はじめに
はじめまして、ken44と申します。この度、こうした場をいただいた理由は、大きく分けて2つあります。
- 風間前監督の成績不振による解任に対して、多くの暖かい声が寄せられていたのが印象的だった。一方で、タイトルを獲得しリーグでも上位に食い込んだマッシモに対して何もないのはあまりにも寂しく、不公平で、クラブとして不健全だと思った。
- 前日の報道から多少の時間があり、事実を受けとめる準備はしていたはずだが、いざ目の前に突き付けられると、事実に頭がついて来ないような気持ちになってきてしまった(似たような人も少なくないはず)。そこで、自分なりに言葉にすることで区切りを付け、次に進もうと思った。
こうした理由から、自分からお願いして、今回の機会をいただきました。自分の気持ちをかなり素直に吐き出せたとは感じていますが、その代わりに前回関西シャチさんの書かれたもののように冷静でもロジカルでもありません。ゴリゴリの主観12割、客観-2割くらいで構成されています。ですから、「暴論だ」「それはおかしい」という批判はどんなものでも受け付けます。
「勝てば選手のおかげ、負ければ監督の責任」
こんな言葉が使われ出したのはいつからだろうか。「勝利に対して一番に評価されるのは選手。逆に、敗北に対して一番に糾弾されるのは監督の采配」。そのままの意味である。
そして、マッシモ・フィッカデンティは「勝てば選手のおかげ、負ければ監督の責任」を体現する男だったと感じる。
もちろん、監督としての彼を全肯定などしない。1点リードで終盤に相手の猛攻を浴びる様子は最大限好意的に表現してもスリリングなものであった。また数々のレビュー記事では似たような問題点が指摘されていた以上、それらは事実として存在したのだろう。
しかし、別の思いもあった。「理不尽だ」と思ったのだ。敗戦後は鬼の首でも獲ったかのような批難の嵐を浴びるに留まらず、勝利後もネチネチと粗探しされる始末。当然その中身を精査していけば指摘自体は極めて妥当なものもあったのだろう。しかし、中2日で何ができるというのか?細かいミスの修正などはともかく、1試合後には全ての課題が解決されているとでも?ターンオーバー?若手の起用?否定はしないし見てみたい気持ちは当然あったが、それで秋まで4大タイトル全ての獲得の可能性を残せていただろうか?(だからこそ、ある程度時間的な余裕を得られる来季が楽しみでもあったのだが・・・)
「プランBが無い」「逆転できない」というのがサポーターのお決まりの文句だった。しかし、そんな不満が噴出するのは「そもそもプランAをほとんど遂行できない」「プランAを通した所で勝ち切れない事も多い」というチームも少なくない中で、「プランAを通しさえすれば勝てる」「先制すれば確実に流れを掴める」ということが前提だと、省みた者がどれほどいたか?
この2年間、マッシモはひたすらに減点法で採点され続けた。
モヤモヤした気持ちが時折首をもたげるのを感じながら、厳しい初夏、快進撃と歓喜の秋が過ぎ、激動のシーズンは終わった。そして、その時は突然訪れた。
後悔と、そして愛と
意外にも(?)、クラブから契約満了という公式リリースが発せられた後、サポーターは感謝と賞賛の声を上げた。そうか、なんだかんだと言われながらも皆リスペクトと愛を感じていたのかと安堵を感じつつ、またしても別の感情が湧き上がる。
「なぜ今なんだよ。」
その機会はいくらでもあったはずだ。タイトル獲得だけではない。無敗でACLグループリーグ勝ち抜け。過密日程を6勝1分で駆け抜けた9月。偉そうに言っているが僕だってそうだ。なぜあの時、もっと前向きな発信が出来なかったのか?なぜあの時、理不尽だと思う気持ちを押し殺してしまったのか?なぜ・・・もっともこんな話を耳にすれば、彼はまた皮肉たっぷりに、例のブーイングの話をまた持ち出してきて、嫌味半分に自分の成果を誇ったことだろう。
だから僕はせめて、2021年のルヴァンカップ制覇を振り返る度に少しばかりの後悔の念を感じながら、あなたが星を4つにしてくれたこのクラブを永遠に見守り、愛を注ぎ続ける事を、ここに誓おうじゃないか。
ささやかな抵抗
このままではマッシモに負けて終わったような気分なので、ちょっとしたカウンターを。
いつか、前監督がしてきたことを「煙」と呼んでこき下ろしたことがあった。本場イタリアで揉まれてきた自分が、全く違うサッカーを見せてやると。
だが蓋を開けてみればどうか?確かにこの2年でグランパスに来てくれた選手は皆素晴らしかった。相馬や成瀬の飛躍もあった。
しかし、マッシモ名古屋の屋台骨を支えたのは?
丸山。中谷。宮原。吉田。米本。前田。
そう。皆、前監督が信じた選手たちだ。否定したいだろうが、前監督が撒いた「煙」に何度救われたか、数えたことはあるのだろうか?
でも、それはあなたもそうなんだろう?
いつかグランパスが窮地に追い込まれた時に、今度はあなたの「煙」が、助けてくれるんだろ?気迫のこもった守備が、0を1に、1を3にしてくれるんだろ?
いつかそれを見られるのを、楽しみに待つよ。
「進む道が分かれてしまうことはある」。確かにそうだ。しかし、再び交わるのは難しくても、2つの道が近づくことはある。日本を愛してくれるあなたのことだ、来年の夏か秋にはどこかのチームから助け舟を求められ、また同じように情熱を注ぎ、救っていても何も不思議じゃない。
Ci vediamo, Mister Massimo.
ゴメンね。これしかなかったよ。