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剥がす決断と、運ぶ勇気の在りか 清水エスパルス戦マッチレビュー #grampus Y0250

キャンプ中に公開されたPSM(プレシーズンマッチ)で浮き彫りになった課題を修正した点。直らなかった点。そういった部分も含めて、百年構想リーグのスタートに似た状況からのスタートとなった。感じたくなかったリセット感も含めて、「シーズン一本目」を振り返る。

試合情報

名古屋グランパス・清水エスパルスのスターティングメンバー
名古屋グランパス・清水エスパルスのスターティングメンバー

3-4-2-1対4-2-3-1(4-4-2)の噛み合わせ。ワンポイント挙げるなら、注目はジャーメインが名古屋のヘソ(4-1-5の1センターのところ)を見張るスタートから入るところだ。名古屋の可変の4枚に、清水の4枚が噛み合う展開となった。

n回目のビルドアップのベースと守備の噛み合わせの話

まずは4-1-5の形の噛み合わせの話から。清水は4-4-2の形を軸に、ジャーメインが中央に残るセンター1枚(基本的には稲垣)を消すところからスタート。ジャーメインがセンターを消しながらCBに出ていくことで、名古屋の最終ライン4枚+中盤1枚に対して、清水は前線4枚の守備で解決させる。

ビルドアップに逃がしどころを作るような「数的優位」を設計するのではなく、「ビルドアップ部隊」においては基本的に同数を許容するのがチームカラーになっているのは周知の事実。それを解決する方法として、4-1-5の設計の中では後ろが剥がす・運ぶことが求められるのも、半年のシーズンで履修済みだ。

ジャーメインに追われるCBには、「剥がし始め」のタイミングでアプローチが来る。一方で、ジャーメインが寄ってくることによって、その裏のスペースは出てくる。(10分16秒からのような運び始めへのアプローチは怖いが、剥がし始めをかわしてしまえば、ジャーメインが消していたルートは確実に空く)

毎度おなじみCBが剥がす勇気が必要な理由
毎度おなじみCBが剥がす勇気が必要な理由

結局のところ、運ぶことの着地点は、どの場面・どの向きでも「選択肢を守備者に押し付ける行動」になる。10分16秒からのところで言えば、ジャーメインは稲垣を消すのか?藤井に制限を掛けるのか?の2択。そこに、制限を掛けなければSHの藤井(智)に向かって運び、彼のところでCBとSBの対面の優位性を作るという選択肢の押し付けも加わる。守備側に複数の選択を同時に押し付ける行動になるわけだ。

数的同数にもかかわらず、ビルドアップのパーツの一つに「相手に守備の選択肢を複数押し付けること」を組み込むことで、他のビルドアップのパーツのところで相手を動かしたり、スペースを創出したりすることに繋げている。

藤井が角度をつける→ジャーメインが釣れる→稲垣が空く→(藤井智はSB対応でIHケアは無理)→清水の2センターは稲垣が気になって、脇に立つIHとの2択になる→藤井から木村へパスが通る。

前半は高嶺も藤井も、剥がす・運ぶができるタイミングでも、なかなか決断できない時間が長かった。ただ、「決断が難しかった」だけではない。サポートや形の話は次の項で。

👍補足

16分24秒からも、藤井がジャーメインに制限を掛けられるビルドアップのところ。この場面ではジャーメインの出足が遅れたため、剥がす前にボールを受けられると判断して、和泉がディエギーニョを釣り出した。稲垣のマークの受け渡しも早くなく、下のコースから通せる機会だったが、ピサノと藤井のパス交換でトラップのボールがサイドに流れたので、ジャーメインの寄せが間に合う展開に。こういう細かいディテールに潜む雑味が、試合展開を難しくした影響も否めない。

ファーストタッチが外に流れる、あるいはパスが弱まるだけで、ジャーメインやプレッシング部隊の「二度追い・寄せ直し」が間に合ってしまう。狙っていた「剥がした後の広大なスペース」を活用するフェーズから、「捕まった状態での展開」へ一気に裏返ってしまう。

「同数を受け入れる」スタイルである以上、この一つのミスが即ピンチに直結する。そのため、ピッチ上の選手に求められる技術的・判断的ディテールの基準値は極めて高くなる。

要するに…

「運ぶ」行動の本質は「認知の過負荷(タスクの重複)」

  • ビルドアップの前提: 相手(清水)の前線4枚プレスに対し、後方での数的同数を受け入れたうえで、CBが自ら「剥がして運ぶ」ことで打開を図る設計。
  • 構造上の強み: CBがボールを運んで相手FWを釣り出すことで、守備側に複数の選択を迫り、背後のパスルートやスペース(稲垣やIH)を創出できる。
  • 構造上の弱み: 数的同数のままリスクを負うため、トラップの位置やパスのズレといった「細かい技術的雑味」が出ると、相手の寄せが間に合い、一転してピンチを招く。 。

1センター時に求められるSBの重要性

最終ラインが同数でビルドアップする話をすれば、普通に考えて「ゴールキーパーを参加させれば数的優位を取れるよね?」となるのが至極当たり前だ。ここで、清水のジャーメインが基本的に稲垣を消しているところがポイントになる。高嶺にオセフンがマークし、ジャーメインが稲垣をマークしたうえで、SHの北川と藤井智が内側に絞る。そうなると、高嶺、ピサノ、藤井の並びの真ん中にいるピサノから、中央の稲垣には刺しづらい展開になった。

相手が中央を絞る展開の中で、広げられるところはどこになるか?を考えると、当然SBのところなわけで。SBがSHを外に釣り出す意味は、SHが絞っていたスペースを広く空けることにある。そうすれば、CBが無理に運ばなくても、GKを足した数的優位の状況で刺し込めるスペースが広がる。

サイドバックを置く理由を明確に
サイドバックを置く理由を明確に

SBにボールを付けて相手のSHを広げる意味が共有できているか、曖昧だったシーンをピックアップする。分かりやすいので、どちらも同じ選手(高嶺)からビルドアップする展開のところだ。

18分26秒から、高嶺から木村に刺し込まれるところ。清水の北川は、野上より木村に近い位置に立っている。この局面で高嶺は、野上に預ける前に木村へパスを刺し込んだ。結果的に、2対1のような状況でボールを持った木村はキープできなかった局面だ。

もう一つが19分41秒からのビルドアップ。北川が野上に寄って広がる形になっていて、高嶺は野上にパスを入れた。木村も、北川が出ていったスペースを嶋本が埋めないようにピン留めしている状況。高嶺も稲垣も、北川がいなくなった中央のスペースに走り込んでいく場面で、野上は中山を選択。結果的に、サイドの3対3でボールロストとなった。

こういうプレー選択の共有の齟齬は「プレー選択の最適解の強要」のように見えるので難しいところではあるものの、立ち位置の流動性をあまり持たせない名古屋にとっては、各ポジションの意味がはっきりしていないと試合展開は難しくなってしまう。

28分15秒からの、GKを含めてSBを経由したプレスの脱出なんかはGOODポイント👍 34分13秒からのように、遅れて出てきて外を切りに来て広がったジャーメインに対し、ピサノを使って中央に入れたのもGOOD👍

ビルドアップのスタート部分の戦術的な約束事のところだ。4-1-5の形でSBを作り、そのポジションで相手の設計にどういう影響を与えるのか?をピッチ内で考えられると、GKをビルドアップに足した時の「数的優位感」がもう少し出るのかな?と個人的には感じるところであった。

👍補足

4-1-5にこだわらず、CBの大外へのキャリーコースを空けるために2センターにして、タイミングを見てセンターがサイドバックに出張する形も考えられる。これならSBを作る意味にも、CBが運ぶ助けにもなるかな?と。前半で言えば、20分に野上がセンターっぽく絞ったり、30分ごろには原が絞ったりと、SBが絞ってCBのキャリーコースやWBへのパスコースを作る形は試してはいた。

要するに…

GKを加えた「盤面上の数的優位」を「実質的なスペースの優位」に変え、チームで狙いを共有するためのポイント!

1. SBが幅を取る狙い

目的はサイド攻撃ではなく、内側に絞る相手SHを外へ引き出し、中央(稲垣やIH)への縦パスコースを開けることにある。

2. プレー選択の齟齬

「相手が詰まっているのに中央へ刺す」「外へ釣って中央が空いたのに外を使う」といったミスは、「何のために外を使うか」の共通認識不足から生じる。

3. SBの絞りとCBキャリーの連動

SB(原&野上)が内側に絞ることで相手SHをピン留めでき、CBが大外へボールを運ぶ(キャリーする)広大なスペースを創出できる。解決策の一つ。

「外で相手を動かして中央を使う」という意図の統一と柔軟な位置取りが、ビルドアップ成功の鍵!

「同数を許容してCBが自ら運ぶ」設計も、「GKを交えてSBで相手を引き出し中央を開ける」設計も、本質はボールを回すことではなく、「相手の守備タスクに負荷をかけ、狙い通りに動かすこと」にある。

ただ、相手に退場者が出るまではCBのキャリーが色濃く出なかった。チームとして「外を使って中央を開ける」という意図の共有と位置取りの柔軟性が間に合わず、ビルドアップの出口を見失った。その結果、構造で相手を解体するのではなく、「GKからの高難度なキック」という個の精度頼みに追い込まれ、それが失点という最悪の形で跳ね返ってくることとなった。

ピッチ上の全員が「どこにスペースを作り、誰を動かすためのプレーなのか」という目的を揃えることが、このビルドアップを真の武器にするための条件かもしれない。

持つ時間は増えたけど…

後半に入ると、リードしている清水はジャーメインのプレスも落ち着く。名古屋はSBにボールを預け、相手のSHが釣り出されるまで縦に急がない形を増やしていく。あからさまにミドルゾーンからのシュートが増えていることが、外で人をうまく釣り出せていることの証明だ。

49分6秒からのように、SBで藤井智を引っ張り出し、ジャーメインとオセフンが稲垣を受け渡したタイミングで山岸に刺し込む展開を作るなど、外から戻して縦を突く良い形も増える。

オセフンが退場になると、清水は4-4-1の形になり、プレッシャーが格段に減ったCB陣は保持して高い位置へ持ち上がる。この時、右サイド(原と藤井)はディエギーニョの脇(内側)を取ることが多く、野上は外に張る展開が多かった。右サイドの最終ラインが内側に立っていることで、甲田サイドのスペースは広く空いていたので、積極的に使っていきたかったところ。ボールが来るシチュエーションが、藤井智が寄せやすい展開での勝負ばかりのタイミングだったのがもったいなかった。甲田の「斜め方向」の侵入をサポートしたかった。

森島、浅野、杉浦ら後半投入組は、固定の役割っぽさがなく、ポジションローテーションもできるような選手たちだ。縦向きのギャップを作ろうと試みたりするものの、基本的には4-4で引かれている分サイド始動になり、スペースがないところからの縦のギャップ作りは基本手つかずな雰囲気だった。

後半気になった点を挙げるなら、90分7秒からのところ。名古屋が押し込む最中の場面で、森島が手を挙げる。押し込み切る前に森島が中盤の相手のポジション間で受けることで、前線の枚数で押し込むラインと、森島が中盤で釣り出すラインとで、選手間の距離を空けたかったのだろう。そのタイミングで、なかなか最終ラインの選手が、中盤に顔を出す選手にボールを預けてくれなかった。どうしても外を見る時間が長く、押し込み切って中央を使うプランはないぐらいに清水が引き切ることになった。

後半の仕組み~甲田のフリーの作りと森島に入れたいタイミング。
後半の仕組み~甲田のフリーの作りと森島に入れたいタイミング。

要するに…

1. 「外で釣って中へ刺す」崩しの意図は見えた。

相手プレスの低下に伴い、SBで相手SHをしっかり引き出してから中央(山岸)へ差し込むという、狙い通りの崩しの形は増えた。

2. 10人時間での配置と大外の活かし方の課題

相手退場後、CB/SBが内側へ立つことで大外(甲田)に広大なスペースを作れたが、パスが出るタイミングやサポートが少なく、強みを活かしきれなかった。

3. 引いた相手に対する「中盤の縦向きの距離」への意識

ライン間でボールを要求(90分7秒から)しても、設計上、視線が大外に固定されて差し込めず、ブロックが圧縮される前に中央から釣り出して崩す選択肢が少なかった。

最後に

目的意識、やろうとしていることの解像度は高いけれども…。決断とディテールを磨いて次節へ。

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