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明治安田J1百年構想リーグ シーズンレビュー(7) yutty編 4つの転換点が繋ぐ昨季のストーリー

連日ワールドカップで盛り上がる中、地上波や配信サービスでも現役選手や沢山の解説者さんたちが参戦し、「戦い方」の話題が増えた。

百年構想リーグでは6位フィニッシュとなったが、昨シーズンの名古屋の戦い方を時間と共に振り返る事にする。

4-1-5の本質

名古屋のベースが観られたのは、4節の岡山戦のタイミング辺りからだ。2センターの一枚(基本的には高嶺)を降ろして2センターバックの形を作り、左右のセンターバックをSB化する。岡山戦では相手も3-4-2-1の形だったところに、名古屋が4-1-5の形を取った。SBとWBの縦の並びを作る事で、岡山は「相手の形に合わせるか、引いてスペースを埋めるか」の2択を迫られる。特にSBを見張る事になる選手たちは、(スペースを)埋めるか(相手に)出ていくかの択を迫られる事になる。4-1-5のWBが高い位置を取る事で相手のWBを押し込む事もあり、岡山戦で言えばボランチがSBに釣られるシーンも観られた。

開幕から4-1-5を試している中で、何故に岡山戦を強調するのか? 3-4-2-1の岡山に、4-1-5の配置で4-4-2で引く選択をさせたところが大きい。要するに、単純に5枚がポジション間に配置され、SBを作って数的優位から来る相手最終ラインのギャップで勝負する事によって、相手に形と戦術の変更をせざるを得ない状況にした事が大きかった。

そんな最序盤戦でのキーマンはヴィニシウスだった。守備時に山岸と木村が最終ラインにアプローチする分、ヴィニシウスは基本的に低い位置を取る事が多かった。その影響で、トランジションのタイミングでは3センター的な位置取りになる事が多かったヴィニシウス。自分から頻繁にもらいに降りる動きも多く、中盤が稲垣だけになる中で、左から逆サイドへの脱出の起点や、サイドへ相手のボランチを誘い出した後のスペースでのレシーバーの役目など、「ミシャが想定するIHの使い方ではない」ものの、ギャップづくりと攻撃のスイッチになっていた。

サポーターが期待した動き(パワーヘッダーや点取り屋のイメージ)とは異なった為、厳しい意見がSNSを飛び交う事もあったが、あのイレギュラー(戦術以前の、サッカーの本質の部分のプレー選択)が無ければ、ここまでの順位は無かった可能性も充分にあった。

それほどに、ヴィニシウスの「戦術の前にサッカーの本質から」というような選択は、序盤戦の大きなターニングポイントだった。

🌎ワールドカップ小噺①

日本×ブラジル戦。1アンカーのカゼミロが日本の前線3枚の守備に対して覗きづらそうにしていた前半。飲水後にIHがアンカーのラインまで降りる回数が増えた事で、日本に中央のギャップが簡単に生まれた試合。世界レベルでも、立ち位置を決め打ちしてビルドアップする事が難しいとよく分かる試合だった。

GKがビルドアップに入る意味

4-1-5への明確な潰しの選択肢として、相手チームが採用する事が多かった5-4-1。岡山戦から7節の広島戦までは、基本的に相手が5-4-1になる時間から「持てるけどゴール前まで論理的に道筋を立てづらい」状態が続いた。運ぶスペースをなくし、前線の動きでズレを出させないようにスペースを埋める。基本的に動きがあるのはIHなので、5-4でスペースを潰していれば、動きがあるポジションに変化が付きづらかった。

これに対して広島戦では、3-4-1-2の広島を相手に、名古屋はセンターバックの位置にセンターを降ろさない選択で勝負。2トップに3CBを当てる事でトップ下の中村の守備のファジーさを引き出し、キャリーする時間とスペースを作った。それに対して5-4-1で修正する広島。そこにはピサノと藤井で最終ラインを作る形で対抗する。広島の中盤の4枚を外に広げない(ボランチ2枚を中盤に残す事でSHが外に出づらい)展開をつくり、5-4-1のブロックを簡単に越える試合を見せた。

SBとWBを縦関係にする形でIHも前線に張り出し、中盤は両サイドに顔を出しづらい1ボランチの形を取る名古屋は、どうしてもサイドの「渋滞」が気になるところ。そこからの展開はIHが降りているかどうかにかかっていたが、10節の神戸戦は、サイドの渋滞の「意味」が明確になる試合だった。

4-3-3でありながら、永戸が低い位置に降り、満田が内側へ絞る関係上、4-4-2のような攻め方をしてくる神戸。永戸が甲田を引きつけ、センターバックの脇に走られるので甲田はプレスに行きづらく、攻めの局面でも立ち位置が低くなる。そこに張り出す野上がかぶさる事で、右サイドは渋滞になった。

ただ、この展開で名古屋の低い位置に食いつく神戸のSB-WGが出来上がる事で、神戸の中盤の選手がどうしても、出ていった最終ラインを気にして下がる、という展開が起きた。そうなると、IHが受けるスペースが自然と広くなる。ヴィニシウスが離脱して以降、なんとなく難しかった「IHが受けるスペースの創出」が、神戸戦でははっきりと出た。

今シーズンを通すと、大外の立ち位置を固定して相手を押し込んでいるタイミングよりも、攻撃から守備への切り替えのタイミングのWBの立ち位置や、上下に動きを付けたタイミングでの得点シーンが目立っており、終盤に向けて浅野の序列が上がっていったのも納得感がある。

🌏ワールドカップ小噺②

サイドの渋滞の話は、日本代表でもはっきりしていた。特に左CBのところは、中村と渋滞したくない試合(スウェーデン、オランダ)と、中央のブロックを割りたいのでサイドで渋滞してもいい試合(チュニジア)との使い分けで、立ち位置がはっきり変わっていた。

縦関係の高さ

後半戦に入りターニングポイントを迎えたのが、11節の福岡戦だ。 この試合では相手の3センターの対応に苦労した。「SBのボール保持はどんとこい!」の形を取る福岡に対して、SBがそのまま運ぶ形で引っかけられる展開が目立った。これに対して名古屋は、2センターが福岡の3センターと対面するような形を取り、高嶺と藤井のキャリーで「相手のマークがズレてくれ!」の展開を迎える。

そんな中で、明確に今までとは違う新しい試みだったのが、2センターの関係性をCB-CMの縦関係からCM-CAMに変えたところにある。この試合では菊地が2センターに途中投入。福岡の3センターがスライドして対応しづらい状況を森島との縦関係で作り、CBのキャリーからパスの角度がつけられる展開へと動かしていった。

ロングボールでもいいや。になる訳

ビルドアップ教のイメージがあるミシャのチームが縦向きのロングボールを使う、というところでざわついた方も居たシーズンだった。しかし「個人で勝てちゃうから」とか「どうする事も出来なくて」みたいな雰囲気のロングボールではない。ロングボールが目立つ清水戦やセレッソ戦を見てみると、相手の守備設計が名古屋に噛み合っていないか、「マンツーマンという名の、1列目の守備だけマンツーマン」だったりと、相手の守備設計が対名古屋になっていないタイミングで使っている事が多かった。大外へのサイドチェンジも後半戦は中々出る事はなかったのと本質は同じで、対名古屋をしてこないか、相手にそもそもエラーが起きている時の選択、というイメージが個人的には強かった。

まとめ

両SBを如何にマークから浮かせるか?がスタートだった。それは守備を外側へ釣り出す動きだ。構えられるなら、ブロックを越えるためにGKを参加させ、SBをブロックの裏に送る形を作り、一列前で数的優位を作る形を考えた。SBとWBの距離が近くなるなら、渋滞を利用してマークをサイドに寄せて中央を空けた。サイドのマークを外して運ばせてから引っかけるなら、センターを縦関係にして運んだ先の受け手を増やした。

1シーズンの大きな転換点を繋げると、かなり納得感のあるストーリーになる。「立ち位置で数的優位を作る形」から半年で、ここまでディテールの変化がついたシーズンとなった。

このストーリーによって各ポジションの役割が明確になったが、そうなった事でより一層、名古屋対策は容易になってくる。26-27シーズンでどんな物語になるのか?楽しみにしたい。

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