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なぜミシャは選手に慕われるのか? 明治安田J1百年構想リーグ #シーズンプレビュー (5)-1 グラぽ編集長編

慕われる監督ってどんな監督でしょう?

ミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ)監督は、選手の引退試合の監督にこの冬も2試合選ばれるなど、そういった選手にも慕われていることは間違いありません。

そのマジックはどういうところにあるのでしょうか?

プロ選手が「この人のために戦いたい」と思う瞬間

Jリーグの世界は、結果がすべてのプロスポーツの世界です。

中谷進之介選手が尊敬する監督に長谷川健太前監督を挙げたように、慕っていても結果がでていなければ移籍する原因になります。そして成績面の理由で長谷川さんはグランパスを去ることになりました。

勝てば官軍、負ければ賊軍。それが現実です。そんな厳しい環境下において、選手たちから真に信頼され、愛される監督にはどのような共通点があるのでしょうか。

戦術眼が優れていることは大前提ですが、選手がついていく監督というと、浦和から札幌に駒井善成選手や興梠慎三選手がついていったミシャ監督。複数名の選手が監督がチームを変わる度についていくチョウ・キジェ監督。永井謙佑選手や内田宅哉選手がついていった長谷川健太前監督。

共通しているのはそれぞれの監督の任期が4年以上にわたることです。長くチームを率いる名将たちが持っているのは、「リーダーとしての資質」を考えてみましょう

1. 嵐の中でもブレない「信念」と「透明性」

チームの調子が落ち、周囲の雑音が大きくなった時こそ、指揮官の真価が問われます。

名将と呼ばれる監督たちは、どんな時でも軸がブレません。「なぜこの練習が必要なのか」「我々はどんなサッカーを目指しているのか」というビジョンを論理的に説明できるため、選手は迷いなくついていくことができます。

また同時に必要なのが「公平性」です。昨日のスター選手であっても、今日の若手であっても評価基準は同じ。チームに健全な規律をもたらすのはこの透明性じゃないでしょうか。

2. 選手を駒ではなく「人間」として見る力

ピッチ上の選手は、戦術を遂行するだけの「駒」ではありません。感情を持った一人の「人間」です。

優れた監督は、選手の性格や家族構成、キャリアの悩みまでを把握し、一人ひとりに響く言葉を選びます。一方的に指示を出すのではなく、時にはベテランの知見を借り、若手の不満に静かに耳を傾ける。そんな「聞く耳」を持っています。

また、信頼関係は言葉だけではありません。練習中の何気ない眼差しや振る舞いから、「お前を信じている」という非言語のメッセージを送り続けられるかどうかが、選手のモチベーションを大きく左右します。

3. プロとしての「価値」を高めてくれる指導

プロ選手にとって最大の報酬とは何でしょうか。それは金銭だけでなく、「自分が上手くなること」、ひいては「市場価値が上がること」です。

精神論で「頑張れ」と言うのは簡単です。しかし、選手が求めているのは、「あと50cmポジションを下げれば防げる」といった、映像やデータに基づいた具体的で即効性のある指導です。

練習で結果を出せばチャンスを与え、もし選手がさらなるステップアップや移籍を望むなら、そのキャリアを尊重して背中を押す。選手の人生そのものをリスペクトできる度量が、結果として組織の求心力を高めます。

4. 冷静と情熱のコントラスト

監督はチームの「温度計」でもあります。

試合中は情熱的に鼓舞し、戦う姿勢を示す一方で、ハーフタイムのロッカールームでは氷のように冷静に戦術を修正する。この「熱さ」と「冷静さ」のバランスがリーダーに求められる素養です。

そして忘れてはならないのが、ユーモアのセンスです。張り詰めた緊張感の中で、ふとこぼす冗談一つがチームを救うことがあります。余裕のある大人の振る舞いこそが、勝利へのプレッシャーを良いエネルギーへと変えていくのです。

監督のタイプ別・慕われ方の違い

では監督ごとの慕われ方の違いをまとめてみましょう。

タイプ

特徴

選手からの印象

カリスマ型

圧倒的な実績とオーラで引っ張る

「この人の言う通りにすれば勝てる」

兄貴・父親型

距離が近く、私生活も含めて面倒を見る

「この人のために体を張りたい」

教授・戦術家型

知的な刺激を与え、頭脳をアップデートさせる

「この人といるとサッカーが深く理解できる」

結局のところ、一番慕われるのは「自分のことを本気で勝たせようとしてくれている」と選手に確信させてくれる監督です。

ミシャ監督と長谷川健太前監督は、それぞれ非常に対照的で分かりやすい特徴を持っています。

ミハイロ・ペトロヴィッチ(ミシャ)

タイプ:教授・戦術家型 + 父親型

ミシャ監督は、Jリーグに「ミシャ式」と呼ばれる独自の攻撃的戦術を根付かせた「教授」としての側面が非常に強いです。

  • 戦術家としての顔: 3-4-2-1をベースに、攻撃時には可変して5トップのような形を作る特殊な戦術は、選手に「新しいサッカーの楽しさ」を教えます。彼の下でプレーした選手が「サッカー観が変わった」と口にすることが多いのは、知的な刺激を与える教授タイプだからです。
  • 父親としての顔: 同時に、彼は選手を「ファミリー」と呼び、非常に深い愛情を注ぐことで知られています。食事を共にしたり、選手のプライベートを尊重したりする姿勢は、まさに「父親」。
  • 慕われる理由: 「自分たちを信じて、これほど攻撃的で魅力的なサッカーをさせてくれる」という哲学への共感と、人間的な温かさのセットが、選手の忠誠心を生んでいます。

長谷川 健太

タイプ:カリスマ型 + 規律重視の勝負師

長谷川健太前監督は、現役時代の実績と、就任したチームをことごとくタイトルを獲らせてきた実績による「カリスマ性」が際立ちます。

  • カリスマ・勝負師としての顔: ミシャ監督が「理想の追求」なら、長谷川監督は「勝利の追求」です。強固な守備ブロックと鋭いカウンターをベースに、勝つための現実的な落とし込みを徹底します。「この人の下ならタイトルが獲れる」という信頼感は、プロ選手にとって最大の求心力になります。
  • 規律とハードワーク: FC東京で選手につきつけた4箇条((1)ガムをかまない(2)ソックスを上げるなど試合と同じ服装(3)返事をする(4)早く練習場に来る)のように規律重視でした。走ることや守備のタスクを明確に課します。基準がはっきりしており、戦えない選手は使わないという厳しさがありますが、その透明性がチームとしての規律を生みます。
  • 慕われる理由: ガンバ大阪での三冠達成やFC東京、名古屋での実績など、明確な「結果」を出すことで、選手に「ついていけば報われる」と思わせる、勝負師としての背中が信頼の源泉です。一方で成績が伴わないと説得力が不足してしまいます。

二人の対比

項目

ミシャ監督

長谷川健太前監督

中心哲学

理想・攻撃・エンターテインメント

勝利・守備・ハードワーク

選手への接し方

感情に訴え、ファミリーとして包む

役割を明確にし、プロとして戦わせる

選手が受ける影響

サッカーの概念が書き換えられる

勝負への執着心と献身性が磨かれる

ミシャ監督は「サッカーの楽しさと愛」で選手を惹きつけ、長谷川健太監督は「勝利への道筋と規律」で選手をまとめ上げるタイプと言えます。

でももしかするともっとシンプルなところに答えはあるのかも?

理屈の面からミシャ監督が慕われる理由をかんがえてみましたが、青井高平さんらのシーズンプレビューで取り上げられた那須大亮さんの配信動画を見ていて気づいたことがあります。

ミシャはブラボー!という言葉で「承認」を与える

ミシャ監督は指導のなかで「ブラボー!」をかなり頻繁に使います。

試合・高強度トレーニングでは、長い説明が入りません。

このときの「ブラボー!」は、選手にとっては 「今の判断・準備・立ち位置が正しい」という即時フィードバックになります。これが繰り返されることで選手は「これでいいんだ!」と思うようになり、プレーに迷いがなくなります。

プロはモチベーションの高さより、評価基準(何が正解か)と自分の役割(何をやり続けるべきか)を伝え続けることが重要です。

頻繁な「ブラボー!」という声がけによる「承認」が、監督の基準を可視化し、迷いを削ります。

今年の見どころは選手たちがいかに迷いなく「ミシャ式を実践」できるようになるかどうか、です。

皆さん是非そこに注目して明治安田J1百年構想リーグの試合を見ていきましょう。

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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