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私が歩んだ2年半

これは名古屋グランパスの総括ではありません。私という一人のサポーターの2017年から今日に至る2年半の思い出です。

この間にグランパスは色々な意味で大きく変貌しました。ですが変わったのはグランパスだけではない、私も色々変わったのです。

それはとても楽しい日々でした。あまりに楽しかったのでなかなか次のステージに切り替えられずにいるくらいです。まだシーズン途中ですが、監督交代を一つの区切りと考えてこの2年半のことを書き留めておきたいと思います。

私はサッカーを勉強した

2016年に降格が決まってからおよそ一か月後の2017年1月4日、風間新監督の就任が公式発表された。それから、2月26日にJ2が開幕するまでの間、私はサッカーについての書籍を読んでいた

その書籍のタイトルは風間八宏著『「1対21」のサッカー原論』。私はこの本を何度も何度も読んだ。何故なら就任した風間監督から発せられる言葉はどれも独特で、しっかり噛み砕かなければ何を言っているのか最初はなかなか理解できなかったからだ。

監督の独特の言葉や考え方を理解しなければインタビュー内容も理解できない。何を言っているか理解するためにまず本人のサッカーに対する考え方を知らなくては。そこで監督の書いた本を読む。だんだん独特の言い回しに慣れてくる。シーズンが始まる。監督のインタビューを今度は試合内容と照らし合わせる。すると今度はピッチ上で何が起こっているか気になりだす。

このようなサイクルで次第にサッカーと向き合う時間が増えた。本を読み、サッカー雑誌を読み、サッカーの戦術をネットで調べる。

幸い、グランパスサポーターの中には試合後に戦術を解説してくれる論客が何人もいた。私はそれらの方が書いたレビューを片手にDAZNで何度も試合を見返し、週末になれば予習と称してまた見返した。

また、2017年のシーズンがスタートするころ、セリエAのナポリが名古屋の目指すサッカーに似ているのではないか、とタイムラインで話題になった。早速私はDAZNでナポリの試合も時々見るようになった。

実を言えば私は風間さんが監督に就任した当初、よくある誤解をしていた。すなわち「風間サッカーとはスペイン代表みたいなパスを繋いでいくサッカーである」と。今から思えば我ながら面白い。W杯ブラジル大会のスペイン・オランダ戦(オランダ代表が好きなので録画を保存してあった)を何度も見返したりしたが、実際にシーズンが進むにつれて、名古屋のやりたいサッカーがスペイン代表風ショートパスサッカーとはまったく違うことに気づいた。

次に私が誤解したのはタイムラインを見ているうちに「ポジショナルプレー」という言葉に出会い、ここに名古屋のサッカーを解き明かすカギがあるのではないかと思い込んだこと。

そこでフットボリスタのような難しい雑誌を初めて購入し、ポジショナルプレーについての記事を読み、ついでに戦術のトレンドなどを読むうちに、名古屋のサッカーはむしろポジショナルプレーとは対極の考えにあるということに気づいた(ですよね?)。

私はサッカーがもっと好きになった

このような試行錯誤を繰り返したが、ふと気づくと私は2017年のスタートから、自分のクラブのサッカーを通じて「サッカー自体をもっと知りたい」「もっと理解したい」という気持ちが次第に強くなり、過去とは比べられないほどサッカーのことを考える時間が増えサッカーを見る時間が増えたのだ。結果、そしてグランパスだけでなく、改めてサッカー自体の面白さを再認識することになった。

そんな中改めてサッカーって自由だなと思った。フィールドは広く、ルールは少なめ、常に試合は動き刻々と変化する。その中でフィールドに何を表現するか、とても自由な場が与えられている。だから色々な戦術があり、色々なアプローチがあり、様々な選手や監督が十人十色の考え方で勝利に向かおうとする。そう考えるととても面白い。

さて「ピッチの中で何が起こっているか知りたい」と思うようになった私は、スタジアムへ行く動機も少しずつ変化していった。それまではとにかく「グランパスを応援するために」というのが動機の大部分だったが、それに加えて「クラブの変化を見届けたい」という気持ちも強くなった。チームは決まった形をもたない生き物、どんどん進化する。ならその進化を見逃したくない。だってその進化を目にすることが今のグランパスの醍醐味ではないか。グランパスのサッカーをもっと見たい。みんなが成長する姿を見たい。だって面白いんだもの。

そしてアウェイ遠征の回数も飛躍的に増えた。ホームは元々皆勤に近い回数を観戦していたが、2016年までは年に2~3回だったアウェイ遠征は2017年には8回、2018年は6回である。開幕直前、インフルエンザに罹らなければ7回だったのに。

グランパスのサッカーを理解したい → サッカーを勉強する → サッカーの面白さに更に気づく → グランパスがもっと面白くなる

これが2年半の間に私に起こった変化である。風間さんがよく言っていた「ピッチ上で何が起きてるか分からないから面白い」ことを私は体現していたのかもしれない。

私はグランパスに夢を見た

そもそも私が風間監督のサッカーに強く魅かれたのには理由がある。私は元々つないで攻めるサッカーが好きだったのが理由だ。

サッカー好きだった父に付き合ってサッカーを見ていた私が、初めて心を奪われた試合は、W杯スペイン大会の準決勝「西ドイツvsフランス」。フランス代表のプラティニ、ティガナ、ジレスを中心としたイマジネーションに満ちたパスを繰り出すサッカーにくぎ付けになった。それが私のサッカーの原点なのだ。

だが、グランパスはそのようなタイプのサッカーはあまりしなかった。背の高い優秀なFWめがけてロングボールを入れるサッカーが中心。もちろん私はグランパスのファンなので、グランパスがロングボール主体のサッカーをすればそれを支持する。でもJリーグを離れれば繋いで攻めあがるサッカーの方が好みだった。

だから名古屋の監督に風間八宏が就任する第一報が流れたとき、思わず万歳したのを覚えている。名古屋が私の好きなサッカーをやってくれるかもしれない。もっともこの時はティキタカみたいなサッカーを思い浮かべてはいたのだけど。

実際に2017年のシーズンが進むにつれて、私の喜びは更に大きくなっていった。

「名古屋はすごくいいクラブに生まれ変わりつつあるよね?」

そう実感したからだ。

クラブの哲学を作ろう。名古屋のサッカーと言えばこれだ、と言える根幹を作ろう。しっかりクラブの礎を築こう。目標は明確にサポーターに提示される。目標が明確なので勝てない時期があっても「何をしたいか分からない」という絶望感はない。ぶれない監督、地道に努力する選手たち。このサッカーをやりたいと選手がコメントするたびに涙がでるほど感動した。

特に私が魅力を感じたのは、礎の中心になる風間さんのサッカーが他にはないオリジナリティを持っていると感じたからだ。正確に言えばアプローチの仕方が独特というべきか。

守備から入ることが定石で相手をスカウティングし弱点を突くことが当たり前のJリーグにおいて、あくまでも自分たちのサッカーと向き合い、真っ向勝負で相手に挑むことの爽快感。この手法には大きな弱点があることなど分かっている。が、これで強くなったらすごいことだ。オンリーワン。どこにもない名古屋だけが持つ哲学。名古屋がそんなクラブになれたらどんなに素晴らしいことか。

しかもクラブはユースと連携を密にし、東海学園大学との連携なども始めた。トップチームだけでなくクラブ全体どころか外部にまでその哲学を伝えるの?

これならやがてこの哲学がしっかり根付いていけば、今は「風間さんのサッカーがやりたい」と入団してくる選手がやがて「名古屋のサッカーがやりたい」「名古屋のサッカーに憧れていました」と言って入団してくれるようになるかもしれない。

ユースの選手たちが毎年何人も昇格して、同じサッカーを志向していればすぐにチームになじむ。そしてユース出身の若い選手たちがどんどん活躍する。やっぱりユース出身者が増えれば嬉しい。

高校や大学でもこのサッカーと似たようなサッカーをする学校が出てきてやがて「愛知県のスタイル」みたいに根付いたら最高ではないか。グランパスが愛知県のサッカーを変えた。そんなことになったら最高では?

しかもそんなグランパスをフロントもスタッフも一丸となって支えた。集客の大成功。活気がみなぎるスタジアム。人が集まるから色々な企業が集まり、スタジアムイベントもより豊富になり更に楽しみを求めて人が集まる。グッズ売り場の長蛇の列。

すべてが上手く回り出したと思った。これなら降格を味わって辛い思いをしたこともすべて報われる。無駄にはならなかった。そう思った。本当に名古屋グランパスというクラブのサポーターでいることを誇らしく思った。

これならクラブの哲学が根付いた時、未だどこのクラブでも見たことのない大きな花が咲くのではないか。何かとてつもなく素晴らしいものが出来上がるのではないか。クラブは私にそんな夢を見させてくれた。だから連敗しても勝てなくても私はあまり辛くなかった。

結局その花は咲くことなくいったん頓挫してしまったが、このような夢を見せてくれたクラブに心からお礼を言いたいと思う。

今後このクラブがどこへ進んでいくのか。現時点でそれは分からない。けれど、これらからも私たちに夢を見させてくれる、そんなグランパスでいて欲しいと心から願う。

思い出そう、あの日あの時あの試合

この2年半の間、共に戦った試合、そこには色々な思い出がある。2017年を中心に2018年や2019年まで私の心に特に残った試合をいくつか振り返ってみた。

2017年 第6節 熊本戦 2017年4月1日

風間サッカーで大勝した初めての試合。それまでの5試合の得点はいずれも2点までだったが初めて5点を取って大勝した。

この頃はまだワンタッチパスを細かくつないで攻めあがるプレーも多く、自分はこの試合のあと、名古屋がティキタカをしている!と興奮したのを覚えている。そういえばあのティキタカはいつごろ姿を消したんだろう。

なお、この試合は豊田スタジアムで観客数11,554人。2017年前半の観客数を見ると、瑞穂は1万人に届かないことが多く、豊スタでも2万人に満たないことが普通にあった。

私はファンクラブの無料券を使って、SSのまさに中央最前列で観戦していたが、ジャッジが荒れ気味で、両方の監督が審判に物言いに行くシーンが座席からよく見えた。いつも泰然として見える風間さんもそれなりに言っているんだなと思ったことを覚えている。

2017年 第26節 愛媛戦 2017年8月6日

J2記録まで作ってしまった前代未聞の一戦。前半終わって3-0。その後追加点を取って4-0。楽勝かと思われたが、58分に1点を返されると69分・70分・72分のわずか4分の間に3失点。4-0から4-4に追いつかれるという驚愕の展開となった。解説者に「クロスがあがれば得点」と言われたのは記憶に新しい。クロスに弱いのはこの頃から変わっていない。4-4に追いつかれたあと今度は3点を取って突き放し結果は7-4で勝利。両チームあわせて11得点はJ2史上最多となった。私はこの試合のおかげで勝手に愛媛に親近感を抱き、今でも実はちょっと応援している。

ちなみにこの試合を経験してから、負けているときには必ず「4分の間に3点取られたことがあるんだから、ウチだって4分あれば3点取れるはずだ」と唱えながら応援している。

2017年 第29節 福岡戦 2017年8月20日

夏休み中の試合はとにかく点をとりまくり取られまくっていた。愛媛戦7-4、松本戦5-2、町田戦(アウェイ)4-3、福岡戦3-1。野球みたいなスコアと言われたのが懐かしい。

中でもこの福岡戦は最も完成度が高かった印象があり、相手の井原監督が「正直レベルの差を感じずにはいられない」と試合後にコメントしたのを覚えている。それも含めてこの夏の快進撃がひとつも映像に残らなかったのはとても残念に思う。

特にこの試合は「あれ?なんかスタジアムに活気が出てきた?」と感じたことが心に残っている。瑞穂開催で観客数が13,914人。夏休みだったことを考えればそれほど爆発的な集客ではないが、この頃は13,000人入れば多い方だった。

なお名古屋の観客が増えたのは営業・広報などの努力が大きかったと思うが、この夏のとんでもない得点(と失点)の試合の影響も大きかったと自分は思っている。

2017年 第35節 アウェイ岐阜戦 2017年10月1日

名岐ダービーのアウェイ戦。満員の長良川競技場、スタンドをぐるりと埋め尽くした名古屋と岐阜のコレオは、知り合いの岐阜サポさんによると未だに忘れられない光景だそうだ。この試合は岐阜でテレビ放送されたため岐阜市民の私は録画を残すことができたのがありがたかった。

この頃はシャビエル&青木による右サイドからの攻撃で得点を量産していて、解説者にも「名古屋の強烈な右」と言われていた。この試合でシャビエルはハットトリック、青木も見事な得点を決めている。

なお、風間&大木というロマン派監督同士の対決でもあった。試合後に風間監督が報道陣に「面白かっただろ?」という言葉を残してスタジアムを後にしたというかっこいいエピソードが残っている。

2017年 第37節 湘南戦 2017年10月15日

この試合は負けると2位長崎の結果によっては、目の前で湘南の昇格が決まるという大一番でもあった。本当に湘南さんとの対戦は何かがある。

雨の中、シーソーゲームの熱戦になった。この試合では名古屋の切り替えの早さが湘南を上回る場面が多く見られた。湘南の攻略方としてはとても有効だったと思う。勝利の後、コンコースでばったり会った友達にいきなり抱きついて泣いてしまった私である。2016年最終戦・降格が決まったあの日あの試合のリベンジを果たせた、という気持ちがそれだけ強かったのだ。

近年、湘南を苦手としているだけにこの試合はとても心に残っている。来年こそまた勝とう。

J1昇格プレーオフ決勝 福岡戦 2017年12月3日

結果的にスコアレスドローだったが、特に風間さんが守備的になって相手に点を与えない戦いをしたというイメージは自分にはない。全員が引いて守ろうとしたのはATの数分である。点は取ろうとしていたが取れなかった。BS放送の解説・小島さんも後半44分頃にの時に「名古屋は時間を使ってもいいと思うんですけどね、点を取りに行っていますね」とコメントしている。リーグ最小失点の相手が本気で守ったらそう簡単にはこじ開けられない。福岡と名古屋の順位が逆だったら大変だっただろうなとは思う。

試合後の風間監督が発した「とんでもないスタジアム」という言葉が印象深い。

2018年 第21節 鹿島戦 2019年8月11日

昨年の夏の試合はやはり鹿島戦がいちばん印象深い。豊田スタジアムでの来場者記録更新(43,579人)。大観衆の熱気は当分忘れられないだろう。満員のスタジアムで相手はJリーグがスタートした頃から苦手の鹿島。その鹿島相手に2度追いつかれながら突き放して勝利をおさめた、私の記憶を辿るかぎり、鹿島にあれだけ快勝した試合は他になかったと思う。

2019年 第11節 浦和戦 2019年5月12日

この試合は名古屋での風間サッカーの一つの頂点だったと思う。ハーフコートゲーム、ボールを支配し続ける、そんな遥か高みに見えた理想にほんの少し手が届いた試合だった。さながら鳥かごのように相手をハーフコートに押し込めて攻撃する。ボールを奪われてもそこは鳥かご。すぐに奪い返し更に攻撃につなげる。相手にほとんど何もさせない。理想が実現すると恐ろしいほどの強さを発揮することを目の当たりにして、勝った瞬間呆然としてしまった。因みに近くの席にいたお父さん&小さい息子さんも「つ、強い・・・。」と絶句していた。

楽しかった2年半の思い出をたどるコラムはこの浦和戦の思い出で締めくくります。
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最後までお付き合いいただきありがとうございました。

About The Author

リリア
岐阜生まれ岐阜育ち岐阜在住のグランパスサポーター。Jリーグ開始前からサッカーを見ていた。三菱ダイヤモンドサッカーは欠かさず見ていた。他にもクラシック音楽、乗り鉄(まだひよっ子)、ロシア文学、ミステリー、ポケモンなど趣味は多い。
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