試合後、監督会見では「選手たちには、いい内容のサッカーをしたと声を掛けました。」と語りましたが、「勝てない事」に責任を感じている選手がいる状態。
(詳しくはこちらを→明治安田生命J1リーグ第17節 浦和戦後 選手コメント | インサイド・グランパス)
ー丸山祐市選手が戦列を離れて以降、キャプテンを務めています。キャプテンという役割をどのように感じていますか?
僕がキャプテンマークを巻いてから勝てていないので、すごく責任を感じています。チームを勝利に導けるのがキャプテンの役目だと思うので反省しています。マルくんから(キャプテンを)引き継いでいる状況なので、もっとリーダーシップを取ることを意識しなくてはいけません。そういう部分で人間として成長できると思いますし、サッカー選手としてもランクが一つ、二つ上がればいいなと思っています。「ポジティブにやれている」という印象です。
勝ちながら変化をする事は改めて「極めて難しい事」だと感じさせられる試合でした。
茨の道を掻き分けながら進んでいるチームはどんな試合をしたのか?振り返っていきます。
スタメン
前節から中谷と木本の場所を入れ替え、センター三枚からセンター二枚へ変更。
センターバックを入れ替えた意図としては仙台戦で吉田と木本の感覚の食い違いが起きていた事。(丸山がいない今、吉田の指示が普段より強く出る為)成瀬の隣の方が味方の意図に柔軟に対応できる、ボール保持がセンターバックが頑張らなくても出来る。というような狙いだったかもしれない。
試合の流れ
名古屋は試合開始から浦和の面での前向きの圧力に手こずり、攻め辛い時間が続く。
名古屋がボールを保持しても浦和は線と中盤を分断する壁を作り「中からは絶対にやらせない」ような形に。
米本、稲垣が相手のポジションの間で受けながら前進することは名古屋のチームの枠組みにあまりない為、自陣からチャレンジするような縦方向への楔を打つ。柿谷or山崎が降りてボールを脱出させる。サイドから早く攻める。というような攻め方を名古屋は選択させられる。
楔は中央に壁がある為、相手を仕留めるまで行かず。前線の選手が降りる事でボールはプレッシャーから脱出できたが、前線の枚数が減るので相手を崩す布石にはならず。
選択肢の中には可能性の低い選択があったものの、唯一浦和は、中盤に敷く壁を横にずらされたときに壁を作っていた選手が前に出てきて壁が崩れる瞬間があるので、そこのズレを名古屋は速さで突き開始7分に決定機を迎えた。
名古屋が時間をかけると米本と稲垣を消す意識が強くなったが、大きくサイドを変えて名古屋が縦方向のエンジンのギアを上げる瞬間には中盤の壁はあまり付いてこれなかった。
だからこそ浦和としてはボールが展開される前に名古屋を人の圧で苦しめようとしたのかもしれない。
しかし縦に早くいかれたので相手からすると守備の意識統一が難しくなってしまったのかもしれない。(少しずつ球際の判断が遅れたように見えた。)
後ろが重くなったらプレスに行く名古屋
前からプレッシャーに行くときの名古屋は柴戸1人が最終ラインのビルドアップにフォローに行くときには構える。柴戸と小泉が下がった時は前からプレスに行く。守備の判断に関してはチーム内でかなり的確な判断で、サイドでの裏抜け一発からの一対一を迫られる部分以外は「いつもの名古屋」が帰って来ており、前半浦和が支配していた中央は、後半名古屋の守備で浦和の選手を追い出す事になり、浦和は徐々に後ろが重くなっていったように感じた。
選手間の距離
柿谷が相手のプレッシャーをかわすビルドアップに参加すると、山崎の近くに陣取る味方がいなくなるため。選手個人の「時間を作る能力」が必要になる。
山崎との距離感が近い選手がいる時に名古屋は上手くチームが回る傾向にあるので、(今回の浦和戦では7分20秒のシーン、14分24秒のシーン)
山崎の周りから人がいなくなると彼1人が「空回り感」があるように見えてしまう。
柿谷が降りたことで負荷が減るポジションの選手が攻撃のスイッチと同時に前へ出てくれると柿谷や山崎としては助かったと思うが、その攻め方の選択肢は名古屋の「手札」にそこまでたくさんない事だったので、チャレンジするがあと一歩という状況が続いた。
後半から選手の距離を近くするためにも、選手同士近い距離間でのプレイが得意な長澤や齋藤といった選手を投入して改善は図っていった。
柿谷と山崎がやりやすいようにチームとして意識を統一するのか?柿谷と山崎がチームが回るように踏ん張るのか?今後その意識の選択を試合中の各場面で変えていけるようになれば「負けないチーム」から「勝てるチーム」になり、ピッチにいる選手全員がヒーローになる世界が来るかもしれない。
良かった所
- 相手を終始後ろに重くさせられていた部分(名古屋っぽさの復活)
- ポジション間に縦パスを入れる意識の増加(出す側の意識の向上だけでなく、長澤、齋藤ら受ける側のの輝きも含め)
- 成瀬よ頑張ってくれてありがとう。(柔軟に動いてくれる分木本はこの前よりかなりやりやすかったはず。)
心配な所
- 前が「行ける!」と思うタイミングでビルドアップ部隊が「チャレンジが中々出来ない」部分。
- ※リスク管理というよりは意識のズレで出してくれない時が度々。「前が欲しい時」「後ろが出したい時」のバランスを大切に。
- ファーストタッチで相手との駆け引きに勝負をつけたいのは分かるし、そういう枠組みなのは試合前のアップを見ればわかるが、もう少し個人個人がボールを大切に扱いたい所。タッチなどが大味で、「予想外な事が起きて良い時」と「ここは大切にしたい時」の差を見極めていければ…
まとめ
「負けないチーム」を作っている名古屋としては、前半の決定機数回を決められていれば…という部分に尽きますが、相手が攻めあぐねて後ろ向きにどんどん重くなるような蛇のような苦しめ方は「帰ってきたな」という感覚になりました。
「負けないチーム」から「勝てるチーム」への変化を探る時期はどんなチームでも苦しくなります。監督、選手。チームの全員が進化する絶好の機会。
最後に
地獄のACLが始まります。ACLは「理想」や「信念」なんて言ってられない「勝ち負け」が重くのしかかる試合。チーム全員の力が必要になる戦いです。
もし中継があれば選手達の頑張りをしっかりと目に焼き付けたいですね。