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#グランパス の左CBどうするの問題を考える #grampus

はじめに

名古屋グランパスは2026年、左CBのポジションに悩んでいます。

【前編】新生グランパスの夜明け前に知っておきたい「基礎教養」。データで紐解くミシャ式3バックの正体 #grampus | グラぽ

【後編】新生グランパスの「最適解」はこれだ。データ分析で導き出す、ミシャ式3バックの最終結論 #grampus | グラぽ

キャンプの段階から高嶺朋樹や徳元悠平らが試されたものの、今ひとつ固定できませんでした。そもそもミシャ式のサイドCB、特に左CBはミシャにとってこだわりのポイントのようです。

  • 素養①:圧倒的な「攻撃性能」と「チャンスメイク能力」:超長距離かつ高精度のフィード能力(プレースキック含む)
  • 素養②:「運ぶ」能力とフィニッシュへの関与:レーンを跨ぐ攻撃参加とフィニッシュ精度
  • 素養③:広大なスペースを守り切る対人能力(デュエル):1対1の絶対的な強度とスプリントバック能力
  • 素養④:ビルドアップの「安定化装置」としての機能:ミスをしない技術と冷静な判断力
  • 素養⑤:「センターCB」から「ボランチ」への可変能力:戦術的知性とポジショニング
  • 素養⑥:守備統率とカバーリングエリアの広さ:予測力とインターセプト技術

こうしてみてみると、空中戦はさほど重視していないのか、求めている素養に入りません。かつてのキム・ミンテのように、DFラインで1人高い選手がいれば、という感じなのかもしれません。

守備・奪取指標の比較(DFとしての基礎能力)※データは2025年

選手名

素養対応

守備CBP (2024/25)

奪取CBP (2024/25)

三國ケネディエブス

③対人能力 ⑥カバーエリア

97.17 (2位)

317.08 (30位)

佐藤 瑶大

①攻撃性能

②フィニッシュ関与と精度

53.96

263.56

宮 大樹

②運ぶ能力(クロス)

47.34 (65位)

177.77

野上 結貴

②運ぶ能力 ④ビルドアップ ⑤可変能力

146.04

河面 旺成

②運ぶ能力 ④ビルドアップ

46.64

129.17

現時点で公開練習試合・リーグ戦で試されているのは、高嶺朋樹・徳元悠平・野上結貴・三國ケネディエブスの4人です。

当初ミシャ式を昨年札幌で経験していたことを期待していた宮大樹は札幌では岩政大樹監督のゾーンディフェンスをやってきていて、ミシャ式はむしろはじめての経験だったようです。そのため、高さと守備力の点で藤井陽也と同じセンターCBの控え枠になっているようです。

高嶺朋樹は中盤の組み立て、強度を保つためを考えたらCBでの起用は可能な限り避けたいはず。そうなると左CB候補は徳元悠平・野上結貴・三國ケネディエブスに加えて河面旺成・佐藤瑶大になりそうです。

第1戦・第2戦を振り返って

第1節清水エスパルス戦は身長が低い(170cm)徳元悠平を起用し、見事に対面の北川航也を完封しました。しかし戦前に懸念のあった、高身長のオ・セフン選手は何故か180cmある原輝綺選手側で勝負してくれたので大きな問題がなかったとも言えます。

第2節に野上結貴が左CBに起用されたことの仮説

第1節で和泉竜司が怪我をしたことで、途中起用した甲田英將は、良いインターセプトこそあったものの全体的に守備の面では不安が残りました。

ガンバ大阪の攻撃といえば、やはり昨年も大きな働きをしたのがイッサム・ジェバリ。そして乗りに乗っているのが山下諒也です。

イッサム・ジェバリのFootball-Labプレースタイル指標
イッサム・ジェバリのFootball-Labプレースタイル指標
山下諒也のFootball-Labプレースタイル指標
山下諒也のFootball-Labプレースタイル指標

この2人の相手を甲田英將にさせても、甲田英將の良さは出せません。

常々「マンマークだ!」と言い放つミシャ監督ですので、山下諒也:徳元悠平、イッサム・ジェバリ:野上結貴というマンマークペアを組むように考えたのではないか、というのが仮説です。

実際の第2節はどうだったのか

第2節ガンバ大阪戦は対面に山下諒也と半田陸のタンデムに押し込まれ、野上結貴はあまり活躍できませんでした。一方で右CBは原輝綺が安定した活躍を見せ、守備だけでなくパスによるチャンス作りもできているようです。

これをデータで検証してみましょう。

2節野上

1節徳元

2節原

アシスト

0

0

0

キーパス

0

1

2

クロス(成功数)

0 (0)

3 (2)

2 (2)

パス成功数

9/13 (69%)

34/42 (81%)

30/38 (79%)

敵陣パス成功数

4/7 (57%)

5/8 (63%)

19/25 (76%)

自陣パス成功数

5/6 (83%)

29/34 (85%)

11/13 (85%)

ロングボール(成功率)

3/7 (43%)

守備関与数

6

9

6

タックル(成功数)

0 (0)

2 (1)

2 (2)

インターセプト

1

2

1

クリア

3

5

2

シュートブロック

2

0

1

リカバリー

3

6

2

地上戦デュエル(勝利数)

1 (0)

6 (5)

5 (4)

空中戦デュエル(勝利数)

6 (3)

2 (1)

2 (2)

ファウル

2

1

1

被ドリブル突破

0

0

0

シュートにつながるミス

0

0

0

タッチ数

22

65

56

コントロールミス

1

1

1

ドリブル(成功数)

0 (0)

1 (1)

0 (0)

被ファウル

2

2

ロスト

5

12

9

ボール持ち運び総距離

42.9 m

71.8 m

120.1 m

キャリー

5

12

16

プログレッシブ・キャリー

1

総前進距離

29.3 m

10.4 m

38.6 m

持ち運び前進距離

12.4 m

最長前進キャリー

12.1 m

こちらのデータでは、やはり第2節はパスがうまく出せない状況で、野上結貴のスコアのほとんどが守備のものでした。一方で、野上結貴のデュエルの数字は悪くない。マンマークの質は良くて、その点ではグランパスの狙いは成功していました。

しかし、結果としては良い攻撃ができなかった。それは何故でしょうか?

大前提:マンマークの守備を崩すにはどうしたら良いか

ハードなマンマーク(人に強く付いて潰す/追い回す)を誇るチームは、だいたい「相手の良さを消す代わりに、局所の連鎖・引っ張られ・背後のケア」にコストがかかります。攻略プランは、その代償を突く設計にします。

  1. 相手が人に付く=配置が崩れやすい(1人動かすと、連鎖して全体がズレる)
  2. 引っ張られるとライン間・背後に穴(CBが釣り出される/SBが高く引っ張られる)
  3. 受け手が消されやすい=ボール側は詰みやすい(近場で繋ごうとすると狩られる)
  4. 守備のエネルギーを使う(長い追走・切替を続けさせると後半落ちる)

短いキーワードで整理すると「①釣る」「②裏を取る」「③3人目で剥がす」「④相手の走力を枯らす」が柱になります。

付け加えるなら「⑤止まって足元でボールを受けないこと」と「⑥相手の矢印のベクトルを折る(逆を突く)こと」が大事です。パススピードを上げ、ワンタッチプレイを増やすことで相手のプレスの空振りを誘発できます。

ここまでを完璧に遂行できれば、世界レベルのマンマーク守備も破壊できるでしょう。

ガンバ大阪のアプローチ

ジェバリは昨年のイメージと異なり、トップ下の位置で出場しました。野上選手を引き出し、守備のギャップをつくり、ボールの「起点」となり、攻撃の深さを作っていました。

  • 高い位置でのボールキープ: タッチ数は29回と多くはありませんが、敵陣でのパス成功率が72%(13/18)と高く、前線で確実にボールを収めて味方につないでいます 。
  • デュエルでの優位性: 地上戦デュエル勝利数が5回と多く、前線で体を張ってボールをキープできています 。これにより、野上選手はラインを上げてコンパクトに守るよりも、ジェバリ選手への対応(ファウル数2回 )や裏への警戒を優先せざるを得ず、結果として最終ラインが下がってしまった可能性があります。
  • キーパスによる決定機演出: ジェバリ選手は2本のキーパスを記録しており 、野上選手や周囲のDFが彼に注意を向けざるを得ない状況を作り出し、その隙を山下選手や半田選手に使われるという悪循環を生んでいたと言えます。

秀逸だったのが安部柊斗のプレーぶりで、ガンバ大阪の中盤ほぼすべてをかなり制圧していることがわかります。ボールリカバリーが「6」は両チームで最多。パスの成功率も高く、守備関与も高い。ボールのタッチ数もかなり高め。60分で退いた選手とは思えない数値です。

  • 圧倒的なボール関与とパス成功率: 安部選手は75回のタッチを記録し、これは野上選手(22回)の3倍以上です 。パス成功数は51本(成功率82%)で、特に敵陣でのパス成功数が28本と非常に多いのが特徴です 。
  • 広範囲な展開力: ボール持ち運び総距離が196.1mと、今回比較した選手の中で群を抜いています(原選手でも120.1m)。安部選手が中盤で自由にボールを運び、左右に散らすことで、野上選手を含む名古屋のDFラインを左右に揺さぶり続け、守備ブロックを低い位置に押し下げたと考えられます。

2節安部柊斗

2節ジェバリ

アシスト

0

0

キーパス

0

2

クロス(成功数)

0 (0)

0 (0)

パス成功数

51/62 (82%)

15/20 (75%)

敵陣パス成功数

28/34 (82%)

13/18 (72%)

自陣パス成功数

23/28 (82%)

2/2 (100%)

ロングボール(成功率)

守備関与数

3

0

タックル(成功数)

1 (0)

0 (0)

インターセプト

1

0

クリア

1

0

シュートブロック

0

0

リカバリー

6

2

地上戦デュエル(勝利数)

4 (2)

5 (1)

空中戦デュエル(勝利数)

7 (2)

ファウル

2

被ドリブル突破

0

0

シュートにつながるミス

0

0

タッチ数

76

29

コントロールミス

1

3

ドリブル(成功数)

0 (0)

1 (0)

被ファウル

1

1

ロスト

14

11

ボール持ち運び総距離

196.1 m

93.7 m

キャリー

27

10

プログレッシブ・キャリー

1

1

総前進距離

61.5 m

9.8 m

持ち運び前進距離

20.5 m

15.3 m

最長前進キャリー

18 m

15.2 m

ジェバリ+安部と野上結貴のヒートマップ・守備機会位置
ジェバリ+安部と野上結貴のヒートマップ・守備機会位置

名古屋グランパスの誤算

ジェバリがトップ下でプレーすると野上結貴がマンマーク役ですので野上結貴がだいぶ自分の持ち場を離れて守備をしていることがわかります。(守備機会位置の図参照)

共有されたデータを分析すると、ご指摘の通り第2節のガンバ大阪戦における野上選手のスタッツは守備に偏重しており、攻撃の組み立て(ビルドアップ)にほとんど関与できていないことが明確に表れています。

ここで1つ仮説があります。マンツーマンにこだわりすぎたために、野上結貴選手が配球の組み立てができなくなったのではないかということです。マンツーマン守備をするとなると、あまりボールにさわることができません。

データに現れているのがボール関与数(タッチ数)の極端な少なさです。

  • タッチ数: 右CBの原選手が56回、第1節の徳元選手が65回であるのに対し、野上選手はわずか22回しかボールに触れていません 。
  • パス成功数: 原選手が30本(成功率79%)を通している一方、野上選手は9本(成功率69%)にとどまっています 。

さらに守備のスタッツが良いということは、それだけ守備を強いられていたということです。

  • 空中戦: チーム内で目立つ6回の空中戦(3回勝利)を記録しており、地上戦ではなく浮き球やクロスへの対応を強いられていたことがわかります 。
  • クリア・ブロック: クリア3回、シュートブロック2回と、自陣深い位置での守備アクションが多く記録されています 。

結果として高い位置をとってパスを供給する余裕がなく、自陣でのクリアや跳ね返しに終始してしまったと言えます。

右CBの原選手が攻撃の起点となれていた要因の一つに「ボールの持ち運び」があります。

  • 持ち運び総距離: 原選手が120.1mボールを運んでいるのに対し、野上選手は42.9mです 。
  • 敵陣でのパス: 原選手は敵陣で19本のパスを通していますが、野上選手はわずか4本です 。

第1節の徳元選手(敵陣パス5本、タッチ65回)と比較しても、野上選手がボールを持って前進し、相手のブロックを崩すようなプレーが封じられたことで、チーム全体が押し上げられず苦戦に繋がったと考えられます。

またなぜ安部柊斗選手のキャリー(ボールを運ぶ距離)が伸びたかと言えば、野上結貴選手がジェバリ選手に引っぱられるので、左サイドの守備が少しいびつになっていたからじゃないでしょうか?

いずれにせよ、中盤のマンツーマン守備を成立させないようにする、というのがガンバ大阪の狙いだったのでは?と推察します。

ガンバ大阪は、名古屋グランパスの狙いであった「野上:ジェバリと徳元:山下の1対1」ではなく、「野上:ジェバリ+安部、徳元:山下+半田」という、局所的数的優位を作りにいくことで、マンマーク守備を破壊したのではないでしょうか。

副次的に起きた問題:ビルドアップの「出口」消失

ミシャ式では左CBがサイドに出てボールの展開先になる、ということを狙います。

しかし、野上選手は中央に迎撃しにいくのでどうしても戻りが遅れます。そうなるとサイドに出る回数は必然的に減ってしまいます。前述のヒートマップのように中央に残っていたため、相手の密集地帯(安部選手らがプレッシャーをかけやすいエリア)に位置し続けました。

結果として中央に留まる野上選手へのパスはリスクが高く、味方も出しにくかったはずです。また、野上選手自身もボールを持った際、すぐ近くにプレッシャーがあるため、効果的な縦パスが出せず、クリア気味に蹴るしかなかった(パス成功率低下)と推測されます。

どうすればよかったのか?

結果論として言うと、ガンバ戦くらい極端にマンマーク守備を徹底するのであれば、

  1. 前線を1人減らして
  2. その分3バックは3人用意する
  3. マンマーカーはトップ下に対応する中盤に配置する

としたほうがよかったのではないでしょうか。

あくまで結果論として自分が言えることなのですが、野上結貴を中盤底に配置するプランが練習試合で試されていたとのことで、そこに切り替えるのも1つの手だったと思っています。

では、第3節の左CBをどうすべきなのか

案1:徳元悠平に戻す

第1節清水エスパルス戦ではうまくいきました。ただ、これは高い位置でボールを収めて徳元悠平のオーバーラップの発射台になってくれた和泉竜司あってのことだったかもしれません。

一方でキャンプからかなりの回数この布陣を練習しているはずなので、いったん立ち返る場所としてはアリなのかもしれません。

案2:野上結貴を継続する

ガンバ大阪戦ではスカウティングミスと、ガンバ大阪のオーバーロード(過負荷)攻撃にやられた感じではあるので、もう一度チャンスを与えられる可能性はあるかもしれません。右のほうが良い働きをできるとはいえ、ミシャ式の3バックの理解度の高さを活かさない手はありません。

案3:ビルドアップを改善するなら河面旺成

ミシャは攻撃が大好き。ビルドアップを重視するのであれば河面旺成のパス能力は重要だと思います。野上を1列あげて河面を入れられれば・・・なんてガンバ戦で妄想していました。(メンバーには入ってませんでしたので本当に妄想です)

案4:よりハードなマンマーカー内田宅哉を起用する

対面が体格に優れ、強いマテウス・ジェズスなので、徳元悠平よりもハードなマンマーカーで上がりも見せられる内田宅哉の起用も選択肢に入るのではないでしょうか。左CBも結構長谷川健太前監督のときはやっていました。

最後に

第2節のガンバ大阪戦で露呈した左CB周辺の課題は、決して野上選手の能力不足などではなく、相手の巧妙な「配置の罠」によって引き起こされた構造的な問題でした。相手FWに中央へピン留めされることでサイドの守備が数的不利に陥り、さらにビルドアップの出口までもが塞がれてしまうという悪循環は、現代サッカーにおける配置とバランスの重要性を改めて浮き彫りにしています。

しかし、見方を変えれば、この致命的な課題がシーズン序盤(第2節)で明確に言語化されたことは、名古屋グランパスにとってポジティブに捉えるべき要素です。三國ケネディエブス選手や内田宅哉選手の対人能力で中央のピン留めを無効化するのか。あるいは、河面旺成選手や宮大樹選手を起用して左サイドからの展開力を再構築するのか。それとも原点回帰で徳元悠平選手を起用するのか。チームには、このパズルを解くための手駒は十分に揃っています。

次回の第3節、ベンチがこの「左サイドの機能不全」という課題に対してどのような解答を用意してくるのか。スターティングメンバーの顔ぶれ、そして試合開始直後の左CBの「立ち位置」に、ぜひ注目してみてください。

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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