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名古屋グランパスについて語り合うページ

グランパスのデジタル・マーケティングは何をもたらすのか ※追加済み

この記事では、フットボリスタの名古屋特集 「グランパスの緻密な集客。そもそもチケッティングってなんだ? (2018年11月12日公開)」について、個人的な補足をしてみたいと思います。

そもそもデジタル・マーケティングってなに?

デジタルマーケティングとは、デジタルを活用してマーケティング目的を果たす活動です。

いやちょっと待ってよ。マーケティングってそもそもなんなのさ?っていう方もいらっしゃると思います。

本格的なマーケティングの始まりは、第二次世界大戦後の米国と言われています。戦争が終わったことで、「モノがあふれる時代」へと変化しました。モノがいっぱいあると、買う側には選択肢が産まれます。そこで「いかに自分たちの商品・サービスを世の中の人に知ってもらうか」が大切になってきたのです。これがマーケティングの原点です。

それに伴って、テレビ・ラジオCMや店頭での告知、新聞の折込や通販カタログの配布、郵便によるダイレクトメールなど、いくつもの「知ってもらう方法」が考えられ、実践されるようになりました。

そうしたアプローチが学問的に整理されて、できあがったのがマーケティングです。エベレット・M・ロジャースの『イノベーター理論』(1962年)やフィリップ・コトラーの『マーケティングマネジメント理論』(1967年)などは、今でもマーケティングの基礎理論として用いられています。いずれも顧客や市場の視点から、「どうしたらお客さんが買ってくれるようになるのか」を考えたものです。

原点は全て「商品・サービスがどうやったら売れるのか」「どうやったら買ってくれるのか」「どういうお金の使い方をすれば効率的に商品・サービスを知ってもらえるのか」など、「商売上の直接的なニーズ」から生まれたものなんです。

ながらくマーケティングはテレビやラジオのCM、チラシなどの広告によって「知ってもらう」を実現してきました。しかし、現在テレビやラジオなどの視聴時間はどんどんと減ってきていて、主戦場はデジタル・デバイス=スマホを媒介にした、ネットに移ってきたわけです。そこでうまれたのがデジタル・マーケティングというわけです。

また、大きな変化は、テレビCMのときとは異なり、こちら側が簡単にメディアに反応することができます。TwitterやFacebookで記事を公開すれば、すぐにコメントがつきます。その反応を見ながらマーケティングの施策が変化していくようになってきたのです。

デジタル・マーケティング時代の大きな変化

これまで、テレビ広告などの効果は、「視聴率」などによって測られてきました。

マーケティングは「どういうお金の使い方をすれば効率的に商品・サービスを知ってもらえるのか」ということを追求するためのものです。なので、たとえばテレビCMを出そうとする場合には、大まかに言って「この商品の主要購買層である20代の女性の視聴率が良い番組に広告を出せば広告の効果が高い」のように考えます。

ところが、この視聴率、案外いい加減なのです。視聴率を測る装置は非公表ですが、関東の場合は1800万世帯のうち、たった900世帯の情報なのです。これはサンプリングという考え方でやっているわけですが、誰がどのようにテレビを見ているのか、という情報としてはかなり粗いものになってしまいます。

ところが、デジタル・マーケティングの時代になると、「特定の個人」が「どのコンテンツ」を「どれくらい見ている」のかについて、かなり正確な数字=データを出すことができるようになります。これによって、「どんなコンテンツに広告を出せばいいのか」が効率的にわかるようになったのです。たとえば、新しいパソコンほしいな、って検索をしたあとにはその検索結果から画面に表示される広告がパソコンのものが多く表示されるようになります。これがデジタル・マーケティング時代になって起きた、大きな変化です。相手のことを知る=相手のデータを得ることはとても大事なのです。

グランパスが欲しいものはなにか

結論から先に言うと、グランパスが欲しいものは「お金」です。

ただ、お金を手に入れるにはものを売らなければなりません。売らなければならないもののなかで、一番大きなものは試合のチケットになります。

サッカーが唯一の娯楽だったら、誰もがサッカーを見に来るでしょう。ところが、現実問題として世の中には娯楽がいっぱいあります。一方で僕らが持っているお金には限りがあるので、どうやってその中から「グランパスの試合を観に行く」という選択をしてもらえるのか。そこから考えないとお金は手に入りません。ほかの娯楽にも使えるお金と時間を、グランパスに使って貰うにはどのようにすればいいのでしょうか。

それには、「グランパスの観戦という体験を、とっても楽しかった!って思って貰うこと」が必要です。そのためにグランパスは「夏祭り」「ガールズ・フェスタ」のような素敵な体験を用意しました。

この動画などによって、グランパスを応援すると、こんな楽しいことがあるかもよ!ということを訴えています。こういった動画でのプロモーションというのは、いままでにあまり類を見ないものだったと思います。

そして実際のイベントは大変楽しいものでした。先日開催されたハロウィンイベントでは多くのお子さんがイベントを楽しめたと思います。集客をしようとする施策が続くことで、グランパスのサービスは確実に向上しているのではないでしょうか。

ただ、マーケティングはこれで終わりではありません。デジタル・マーケティングではチケットを購入して貰うことによって得られるデータがあるのです。

一度来てくれた顧客を逃さないチケッティング

どんな素敵なイベントをやってサービスを向上しても、それを知らなければ誰もチケットを買うことはありませんし、すると試合に来ることはできません。せっかくグランパスが考えたいろいろな打ち手を伝えなければ、チケットを買おうとは思わないはずです。

そこで一度は購入したチケットからわかるデータを活用すれば、サポーターにグランパスがどんなイベントをやって楽しませようとしているのかを「効率良く」伝えることができるようになります。

チケットを買うとわかるデータには、次のようなものがあります。

  • サポーターの属性(名前、性別、年齢、住んでいる地域)
  • サポーターがどんな試合のチケットを過去買ったのか
  • サポーターがどんな対戦相手のチケットを買っているのか
  • サポーターがファンクラブ会員かどうか

先ほど、マーケティングでは「相手のデータを良く知ることが大事」と書きました。これを知ることによって「こんな人たちには、こんなことをすればいい」という打ち手を考えているのが今のグランパスなのです。

残念ながら、チケットの発売情報はよほど熱心なサポーターでなければ見逃してしまうことが多いです。

しかしたとえば、

  • 顧客の属性(性別)から女性に対して「ガールズ・フェスタ」の案内をする。
  • どんな試合のチケットを買ったのかという記録から、前半戦のチケットを購入してくれたお客様にお得なチケットの情報を提供する。
  • ファンクラブ会員に特典チケットの利用をリマインドする。

というような打ち手をうてば、チケットを売り始めることを知らせることができます。結果的にチケットを購入する機会を作ることができます。

大事なことは、一度以上観戦して「少しグランパスに好意を持っている人」に対して、チケット売り始めるよ!その試合ではこんな面白そうなことやるよ!ということをつたえることなんです。

理想を言えば1人1人に向けて、「◎◎さん、こないだは札幌戦見に来てくれましたね!今度の湘南戦、まだチケットをお買い求めじゃないようですけど、実はキャンセルが出てるんですよ!買いませんか?」というお知らせができるようにしたいのです。

実はそういう打ち手を実現するデータをくれているのがJリーグチケットだったりするのですが、なんとJリーグ全チームのなかでここまで活用しているのは名古屋グランパスだけなんですね(2018年11月現在)。

チケットがたくさん買われるように、あるいはチケットの買い忘れがないようにするための仕組みを提供してくれているのが、デジタル・マーケティングなのです。

ダイナミック・プライシングは何故採用されたのか

デジタル・マーケティング時代になったからこそできる打ち手、かつ、増収増益のための切り札がダイナミック・プライシングです。Twitterで見ている限りでは、批判も少なくないようです。本当に駄目な手段なのでしょうか?

先にも述べたように、名古屋グランパスの目的はお金を得ることです。選手を強化するにも、施設を良くしていくためにも、なんにでもお金が必要です。

たくさんお金を稼ぐためには、チケットの値段を上げられれば一番良いのですが、ただ単純に値上げしたら、みんなのお財布には大ダメージで、嫌になってしまいますよね。せっかく様々な打ち手をうっているのに、せっかく積み上げたサポーターの信頼貯金を全部失っては意味がありません。

サポーターはたくさんの試合を見に行きたいので、安く試合を見たい。そうすれば満足できますよね。でもチームを強化するためにグランパスはお金が必要。これは相反しています。

お金を稼ぐことと、サポーターの満足を両立するにはダイナミック・プライシングが必要なのです。

ダイナミック・プライシングでは人気のある試合「だけ」値段が上がります。これによって収入を増やすことができるわけです。

一方で人気のない試合は値段が下がります。チケットの値段が下がれば、普段は行けない人も「この値段なら行ってみようかな?」って思うかもしれません。サポーターも、この値段なら行ける!というようになるかもしれません。

あれ?増収を目指してるんじゃないの?って思われるかもしれません。実は値段を下げてでもお客さんを呼びたいのは、「グランパスを支える雰囲気」をスタジアムのなかに作りたいからです。ガラガラのスタジアムでは選手のやる気は出るでしょうか?満員のスタジアムのほうがやる気が出ますよね。チケットが人気の試合では満員近くなるはずです。一方で人気のない試合では、利益を捨ててでもスタジアムを満員に近くしていったほうが勝利にはつながるのです。映画やコンサートと、サッカーの大きな違いは、負けがあることです。負けはお客様にとって辛い出来事。それを避けるためには、スタジアムのいい雰囲気作りも必要なのです。

ダイナミック・プライシングは、人気のある試合での増収を狙うだけでなく、人気のない試合でのお客様を増やす、サポーターに来やすくするという両方の狙いがあるのです。

ただし弱点もあります。最近のグランパスのように満員の連続になってしまうと、ダイナミック・プライシングでは実質値上げになってしまう可能性もあるのです。

サポーターはどうやってチケットを確保する?

ではサポーターが安いチケットで確実に試合を見れるようにするにはどうしたら良いのでしょうか。答えは一つです。シーズン・チケットを買うことです。シーズン・チケットはダイナミック・プライシングの影響を受けません。クラブとしても早期にかつ確実に入場者数を計算できるのでメリットがあります。

いや、シーズン・チケットを買うほどは試合を見に行けないんだよ、というかたもいるでしょう。そういう人はファンクラブのゴールド会員以上になることで、ファンクラブ先行販売を利用できます。先行販売で早期に購入すればダイナミック・プライシングの影響を受けることはありません。クラブとしてはファンクラブのゴールド会員(年会費1万円)を確保することで、会費以上にグランパスにポジティブな顧客を確保することになります。それで十分メリットがあります。

ただ、今後ダイナミック・プライシングによって、日程や対戦相手によってベース価格が変わってくる可能性があります。そこへの対策はもうシーズン・チケットしかないでしょうね。

デジタル・マーケティングはスポーツ・ビジネスにもう欠かせない

ここまでフットボリスタの名古屋特集 「グランパスの緻密な集客。そもそもチケッティングってなんだ? (2018年11月12日公開)」で書かれていることを、もう少し柔らかく。そして中の人が断言するわけにはいかなそうなことについて説明をさせていただきました。

どんなに素晴らしいサービスも、知られなければ使われません。名古屋グランパスがどんなに面白いサッカーをしようが、知らなければ誰も見に来ることはありません。

今回のフットボリスタの名古屋グランパス特集は、いままで知られていなかった名古屋グランパスの改革と、中の人たちの頑張りを皆さんに知っていただきたくて企画をしました。まだまだ面白い記事も出てきますので、是非とも皆さんご覧になってください。

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About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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