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風は去り、西より旅人来る

「貫く」ことが招いた皮肉

2019年9月23日。名古屋グランパスは風間監督の解任、およびフィッカデンティ監督の就任を発表しました。

何故このような結果になってしまったかと言えば、ひとえに試合において結果が残せなかったこと、これに尽きるのではないでしょうか。

風間前監督の、ブレずに貫く姿勢は美点ではありますが、結果を残せなかった前提では、変えなければいけない部分を放置するという無策にも見えてしまいます。

残り試合は少なく、残留が確定しているわけでもない。

「万が一米本あたりが離脱するようなことでもあれば、前回の離脱時に有効な手を打てなかった彼では、残留もおぼつかないのではないか。」

仮に、スポンサー筋がそう思ったとしても、無理からぬことと言えるのではないでしょうか。

おそらく小西社長はそれでも貫く姿勢だったと推測しますが、状況が許さなかった、そういう解任劇だったように思います。

コンセプトは正しかった、はず

私は2017からのグランパスが掲げていたコンセプトについては、基本的には賛成の立場をとっています。

グランパスほどの予算規模を持つチームが、名古屋という『野球以外のスポーツに塩をまき続ける不毛の地』で、存在感を示し地位を向上するためには何が必要か。

もちろん必要なものはたくさんありますが、競技の面・実際の試合内容としては、誰もが熱狂するポイントである得点を、1点でも多く取る。これが必要不可欠だと、そう思っています。

この意見については、こういう状況になった現在であっても全く変わっていません。

その実現を考えたときに、そしてそれをチームの文化にまでしようとしたときに、風間監督を選択したこと。即座にJ1へ戻るということを考えればギャンブルだったかもしれない選択も、間違っていたとは言えないと考えています。

他力本願に過ぎたサイクル

しかし、そんな私でも、風間監督の方針がもたらす歪さに首をかしげたくなることはいくつかありました。

一つは、チームとして向上し続けるために、実態として外からの補強しかあてにできない状況に陥った構造です。「補強」は、今の自分のチームの選手よりも良い選手、自分のチームにないものを持っている選手が、移籍の意思があるという形で市場に出てきて初めて成立します。つまり、市場に出てきていない商品は買えないのです。

2017年および2018年の夏の補強をしっかりと当てて、チーム力を向上させた名古屋。今季については監督の去就とおそらく内部事情が絡み、有効な手を打つことができませんでした。もちろんそれはこの結果(=現在の戦績・順位)に大きな影響を与えていると思います。

しかし、チーム力が上がれば上がるほど、買うに相応しいクオリティの「商品」は市場に出てきにくくなります。この夏のようなゴタゴタがなかったとしても、必要な戦力が補強できない可能性が出てきてしまうのです。

2017年のプレーオフの時には理想を優先せず、結果を求めたゲームができていたように思います。そんな風間監督がなぜ今季はそうしなかったのかは不明ですが、現実を見たマネージメントが出来なかったことが、大きく首を絞める結果となってしまったのではないでしょうか。

掛け声に終わってしまった攻守一体

もう一つ。同じ思いでいらっしゃる方も多いと思いますが、エドゥアルド・ネットの起用について。

ボールを握り攻守一体で、という戦い方を掲げつつ、相手の対策と怪我による戦力の減少という逆風の中、風間監督は彼を重用しました。

その背景にはおそらく、米本を欠いたことで前半のような守り方はできないとの判断の上、ならばよりボールを保持し、ネットのアイディアを活かして多くの得点を取ることで補おう、そういう考えがあったのでしょう。

振り返ると、開幕直後からしばらくの守備は、DFラインへの信頼感をベースに前から圧力をかけ、ボールを奪い取るというもの。その中心にいたのが米本であることは間違いありません。

一方、米本の替わりに、走らずボールを追わず、自らのミスを取り返そうとすることもないネットを中盤に置いたことは、中盤のフィルターやセカンドボール奪取役を欠いたということにとどまらず、カバーやローテーションをあてにできなくなった最終ラインやサイドハーフの守備にも影響したのでしょう。

結果、相手陣地に押し込んでプレーする時間を増やすことができない、という悪循環に陥り、ネットの技術とアイディアで得点を取って勝つ、という目論見は画餅に帰しました。

攻守一体と言うのであれば、どれだけ押し込んでも試合の中で30%~40%はある相手ボールの時間をどう過ごすかは重要だったはずです。米本の怪我が引き金とはいえ、風間監督のこの選択は、相手が自由にプレーできる時間を増やす結果となり、勝ち星から遠ざかる原因になったのではないでしょうか。4ヶ月でわずか1勝という長い不調は、必然だったのかもしれません。

私は夢を、夢見た

二つの点で風間監督とその体制の方針に疑問を投げかけましたが、それでも、風間監督が、彼を擁して名古屋グランパスが成し遂げようとしたサッカーが、私に夢を見せてくれたことは事実です。

高い技術をもとに、こだわりすぎるくらい中央を崩すサッカーを指向してみせたのも、一番崩すのが難しい場所を崩すことを恒常的にすることで、中央もサイドも空中もすべての選択肢を持てるようなチームにしたかったからでしょう。

それは、良いアイディアで上手くゴールを脅かせたのであれば、クロスでも縦ポンでもカウンターでも嬉しそうに選手を褒めていた姿が象徴していたように思います。

それだけに、風間監督が譲れない、譲らない部分でもって成績を伸ばせなかったこと、それによりこの先の未来が見られなくなったことは残念でなりません。

新ソフトはインストールできるのか

新しい監督はマッシモ・フィッカデンティ。

東京、鳥栖と渡り歩き、守備面では一定の評価を得ているイタリア人監督です。

守備の方針が「正しいポジションにいること」という言葉に集約されるシンプルさだった風間監督時代とは違い、かなり細かい約束事が要求されることは間違いありません。

一方、攻撃はどのように組み立てていくのでしょうか。今の時点でどうなるのか?と気になる約束事を箇条書きにして並べてみると、

・守備のラインの高さはどれくらいの設定?

・ボールの狩りどころは設定されるの?

・前線からの守備の約束事は?

・攻撃への切り替え時の振る舞いは?

・ビルドアップの様式、蹴るときとの判断基準はどう変わるのか?

・ファイナルサードはどこをどう崩すことを指向するか?

・攻撃時のポジショニング=守備への備えはどのように?

ざっと考えるだけでも、これだけの数が思いつきます。

もちろん、1週間やそこらですべてを変えることは不可能です。

それでも、これらのうちいくつかは、確実に次の広島戦で今までとの違いが見えるはず。

どこを目指し、何を変えてきたのか、そしてそれは残留を目指すにあたって、インストールが間に合うものなのか。

それを観察するだけでも、興味深くゲームを見ることができるように思います。

それもまた、目の前のサッカーを楽しむ方法と言えるのではないでしょうか。

それでも明日はやってくる

2017年から始まった「革命」ともいえる一連の流れ。

このおかげでしょう、瑞穂には2万人、トヨタスタジアムには4万人を超えるお客様が詰めかけ、ピクシー引退後減る一方、リーグ優勝してすら好転させられなかった名古屋におけるグランパスの存在感は、大きく向上することとなりました。

その増えた期待に対し、これ以上立ち止まるわけにはいかない、後戻りをするわけにはいかない。

決断と選択肢の妥当性は脇に置いておいて、そう考えたチームの思いは汲み取りたい、そう思います。

今後、チームが2017年に掲げた、「攻撃的で魅力的なサッカー」を目指すという看板を下ろすのか、あくまで掲げ続けるのかはわかりません。

しかし、ひとたびグランパスファミリーの立場となった身です。

どのような形になっていくとしてもチームを見つめ続けたいと思います。

その上で今後、グランパスというチームが看板を下ろさず、攻撃的に戦い続けてくれることを。

そしてその戦いぶりの中に、あの日夢見た「風」の欠片が感じられますように。

私は願ってやみません。

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