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明治安田J1百年構想リーグ シーズンレビュー(6) wata編 個の力から、チームの力へ グランパスが優勝するための次の一歩

はじめに

気がつけば、2026年百年構想リーグが終わり、ワールドカップでの代表チームの戦いに熱狂しつつも、推しクラブに所属する選手の動向にヤキモキする忙しい時期がやってきました。

そんな忙しい時期ですが、今シーズンのグランパスの戦いについて振り返り、読者の皆さんと一緒に2026/2027シーズンのグランパスについて、あれこれ語り合いたいと思います。

2026年 J1百年構想リーグのグランパスの戦績

試合数

PK勝

PK負

分け

得点

失点

得失点差

地域リーグ順位

総合順位

通算

20

8

2

3

1

6

34

32

2

WEST 3位

6位

※注:「分け」はJ1百年構想リーグ プレーオフラウンド第1戦の結果

この成績を見て、皆さんはどのように感じましたか?

個人的には、シーズン中の感覚より勝ち数が少ないんだなというのと、思ったより得点がのびていないなと感じました。参考に過去2年(2024年、2025年)の結果を並べて比較してみます。

試合数

分け

得点

失点

得失点差

地域リーグ順位

総合順位

2026

38相当

15.2

11.4

11.4

64.6

60.8

3.8

WEST 3位

6

2025

38

11

10

17

44

56

-12

16

2024

38

15

5

18

45

47

-2

11

※2026年の38試合換算では、PK勝・PK負・プレーオフ第1戦の分けをすべて「分け」として扱っています。

※同じ試合数での比較をするために、2026年の結果は試合数の比率(38試合÷20試合=1.9)で算出

この表を見ると、シーズン中に私が感じていた、勝ち数が少なかったという感覚、得点が伸びていないという感覚、共に外れていることがわかります。人間の感覚なんてあてにならんですね、、、思い込みで話をするのはやめようと、この記事を書きながら強く思いました。

本題からそれてしまいましたが、この結果から、以下が読み取れます。

  • 勝ち数自体は2024年と変わらない(20チーム中の中位くらいの勝ち数)
  • 得点は2024年・2025年と比べて、38試合換算で約20点伸びた

結果から読み取った今シーズンの特徴と、これまでに書かせていただいた、シーズンプレビュー&中間振り返りで挙げていたポイントをまじえながら、2026年百年構想リーグのグランパスを振り返りたいと思います。

過去記事はこちら。まだの方は読んでみてください!

シーズンプレビュー

中間振り返り

シーズンプレビュー/中間振り返りを検証する

シーズンプレビュー、中間振り返りで挙げていたポイントは以下の4つです。

  1. ミシャ式と2025年までに培った「高い守備意識」という遺産の融合
  2. ハマれば強いけど、崩れると脆い
  3. 攻撃時の手詰まりと、失ってからのカウンターが課題になりそう
  4. 試合展開のコントロール(攻め急ぎの是非)

それぞれについて振り返ってみましょう。

1.ミシャ式と2025年までに培った「高い守備意識」という遺産の融合

これは十分達成されたのではないでしょうか。

ミシャ式で数的優位を作って試合を進めて、FWがしっかり点を取る。38試合換算で得点65は十分上位に食い込める数字です。

一方で攻守のトランジションの速さ、守備の強度については、稲垣選手を筆頭に2025年までの遺産をピッチ上で体現していました。タラればですが、リーグ戦の最後2試合での10失点を除くと、38試合換算で失点46.4となります。もちろん最終的な数字だけを見ると守備が改善したとは言い切れませんが、良かった時期には過去2シーズンより安定していた面もあったと思います。

もちろん最終的な失点数を見ると、融合が完成したとまでは言えません。ただ、良かった時期のグランパスには、ミシャ式の攻撃性と、2025年までに培ってきた守備の強度が同時に出ていました。少なくとも、融合の方向性は十分に見えたシーズンだったと思います。

2.ハマれば強いけど、崩れると脆い

これは、、まさに、、というシーズンでしたね。勝ち数が2024年と同等で、中位程度に落ち着いた理由の一つは、ここにあると考えています。 2026年百年構想リーグ のグランパスの状態は以下の3フェーズに分けられると思います。 それぞれのフェーズについて細かく振り返っていきましょう。

  1. 1〜4節:ハマり切るまでの「産みの苦しみ期」
  2. 5〜16節:狙いが噛み合った 「イケイケどんどん期」
  3. 17節〜プレーオフ:疲労や離脱が重なった「脆さ露呈期」
2026年J1百年構想リーグのグランパスの3つのフェーズ
2026年J1百年構想リーグのグランパスの3つのフェーズ

1〜4節:ハマり切るまでの「産みの苦しみ期」

開幕前に小屋松選手、森島選手、菊地選手という主力を負傷で欠き、開幕戦では安心と信頼の和泉選手が離脱するという厳しい船出でした。

ワントップの山岸選手に当ててのフリックと、三人目の動きで前進して、相手最終ラインの裏を取るんだ!というチームの狙いは十分に見られました。

ただ、当然のように山岸選手には厳しいマークがつき、なかなか狙い通りの形が作れないまま時間が経過。

カウンターやセットプレーで点を取られるという苦しい時期でした。当時の監督や選手のコメントでは、やりたいことを表現できたというコメントがある一方で、タッチの質や追加点を取れなかったことへの反省が挙げられています。

これらのコメントを鑑みると、やりたいことのイメージはチームで共有できているが、あと少し何かが足りない、、という感覚だったと考えます。

5〜16節:狙いが噛み合った 「イケイケどんどん期」

第5節のアウェイ福岡戦は、山岸選手のゴールから始まるゴールショーとなりました。危ういシーンもありましたが、少し乱れた相手のディフェンスラインの裏を突き、山岸選手が冷静に流し込みました。ここで点が取れていなければ、この試合の大量得点も、今シーズンのグランパスの成績も、まったく違うものになっていたかもしれません。

この試合で自分たちの戦い方に自信をつけたチームは、次節で最終的にJ1百年構想リーグ王者となった神戸に挑みました。結果は0-3の敗戦でしたが、内容はスコアほどの差を感じさせるものではありませんでした。そう感じた理由は、神戸のハイプレスに臆することなく組み立て、狙い通りに前進してシュートまで持ち込む局面を作れていたからです。ただし、前進の成功率は体感で50%ほど。攻め急いでボールを失う場面も見られ、まだ伸びしろがあると感じさせる試合でもありました。

実際、次節の京都戦では組み立てにテコ入れが施されました。森島選手をボランチで起用し、高嶺選手をスリーバックの左に置いたのです。運動量が多く、狭いスペースでのプレーを苦にしない森島選手をボランチに据えることで、相手ディフェンスを引きつけられます。前線にボールを届けるだけでなく、最終ラインの選手に時間を与える役割も果たせるようになりました。最終ラインには、原選手、藤井選手、高嶺選手と、自分でボールを運びながら、スペースとタイミングを見極めて鋭く正確なロングボールを供給できる選手が揃っています。彼らに時間を与えたことで、組み立ては安定していきました。

後方が安定すると、前線に人数をかけやすくなります。その結果、山岸選手や木村選手にゴールを取らせる形を、再現性高く作れるようになりました。さらに、藤井選手から中山選手へのロングパスが、面白いように通り始めます。

このパスがつながることで、中山選手はスピードを活かしてスペースを突く、得意の仕掛けを繰り出せるようになりました。中山選手の突破からクロスを上げ、山岸選手あるいは木村選手が仕留める。この形を何度も作り出したのです。

余談ですが、藤井選手からのパスを受ける中山選手のトラップがエロすぎて……。あのトラップだけでお金を取れるプレーだと思いました。公式で「中山トラップ集」を作ってくれないですかね(笑)。

話を戻しましょう。後方からのロングパスだけでなく、森島選手や和泉選手が絡んで地上戦で前進し、ゴールに迫るシーンも数多く見られました。

動き出しの速さ、落下点予測の速さ、そしてテクニックでボールを引き出し、ポストにもなれる山岸選手。体の強さとキレでボールを収め、自らゴリゴリと運んでいける木村選手。この2人を、前線の選手たちが10m以内の距離感でサポートし、ボールを失えば相手に一気に襲いかかる。そんな仕組みができていました。

特に稲垣選手は、最終ラインまで下りてビルドアップを助け、ボール運びのサポート、セカンドボールの回収、失った際のファーストプレスと、多くの役割を豊富な運動量でこなしていました。チームとしてのバランスの良さが結果に表れ、苦しい試合でも何とか点を取り、勝ち点を積み上げる。まさに「イケイケどんどん期」と呼べる時期だったと考えます。

17節〜プレーオフ:疲労や離脱が重なった「脆さ露呈期」

このまま優勝できるんじゃね!?と思っていた矢先、稲垣選手、森島選手、原選手の負傷離脱により、チームは苦しい戦いを強いられました。個人的には、第15節のホーム・ガンバ大阪戦あたりから、相手がグランパス(ミシャ式ver.)の脆さを狙い始めていたように感じます。 しかし、早い時間での先制点や個人の能力で対策を跳ね返し、崩れることはありませんでした。それでも、その勢いが、上記のような負傷離脱や、良い時間帯に点が取れないことのような理由で途切れた時には、脆さが前面に出て崩れてしまいました。来シーズンに向けては、勢いや特定の選手への依存から脱却することがテーマの1つになると考えます。

このようにシーズンを振り返ると、個人的には事前予想が当たってしまい、ちょっと残念だなという気持ちと、このタイミングで課題が出てよかったというポジティブな気持ちが半分ずつぐらいです。「イケイケどんどん期」に大量得点で勝利することができたので、総得点としては、過去2シーズンに対して、20点ほど積み増すことができたと考えます。一方で、「脆さ露呈期」に見えた課題は上位を目指すうえでは避けては通れない道なので、2026/2027シーズンのグランパスに期待したいと思います。

3.攻撃時の手詰まりと、失ってからのカウンターが課題になりそう

これもまさに、、ですね。ポイントの3と4は密接につながっているので、まとめて振り返っていきます。この章ではまず、ピッチで起こっていた現象を整理していきます。そして次の章ではその背景の問題を深掘りしていきます。

前に人をかけるミシャ式では、「点を取り切ること」、「ボールを失った瞬間に圧力をかけてボールの前進を阻害すること」が主なカウンター対策となります。しかし状況によってはどちらの対策もハマらず、相手チームの決定機、失点に直結することになります。

ボールを失った瞬間に圧力をかけてボールの前進を阻害する
ボールを失った瞬間に圧力をかけてボールの前進を阻害する

2026年百年構想リーグのグランパスは、攻撃で手詰まりになると「さらに前に人を送る」か「慌ててゴール前に放り込む」という選択をとることが多く、特に後者が目立ちました。

後ろの押し上げが足りないうちに急いで放り込むと、問題が起きます。クリアされた瞬間に中盤が間延びしていて、こぼれ球を拾う準備が間に合いません。結果としてセカンドボール回収率が下がり、ボールを失い、そのまま相手のカウンターを受けることになります。

慌てて放り込む→セカンド回収できず→カウンターを受ける
慌てて放り込む→セカンド回収できず→カウンターを受ける

この「押し上げを待たずに攻め急ぐ→中盤が空く→セカンドボールを失う→カウンターを受ける」という流れは、この年のグランパスの試合でよく見られる現象でした。

次の章では、その背景にある「攻め急ぎ」の問題を、守備面からもう少し掘り下げます。

4.試合展開のコントロール(攻め急ぎの是非)

中間振り返りの記事で挙げていたポイントです。

森島選手の起用である程度試合のテンポをコントロールする意図は見えました。

一方で、詰まったときに味方の状況を見ずに放り込んだり、自陣ゴール前から相手の圧力を受けることで、セカンドボール回収の準備が整う前にボールを前線に送ったりと、ボールを持ちつつ慌てているシーンがシーズンを通して散見されました。

特に、最終ラインから木村選手に当てて前進する形は、有効な手段として確立されていましたが、その分途中からは対戦相手に対策をされていました。

早く攻めて点を取るという強みの形が作れた半面、対策された時の課題が浮き彫りになった形だと思います。

所属選手の能力を考えると、もう少しゆとりをもってプレーできるのではないかと正直思います。

今のグランパスの試合を見ていると、相手のプレッシャーがない段階でパスを出し、パスの受け手は苦しい体勢でのプレーを余儀なくされるというシーンが多く見られます。

苦しい体勢の選手は、ボールを失わないために、視界に入った選手にダイレクトでパスをしたり、ドリブルで無理やり相手を剥がそうとします。

これらのプレーは難易度が高いため、ミスの確率が上がり、結果的にボールを失うことにつながります。

また、仮に成功したとしても、ダイレクトパスやドリブル突破はプレースピードを上げることにつながります。

つまりその後のプレーがどんどん早くなり、さらなる攻め急ぎや、難易度の高いプレーにつながります。

プレースピードがあがる
プレースピードがあがる

攻め急ぎの影響として、中間振り返りの記事では、選手の消耗や試合展開のコントロールが難しくなることを挙げました。

今回は攻め急ぎの影響を守備に着目して考えます。ボールを失った瞬間の味方選手の距離感が守備時の圧力の強さに影響します。

味方の距離が近いと、ボールを失った瞬間に強い圧力をかけることができ、反対に距離が遠いと圧力が弱くなります。

慌ててゴール前にボールを放り込むことや、攻め急ぎをすることで、味方選手の距離が遠い状態になります。この時にボールを失うと、選手の距離感が遠い状態でボールを失うことになります。

つまりボールへの圧力が弱まります。ボールへの圧力が弱い状態で相手がプレーできるようになるため、カウンターを受けるリスクが高まります。

失った瞬間の距離感で、圧力の強さが変わる
失った瞬間の距離感で、圧力の強さが変わる

ここで、ある言葉を引用したいと思います。  “Si vas demasiado rápido, pierdes el balón y tienes que volver. “ これは元ヴィッセル神戸監督のファンマ・リージョ氏がスペインのメディアに語った言葉です。直訳すると、「もしあまりにも早く行くと、ボールを失い、戻らなければならなくなる」という意味になります。

これは今のグランパスの状態をよく表している言葉だと私は思います。早く攻めすぎることで、自分たちの形が崩れた状態でボールを失う。形が崩れているから、ボールを奪い返すための圧力を掛けられず、決定機や失点につながる(それを防ぐために「戻る」ことになる)。

カウンターのリスク管理は、ミシャ式の長年の課題です。稲垣選手の出場時には、稲垣選手の特徴である、「運動量」、「対人強度」、「危機察知と判断の速さ」でカウンターを食い止めることができていました。

しかし、さらに上に行くためには、チームとして、カウンターを防ぐ仕組み作りをすることが重要だと考えます。

そのための手段として、カウンターのリスクを抑えるようにプレースピードを調整し、試合展開を管理していくことが2026/2027シーズンのグランパスの2つ目のテーマになると私は考えています。

総括・2026/2027シーズンの展望

2026年百年構想リーグはグランパスにとって自信をつけつつ、次のステップに上がるための課題を抽出できた良いシーズンだったと思います。 山岸選手は得点王、中山選手はアシスト王に輝きました。また、木村選手は得点王まで1ゴール差の2位につけていました。さらにベストイレブンには藤井選手も加えた4人が選出され、2026年百年構想リーグのグランパスの充実ぶりが目に見える結果に表れたと思います。

一方で次のステップに上がるための課題は明確です。

試合数が増え、各試合の強度が高まっている現代サッカーにおいて、特定の選手に頼るチーム作りでは上に上がることが難しくなっています。

特定の選手への依存からの脱却をする上で、ミシャ式という仕組みはシンプルでわかりやすく、チームに落とし込みやすい仕組みだと思います。

ただし、2026年百年構想リーグではその仕組みを高いレベルで成立させるために、稲垣選手、森島選手、藤井選手、中山選手らの個人能力に頼っていた面もあります。

だからこそ、2026/2027シーズンでは、同じ仕組みをより多くの選手が再現出来るかが問われるシーズンになると思います。

攻め続けることと、攻め急ぐことは似て非なるものです。数的優位を作りつつ試合を優位に進めるミシャ式を全選手が体現できるようになれば、さらに上に上がることができると思います。

2026/2027シーズンは選手の個人能力からの脱却をして、チームとして「イケイケどんどん期」の爆発力を再現しつつ、試合展開をコントロールしながら苦しい時期でも崩れないグランパスが見られることを願って、シーズンの開幕を待ちたいと思います。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

About The Author

wata
自己紹介:2008年頃から本格的にグランパスを追いかけ始めて早17年。周囲からは、「またグランパスか、またサッカーか」と呆れられる日々を過ごしてます。他の趣味だってあるのに!

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