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[コラム] グランパス経営陣の刷新の意味とは?「Love!グランパス宣言」との関連 ※グランパス観客動員40万人への道番外編

中スポはじめ、多くの新聞・Webニュースなどで報じられていますが、16日行われたグランパスの取締役会で豊田章男トヨタ自動車社長の名古屋グランパスエイト会長就任、久米GMの社長就任が承認されました。

そのなかで報知などの記事では豊田会長が「トヨタと聞くとお金と思われる。でも私は財布じゃありません」と語ったことが報じられています。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150417-00000008-sph-socc

間違いないことは、これまで「金は出しても口は出さない」を実践してきたトヨタ自動車がはじめて具体的、かつ直接的な手を打ってきたということです。

トヨタが直接乗り出してくる意味とは

トヨタ自動車は、スポーツやモータースポーツに対する支援についてはとても手厚く、撤退の相次ぐ野球部も近年優勝したり、さらに東日本野球部の創設というかたちで拡張をしたりしてきました。ラグビーもトップリーグに送り込んでいますし、バスケットもそうです。

なぜそういった活動を行うか、といえば格好良く言えば「企業CSR」ということになりますが、わかりやすく「企業による社会貢献」と言い換えられます。グランパスも直接的に各幼稚園や学校に対するスクールの実施、大人のためのサッカースクールの実施など、地域に対する貢献を忘れていません。また古くからの考え方で言えば「企業の広告宣伝」という価値もあり、「トヨタグループ社員の士気高揚や一体感の醸成」という価値もあります。

情けは人の為ならず、という言葉があります(情けは人のためではなく、いずれは巡って自分に返ってくるのであるから、誰にでも親切にしておいた方が良いということわざ)。野球であったり、サッカーであったり、モータースポーツであったり、そういうチームを持つことで、社会貢献を繰り返していくことが、会社のイメージの向上に役立ち、最終的に自分たちのためにもなるということです。会社で仕事はものすごくできるんだけど仕事以外のことは一切しない人は、仕事についての評価は高くてもあまり求心力は高くないため出世はしづらい、でも仕事の評価もある程度以上あって、それでいて部下の面倒見が良かったり周囲への気配りができる人のほうが出世しやすい、という状況があるのと似ていると思います。

ただ、企業スポーツもリスクを伴うことがあります。プロ野球の読売ジャイアンツは幅広いファン層を抱えていますが、一方で強烈なアンチを抱えています。ただお金をかけて強くなっても、アンチを抱えてしまうのでは企業としてはそういうチームを抱えていくメリットはありません。これまでグランパスに「口を出さない」方針だったのはトヨタを全面に押し出してアンチを抱えることのリスク、デメリットを避けるという意味があったのだと思われます。

今回豊田章男会長の就任は、そのリスクを負ってでも、グランパスというチームを持っていることの「価値を最大化」しよう、という意味があると思われます。

グランパスがトヨタ自動車に提供できる価値とは

もう一度整理すると、企業がスポーツ支援を行う意味は以下のようになります。

      スクール事業などによる地域への貢献
      スタジアムに人を集客することによる地域の活性化
      企業の広告宣伝/イメージの向上
      社員の士気高揚や一体感の醸成

1は現在でも頑張ってやっています。グランパスのスタッフの皆様の頑張りに感謝します。

一方で、2については4万人以上の収容が可能な豊田スタジアムを満員にできない状況が続いています。人が集まればそこで飲食する人が出てきて地域の飲食店が潤い、買い物をする人がいれば店舗が潤い、ものを作っている企業が潤います。収入もそれだけアップして、資金面での余裕が出ます。さらに地域からの支援も期待できるようになり、地域の人たちが潜在顧客に変化していきます。そして収入が上がればまた選手を資金難で手放すことがなくなります。しかしこれについては即効性のある打ち手がないことも確かです。今、いろいろな打ち手を打っていますが、広告宣伝だけではどうにもならないのが確かだと思います。ここについては中断期間に「グランパス観客動員40万人への道」で語りたいと思います。

4については、優勝をした2010年が一番のモデルケースになると思います。レジェンド監督のもとで優勝をしたあの年は、サポーターだけではなくトヨタグループ企業の誰もが注目をした年になったと思います。しかしこのためには強い状態を続ける必要があり、そして効果も一過性のものに過ぎません。

最終的には結局3の、企業の広告宣伝、イメージの向上に尽きると思われます。それこそがグランパスが提供できるかもしれない価値です。

グランパスは今、価値を提供できているか?

グランパスを持っていることで企業のイメージの向上ができるようにするとしたら、必要なことはなんでしょうか?

2000年前後、グランパスは大きく観客動員数を減らしました。これは低迷期間に入ったこともあると思いますが、清商トリオ(望月重良、大岩剛、平野孝)の突然の解雇以来、グランパスといえば内紛という、「マイナスイメージのストーリー」が染み付いてしまったことが大きいと思われます。

よく芸能人であればマイナスイメージのつく事件を起こしても、しばらくしてしれっと復活していることがあります。芸能人のようにテレビで放っておいても目にするものならば視聴者が選択しているわけではないので、テレビ局さえ納得すればまた復活もできるでしょう。しかしお金を出して、1時間近くをかけて観に行く観客は、納得のいかない、腹の立つものに対してお金をかけてまで応援することはできません。そこがすべての本質だと思います。

その後も古賀正紘選手、ウェズレイ選手などの内紛が続き、すっかりそういうイメージが定着しているようにも思えます。マイナスイメージのあるチームでは、トヨタグループ企業が全体で20億以上の支援をする価値があるでしょうか。トヨタが持っていて良かった、と思わないと感じています。

ただ、2010年の優勝はイメージを変えるための切っ掛けにはなったと思います。奇しくも豊田章男さんもこのとき、優勝のシャーレを掲げていました。2011年も続けて優勝争いに絡みましたが、人気が大幅に向上することはなかったのが意外でした。強ければファンが増えると誤解をしていたのだと気付かされました。

だからこそのLove!グランパス宣言

と、いうことはトヨタが支援していて良かった、持っていて良かった、となるのは優勝することではないということです。あまりにも弱いと責任のなすりつけ合いの原因になってしまいますのでまたマイナスイメージがついてしまいますが、ある程度の水準を超えていれば、「強さよりも愛されること」が大事なのではないか、ということです。

今年からはじまったLoveグランパス宣言は、そういう価値をトヨタ自動車はじめとする支援企業に対して提供するよ!という宣言なのでしょう。

愛されるための工夫、まだまだ手探りで、広告宣伝に頼っていたり、中村直志というキャラクター、グランパスくんというキャラクターに頼っている部分がありますが、徐々にカイゼンを繰り返して良いのでは、と思っております。

ただ1つ、ヒントになるのは「誰かが恋に落ちるときに、スキスキ大好き!愛して!って言われてもなかなか好きにはならない。なんかのキッカケがあって好きになる」ということです。

好きになるには「なんらかのストーリー」が必要です。吊り橋効果では長続きしないと思いますが、応援したいな!って思うなにかをうまく作っていく、楽しかったなっていうエクスペリエンスを提供していく、ってことが必要になっていくのではないでしょうか。

これからのLove!グランパス宣言の流れに期待しています。

でもトヨタは甘くない

ただ単純に、グランパスを持つことによるメリットを最大化する、というだけであれば、支援の拡大を明言したり、それ以外にも方法はあるでしょう。しかし、今回は「豊田章男社長自らが」乗り出してきています。創業者一族の社長が乗り出してきているわけで、そこに恥をかかすことはできません。

トヨタグループ企業の支援は拡大してくれる期待はあります。(ただ、トヨタグループ企業以外の支援を新規に獲得するのは難しくなるかもしれません)ただ、手放しでお金を出してくれるほどトヨタという企業は甘くないと思うのです。

グランパスへ出すお金を投資だとしたら、それが適切に使われているのか、そこに対するチェックはこれまで以上に厳しくなると思われます。そこについては久米新社長の手腕にかかっているのではないでしょうか。

すべてのサイクルがいい方向に行くことを願っています。

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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