間サッカーに、「対策」はあるのか?(1)

いやあ、勝ちました。勝ちましたね。リーグ戦では3月3日が最後ですから、実に5ヶ月も勝っていませんでした。画像は掲載することができませんが、試合終了後スタンドで歓声を上げているサポーターの目には涙が光っているのが目立ちました。

辛かったですよね。それだけ真剣に応援していたら、やっと勝ってくれた、そのことに感極まるのも無理がないです。自分も行けるか?行けないか?結果的には体調不良と仕事で行けなかったのですが、もし行っていたら涙を流していたに違いません。

それにしても勝利と遠ざかっていた期間は長すぎました。負けが込んでいると、サポーターのなかでもギスギスしてくる人もいて、言い争いになったり。いろんなことがあります。

なかでもよく見る言い争いのネタが「無策」「戦術がない」です。これだけの質の選手がいたら勝てないほうがおかしい、という声もよく聞きます。果たして本当に無策で戦術がないのでしょうか。

風間サッカーの基礎は?

私自身は、プロのアナリストではないので、本人の言葉を借りながら説明をすると、風間サッカーの基本は「止める」「蹴る」「外す」です。

止めると呼んでいるのは、ボールを完全にコントロールをすることです。静止させるということとは少し意味が違います。本人は「自分で何でもできる位置にボールを置くこと」と言っています。

蹴ると呼んでいるのは、“止めた”ボールを、正確に、スピーディーに蹴ることです。これもただ急いで、正確に蹴ればいいんでしょう?って思うかもしれません。でも実際には話をよく聞いてみると違います。ネルソン吉村という、かつて自分が指導を受けたコーチのプレーから学んだことを風間語として使っているようなのです。キーワードは、スピードです。

ペップ・グアルディオラは「FCバルセロナで一番速かった」という記事がありました。

https://note.mu/sakamotokei68/n/n0bda55ff0b1f マエストロ・セイルーロの構造化されたトレーニング  坂本 圭さん

これは永井謙佑や田鍋陵太のように、物理的なスピードの話ではありません。

選手のスピード:

・動き始める前のスピード
(1. 判断のスピード(情報を集めるスピード)  2. 意思決定のスピード)

・動いた瞬間と動いている間のスピード
(1. 動き始めのスピード   2. 移動のスピード)

プレーのスピード:

・攻撃のスピード
1. 組織化された攻撃のスピード「ボールの出口(ビルドアップ)」「プレーの前進」「ダイレクトプレー」「ファイナルゾーン」のスピード。

2. 守備から攻撃への切り替えのスピード「カウンターアタック」「攻撃の再構築」のスピード。

・守備のスピード
1. 組織化された守備のスピード「ボールの出口への守備」「プレーの前進への守備」「ダイレクトプレーへの守備」「ファイナルゾーンの守備」のスピード。

2. 攻撃から守備への切り替えへのスピード「プレッシング」「後退」「プレッシングと後退」のスピード。

物理的なスピードは、ここでは「動いた瞬間と動いている間のスピード」です。ペップ・グアルディオラが速かったのはプレーのスピードです。

私はその週のスピード・トレーニングで、バルサの選手の中で、誰が最もスピードがあるかテストしたんだ。それはある状況を設定したスピード・トレーニングで、5m〜20mの距離を、ストップ、スタートなどを織り交ぜたものだ。グアルディオラはセルジより速かった。そう、グアルディオラは予測してセルジより先にスタートを切るんだ。このトレーニングを実行中は味方の配置を見ながら、こっちの方向か、それともあっちの方向に行くべきか瞬時に決めて、グランドの特定のポジションに到着しなければならない。そのトレーニングで一番はグアルディオラだった

ペップ・グアルディオラが速かったのは、判断を含む、総合的なスピードです。そう、それと同じこと=局面局面において、認知+判断+実行(コントロール)を速やかに行えることを風間八宏は求めているのです。

加えて、「外す」です。外すは、マークを外すことと、自分のパスコースを作ることです。サッカーは相手がいる。これ、この日の2点目、和泉竜司のパスが一番わかるでしょう。
https://twitter.com/DAZN_JPN/status/1024852482999156736

和泉竜司が2人のマークを外した瞬間に、パスコースができました。この「外す」プレーが和泉竜司の真骨頂になりつつあります。理想を言えば11人がこんなプレーができることが望ましいのでしょうけど。

え?止める蹴るって、そんな大変なことを求めているの? グアルディオラが凄かった、ネルソン吉村が凄かったっていって、そんなレジェンド級選手と同じことをグランパスの選手にもとめているの?って思いません?

そう、そこが川崎フロンターレ時代も名古屋グランパス時代も、大きなギャップになっています。

さらに逆にこれ以外の部分ってどうなの?っていうと、本当のところはわかりません。なにせ非公開練習がほとんどですので。実際どんな練習をやっているのかはわからないです。

ただ試合に現れている部分はわかります。そちらは最後に書きます。

さて、このサッカーをどう壊したら攻略できるのでしょうか。

風間サッカーへの対策パターンってどんなのがあるの?

対戦相手のチームは実に多くの風間サッカー対策を練ってきました。

ハイプレス

大分トリニータ、湘南ベルマーレ、ジェフ千葉。去年名古屋を苦しめたチームはみんなハイプレスでした。ディフェンダーがボールを持つと、相手のフォワード、場合によってはサイドハーフやセンターハーフまで人数をかけて圧力をかけて=素早く距離を縮め、ボールを奪いにきます。こうなると、正確な「止める」「蹴る」なんてできなくなってしまう選手が多いわけです。本当にこれに苦しみました。

風間サッカーでは、守備をトレーニングするというよりもむしろ止める蹴るの「起点」がディフェンダーの大きな役割なのですが、ディフェンダーは止める蹴るとは異なるスキルを求められるので、比較的止める蹴るがうまくいかないケースが多いです。そこで風間八宏はセンターバックに本職センターバックではないものを起用するケースが多かったわけです。

しかし止める蹴るができても肝心の守備がうまくいかないことも多く、攻撃時ではなく、守備に回ったときに機能しない、そういうシーンを数多くみることになりました。止める蹴るを取るのか、安定した守備を取るのか。その選択がグランパスを1年半苦しめ続けていました。

定置網漁

魚を獲る漁の方法に、定置網漁というのがあります。

amizu2

魚を網の中に誘い込み、一度中に入ってしまうと出られなくなるところを捕まえるという漁です。これはある程度ボール奪取に自信のある選手がいるチームが行うことが多く、つい先日のサンフレッチェ広島戦でも長谷川アーリアジャスール選手がまさにこのパターンに嵌められた、と言えるでしょう。もっと周囲を使えるようにならないと相手の思う壺です。

中を固める

これもJ2で数多くみたパターンでした。2018年の第3節、湘南ベルマーレ戦でもペナルティエリアの周辺でボールを回す姿にイライラしていた人も多かったのではないでしょうか。

止める、蹴る、外すといってもペナルティエリアを固められては、その中をこじ開けることは簡単ではありません。パスコースがなければパスを出しようがありません。パスコースが見つけられないからといって、ドリブルで突っ込んでも潰されるだけです。

こんなときには、自軍がもう少し引いて相手をおびき出す、ミドルシュートを多用して、ラインを少しでも上げさせる、クロスをたくさん上げて殴り続ける、などの対策もあります。

完全に引かれてしまうと、ある程度の強豪チームでもなかなかどうにもならないことが多いです。

でも結局質的優位が解決してくれた

いろんな対策をされましたが、名古屋の場合は起点となる「止める」「蹴る」の力と、本来のディフェンダーとしての能力、この2つを兼ね備えた選手が揃っているときにはきちんと勝ち点が取れているんです。

  • 第1節:菅原+ホーシャ(勝ち点3)
  • 第2節:菅原+ホーシャ(勝ち点3)
  • 第3節:菅原+ホーシャ(櫛引)(勝ち点1)
  • 第12節:新井+ホーシャ(勝ち点1)
  • 第13節:新井+ホーシャ(勝ち点1)
  • 第17節:中谷+丸山(勝ち点1)
  • 第18節:中谷+丸山(+新井)(勝ち点3)

見て頂けるとわかりますが、ホーシャがいて勝ち点が取れなかったのは清水戦、東京戦、負傷退場した鳥栖戦。新井がいて勝ち点がとれなかったのは長崎戦、浦和戦とありますが、メンバーが揃っていた5試合では、勝ち点9、優勝争いペースではありませんが、最下位に甘んじる成績ではありませんでした。

ただ残念ながらホーシャは負傷離脱。手術を受けたようで、今シーズンの復帰は難しそうです。僕も個人的に強く応援している新井も稼働率という点では合格点が出せる状況ではありません。

夏の補強後、なにが変わったのか

風間八宏のチームは上記の通り、レジェンド級の選手がやっていたことを選手に求めるチームです。それが間違っているとかいう議論はここでするつもりはありません。

ただ、それだけに選手の質を求めるのは間違いないです。そして、夏のマーケットでは現時点の名古屋に可能な範囲で最上と思われる選手を補強しました。中谷と丸山というJ1でも先発を張ることができる選手が獲得できたことで2試合で勝ち点4をあげることができました。この2人はあきらかに先程挙げた「止める蹴るの技術」と「本来のディフェンスの能力」を兼ね備えています。

新井も加えてこの3人がいれば、この先の16試合、いまと同じペースではいけないと思いますが、勝ち点40もまったく不可能ではないのでは、と思っています。

このレベルの選手を補強しないと実現できないなんて、なんて非効率的なんでしょう。そう思います。でも実際仙台戦では受け身に回ってしまった後半最後の20分+アルファを除けばやっぱりしっかりつないでゲームを作ることができていました。

この試合での細かい対策はラグさんがレビューで書いてくれると思いますが、対戦チームのグランパス対策はこれで回避することができるようになりました。

長くなったので、また次回、今度は名古屋がどんな対策をしているのかについて書いてみたいと思います。
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About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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