はじめに
ペトロヴィッチ監督のもと、明治安田J1百年構想リーグを戦った名古屋グランパス。
シーズンレビューを書いて、と編集長にいわれましたので、全試合分書いた試合ごとのプレビューを読み返し、個人的に思ったことをまとめました。
ご笑覧ください。
開幕前の期待値と最終結果のギャップ
開幕前の期待値
ペトロヴィッチ監督の招聘により、名古屋グランパスは大きな変革を期待されていました。これまでの堅守速攻から一転、GKをも起点とするボール保持による攻撃的サッカーへの転換です。
山岸祐也や木村勇大ら強力な前線、稲垣祥、森島司、高嶺朋樹ら実力派の中盤を揃えた陣容は優勝を狙えるポテンシャルを秘めていました。
最終結果
最終順位は6位。最終盤まで熾烈なタイトル争いを演じ、リーグ制覇へあと一歩まで迫ったものの、惜しくも優勝は叶いませんでした。理想と現実、そして相次ぐアクシデントのギャップに揺れつづけた変革期という個人的感想です。
前半戦、後半戦
前半戦(1節~10節):理想を追う、産みの苦しみ
開幕当初はペトロヴィッチ監督の戦術浸透とメンバーの試行錯誤が同時に行われた時期でした。
▼ 主な課題として挙げていた内容(1〜5節)
- ビルドアップの不安定さ:
GKシュミット・ダニエルを含めたパス回しが相手のハイプレスに押され、自陣ロストから危険な状況を招く試合が続きました。
- 得点力不足:
5バックで構える相手を崩せず、複数得点が奪えなかった試合が多かったです。
- 被カウンターのリスク:
長崎戦が顕著でしたが、攻撃に人数を割くあまり、ボール保持を失った際に守備陣が数的不利に陥り、カウンターから失点を重ねました。
しかし、第6節から第10節にかけ、勝ったり負けたり連勝とはいきませんでしたが、神戸、広島、京都といった球際の激しい上位陣との連戦を機に、戦術の練度が一気に向上しました。
▼ 挙げていた勝ち筋とキーマンたち(6〜10節)
- プレスをいなす攻撃:
特に福岡戦では相手の守備プレスを落ち着いて剥がし、大量得点で「ケチャップの蓋」を開ける爆発力を見せました。
- 山岸祐也・木村勇大らの躍動:
得点も奪え、ポストプレーなどで貢献する山岸と、前線で体を張る木村が攻撃の軸として機能しました。
- 守備陣の奮闘:
藤井陽也ら3CBを中心に、強豪の強力な前線を全員守備で耐え、クリーンシートを達成した試合もありました。
後半戦(11節~18節、プレーオフ):過密日程と負傷禍
11節からの好調の波を止めたのが、中2〜3日の過密日程と深刻な負傷者の続出でした。大幅なターンオーバーを強いられた試合もあり、チームは最大の試練を迎えました。
▼ 主な課題として挙げていた内容(11節〜プレーオフ)
- ターンオーバー時のクオリティ低下:
長崎戦の前半や稲垣など主力組を休ませた際、ビルドアップの質を維持できず組織の完成度にバラつきが出ていました。
- スクランブル起用による練度低下:
山岸、和泉、稲垣、マルクス・ヴィニシウスらの負傷離脱が相次ぎ、高嶺を左CBに据えるなど毎試合のように守備陣の再編成を余儀なくされました。
- 大量失点傾向の発生:
ボランチやCBの組み合わせが変わる中、セレッソ大阪や町田ゼルビアなどの鋭いカウンターやセカンドボールの強さに屈し、数的同数・数的不利から失点を重ねました。
▼ 挙げていた勝ち筋とキーマンたち(11節〜プレーオフ)
- プレスをいなす攻撃:
これは前半と変化なしで、毎試合プレビューで挙げていました。
- 森島、高嶺、中山らの躍動:
山岸のハットトリック、前線で体を張る木村の他に、CMFとして抜群の技術を見せつけた森島や高嶺、左WBで大車輪の活躍を見せた中山が攻撃の軸として機能しました。
- 守備陣の奮闘:
これも前半と変化なしで、毎試合挙げていました。相手に合わせるよりまず自分たちにフォーカスする傾向のある監督ですし、外から観ている分ではチーム戦術の浸透にはまだまだ道半ばかなという印象がありました。
後半戦では前進する推進力を見せた木村勇大の複数得点や、広島戦における森島の同点弾など個の輝きは見られました。プレーオフ町田戦では、高嶺のスーパーミドル、最後方を死守したピサノの奮闘、そして出場した選手たちのハードワークによる総力戦で耐え抜きましたが、もう一歩である勝ち越し点という形で突き抜けることはできず、行き詰まりがあったのも事実です。
リーグ制覇にあと1歩足りなかったもの
ハーフシーズンで10得点を挙げた山岸祐也を筆頭に攻撃陣が爆発し、ペトロヴィッチ監督の目指す流動的な攻撃サッカーが浸透してきました。その一方、連勝で首位となった時期もあったものの、最終的に頂点には届きませんでした。
▼ リーグ制覇へあと一歩及ばなかった要因
- 致命的な被カウンターリスク:
特にセレッソ戦、広島戦で顕著でしたが、攻撃に人数を割くスタイルゆえ、リスクを冒して攻め立てている最中の一瞬の隙を突かれ、勝負どころの試合で手痛いカウンター失点を喫しました。
- 堅守・セットプレーへの対応力:
町田のように割り切ってロングスローや高精度のセットプレーを多用してくる相手に対し、組織的守備の練度はまだまだであると感じます。また、ゴール前に強固なブロックを敷かれた際、高さ勝負を避けた裏への抜け出しのバリエーションを欠き、こじ開けきれなかったのも事実です。
来シーズン期待したいもの
来シーズンも名古屋グランパスはペトロヴィッチ監督の続投を決断しました。個人的には今シーズン以上に期待していますし、下記の点をより改善していただけたらと思います。
- ネガティブトランジションの整備:
ボールロスト時に数的同数・数的不利を作らせないよう、全体の素早いポジション修正とファーストディフェンダーの決定を今以上に構造化し落とし込んでほしいです。積極的に現地観戦したくなる楽しいチームなんですが、心臓に悪いシーンも多いですね。
- セカンドボールの回収力向上:
相手のクリアボールを高い位置で先手で回収し、カウンターの芽を摘みつつ波状攻撃を維持する。稲垣、高嶺に続くセカンドボール回収マンが台頭してほしいです。
- セットプレーの攻守の練度向上:
今シーズン苦しんだセットプレーでの失点リスクを低減し、逆に武器へと昇華させてほしいです。
- 若手のさらなる一本立ち:
スクランブルの中で経験を積んだ選手たちがさらに成長し、過密日程でも誰が出ても質が落ちない「総力戦」を体現するチームに成長してほしいと願っています。
おわりに
久しぶりに味わいましたね。あと一歩届かなかった悔しさを。
その一方、ミシャスタイルの攻撃サッカーも浸透してきたように感じますし、来シーズンはクリーンシートで泥臭く勝ち切る勝負強さも身に着けてほしいと思います。
来シーズンもいい試合をたくさん観られますように。

