いよいよ2026年8月7日金曜日から初となる秋春制(実質夏梅雨制ですが)の2026/27シーズンがはじまります。それにあわせてサッカーの競技規則が改正されます。
一足早くワールドカップで導入されていましたが、ワールドカップを見てなかったかたもいると思います。まとめましたのでご確認ください。
今回の改正で目を引くのは、「5秒」「10秒」「1分」という時間に関する新しいルールです。
スローインとゴールキックを不当に遅らせた場合は5秒のカウントダウン。交代する選手は原則として10秒以内にピッチを離れ、負傷対応を受けた選手はプレー再開後1分間、ピッチの外で待つことになります。
いずれも狙いは、時間稼ぎを減らし、試合の流れをできるだけ止めないことです。それに加えて、VARが確認できる事象の拡大や、DOGSO、ペナルティーキックに関するルールの整理も行われました。
日本国内では、2026/27シーズンのJ1・J2・J3リーグで8月8日の開幕から適用されます。ルヴァンカップは9月9日の1回戦、天皇杯は8月19日の1回戦からの適用です。大会によって開始日が異なるため、地域大会や年代別大会では、それぞれの競技会規定を確認する必要があります。
先に押さえておきたい3つの注意点
今回の改正は、数字だけを見るとかなり厳しく感じます。しかし、機械的に時間を計るルールではありません。
すべてのスローインやゴールキックを5秒以内に行う必要があるわけではありません。
対象になるのは、主審が「意図的に再開を遅らせている」と判断し、笛を吹いてカウントダウンを始めた場合です。
交代選手が10秒をわずかに超えただけで、必ず罰せられるわけではありません。
カウント終了時に選手が境界線のすぐ近くまで来ていれば、交代要員の入場を認めるよう求められています。
負傷した選手が全員、1分間ピッチ外で待つわけでもありません。
ゴールキーパーの負傷や重篤な負傷、警告・退場相当の反則による負傷など、多くの例外があります。
数字だけで判断するのではなく、「試合のテンポを乱す行為を減らす」という目的から理解することが大切です。
1.スローインとゴールキックに「5秒カウントダウン」
今回、観戦していて最も分かりやすい変化になりそうなのが、スローインとゴールキックの5秒ルールです。
スローインやゴールキックを行うチームが不当に再開を遅らせていると主審が判断した場合、主審は笛を吹き、手を上げて5秒のカウントダウンを行います。
5秒が終わってもボールがインプレーになっていなければ、再開方法が次のように変わります。
遅らせた再開 | 5秒を超えた場合 |
|---|---|
スローイン | 同じ位置から相手チームのスローイン |
ゴールキック | 相手チームのコーナーキック |
特にゴールキックは、自分たちのボールを失うだけでなく、相手にコーナーキックを与えてしまいます。終盤の時間稼ぎとしては、かなり大きなリスクです。
ただし、ボールがタッチラインやゴールラインを越えた瞬間から、自動的に5秒が始まるわけではありません。主審が遅延と判断し、笛と合図によってカウントを開始して初めて適用されます。
一方で、主審は選手がボールを持つまで待つ必要もありません。ボールをゆっくり取りに行く、スローインの位置を不自然にずらす、ゴールキックのボールを正しくない場所に置くといった行為に対しても、カウントを始めることができます。
カウント終了時に、すでに投げる、または蹴る動作に入っている場合は罰しないなど、目的に沿った柔軟な運用も示されています。(※詳細は末尾のYouTube動画を確認ください)
なお、5秒を超えたことだけで、直ちにイエローカードが出るわけではありません。相手チームに再開が移ったあとも、さらに再開を過度に遅らせた場合に警告の対象となります。
2.交代する選手は原則10秒以内にピッチを離れる
試合終盤、リードしているチームの選手が、交代の際にゆっくり歩いて時間を使う場面は珍しくありません。
新しい「制限時間付き交代」では、交代ボードが表示されたあと、交代して退く選手は原則として10秒以内に、最も近い境界線からピッチを離れなければなりません。主審は残り5秒を、手を上げてカウントダウンします。
10秒以内にピッチを離れなかった場合でも、交代そのものが取り消されるわけではありません。
退く選手はそのままピッチを離れますが、代わりに入る選手はすぐには入場できません。チームは一時的に10人で試合を再開し、交代要員が入れるのは、プレー再開から1分が経過したあとの最初のプレー停止時です。
先日のPSM北海道コンサドーレ札幌でも試合終盤にそういった時間稼ぎでキングスレー選手が2分も試合に入れなかったことがありました。
交代を取り消したり、別の交代要員に変更したりすることもできません。
つまり、時間を稼ごうとしてゆっくり退場すると、今度は自分たちが数的不利で戦うことになります。
ただし、負傷によって素早く移動できない場合や、安全上の理由から最も近い場所を通れない場合には、10秒の制限を適用しないことがあります。また、カウント終了時に選手が境界線のすぐ近くまで来ている場合は、交代要員の入場を認めるべきだとされています。
警告が出るのも、10秒を超えたこと自体ではなく、その後も過度に再開を遅らせた場合です。こちらも「10秒ちょうどで機械的に罰する」というより、露骨な時間稼ぎを防ぐための規則と考えた方がよいでしょう。
3.負傷者はプレー再開後1分間ピッチ外へ
負傷対応についても、いわゆる「1分間ルール」が導入されます。
フィールドプレーヤーが負傷、または負傷の疑いによってプレーを止めた場合や、主審がメディカルスタッフをピッチに入れた場合、選手は原則としてピッチを離れます。
その選手が復帰できるのは、プレーが再開されてから1分が経過したあとです。負傷が起きた時点や、ピッチの外に出た時点から1分ではありません。復帰には主審の許可も必要です。
この改正には、二つの目的があります。
一つは、負傷を理由とした時間稼ぎや試合の中断を減らすこと。もう一つは、メディカルスタッフがピッチの外で選手の状態を確認し、本当にプレーを続けられるのかを判断する時間を確保することです。
ただし、すべての負傷が1分間ルールの対象になるわけではありません。主な例外は次のとおりです。
- ゴールキーパーが負傷した場合
- ゴールキーパーとフィールドプレーヤーが衝突した場合
- 同じチームの選手同士が衝突した場合
- 脳振盪や心臓の問題など、重篤な負傷や症状が疑われる場合
- 相手が警告または退場となるような反則によって負傷した場合
- ペナルティーキックを得て、負傷した選手がそのキッカーになる場合
特に重要なのは、悪質なファウルを受けた側が、さらに1分間の数的不利を負わないように設計されている点です。
したがって、「選手が倒れたら必ず1分退場」という理解は正しくありません。何が原因でプレーが止まり、どのような対応を受けたかによって扱いが変わります。
4.VARが確認できる事象が拡大
VARについては、従来の「得点」「ペナルティーキック」「一発退場」「人間違い」という基本的な枠組みを維持しながら、確認できる事象が追加されました。
主な変更は、次の三つです。
明らかに間違った2枚目の警告
これまでは、2枚目のイエローカードによって選手が退場しても、原則としてその警告自体はVARのレビュー対象ではありませんでした。
新規則では、2枚目の警告が明らかに間違っており、その結果として誤った退場が発生した場合、VARが介入できるようになります。
ただし、すべてのイエローカードをVARで確認するわけではありません。「明らかに間違った2枚目の警告によって退場になった」という限定されたケースです。
警告・退場の人間違い
カードを出す相手を取り違えた場合も、対象が広げられました。
反則そのものを一からレビューするのではなく、「誰が反則を行い、誰にカードを示すべきだったか」を訂正するための介入です。
ただし、スイス代表のエンボロが明らかなシミュレーション行為で2枚目のイエローを付け替えられたシーンでは、これはこの項目の解釈ミスをIFABが後に認めています。
明らかに間違って与えられたコーナーキック
競技会が採用した場合、明らかに誤って与えられたコーナーキックをVARで訂正できるようになります。
ただし、長いチェックをして試合を止めては本末転倒です。そのため、映像ですぐに確認でき、再開を遅らせずに変更できる場合に限られます。コーナーキックがすでに行われたあとから、判定をさかのぼって取り消すことはできません。
Jリーグは、このコーナーキックのレビューを2026/27シーズンから採用します。一方、誤ってゴールキックになったケースはレビュー対象ではありません。
5.DOGSOでも、そのまま得点すればカードなしに
DOGSOとは、「決定的な得点の機会の阻止」を意味します。通常、決定的なチャンスを反則で止めれば、退場の対象となります。
ただし、主審がアドバンテージを適用してプレーを続けさせた場合は、これまでも処分が一段階下がり、反則をした選手は警告となっていました。
2026/27シーズンからは、そのアドバンテージによって攻撃側が実際に得点した場合、反則をした選手には警告も退場も与えられません。得点という最大の利益を攻撃側が得たため、それ以上の懲戒処置を行わないという整理です。
一方、アドバンテージを適用したものの得点には至らなかった場合は、従来どおり原則として警告となります。
また、DOGSOかどうかを判断する要素も少し変わりました。
従来からの「ゴールまでの距離」「プレーの方向」「ボールをコントロールできる可能性」に加え、最後の項目が「守備側競技者の位置と数」から、**「守備側競技者と攻撃側競技者の位置と数」**に変更されています。
ボール保持者だけでなく、パスを受けられる味方がどこに、何人いたかも含めて、本当に決定的な得点機会だったのかを判断することになります。
6.ペナルティーキックの偶発的なダブルタッチ
ペナルティーキックで、軸足が滑るなどしてボールが偶発的に両足へ触れてしまうケースについても、扱いが競技規則に明記されました。
通常の試合中のペナルティーキックでは、偶発的なダブルタッチのあとにボールがゴールへ入った場合、キックをやり直します。ゴールに入らなかった場合は、守備側の間接フリーキックです。
PK戦では、偶発的なダブルタッチからゴールに入れば蹴り直し、入らなければ失敗として記録されます。
意図的に2度ボールへ触れた場合は、これまでどおり反則です。偶発的なスリップと、意図的な二度蹴りを区別した規則となっています。
7.Jリーグで採用される二つの退場規定
2026年5月には、IFABから追加の改正も通達されました。このうち、競技会が採用するかどうかを選べる二つの退場規定について、Jリーグはいずれも採用します。
発言を隠す目的で口を覆う行為
相手選手とのやり取りの中で、不適切、侮辱的、攻撃的または差別的な発言が発覚しないように口を覆う行為は、退場の対象となります。ワールドカップでもアルミロン選手が退場になってましたね。
ただし、単に口元を隠して会話しただけで、直ちに退場になるという意味ではありません。相手を挑発するような状況などで、問題のある発言を隠す目的だと判断されることが条件です。
判定への抗議としてピッチを離れる行為
主審の判定に抗議するためにピッチを離れたり、プレーの続行や再開を拒否したりする行為も、退場の対象となります。
ほかの選手にピッチを離れるよう指示・扇動した選手や、実際に選手が離れなくても、そのように促したチーム役員も対象になり得ます。
8.そのほかの主な変更点
目立つ改正以外にも、細かな整理が行われています。
アクセサリーの考え方を変更
文化的、宗教的、医療的、個人的な理由などで身につける物については、危険がなく、安全かつ確実に覆われている場合に限って認められるようになります。
ただし、指輪やイヤリングなどの装身具が全面的に解禁されたわけではありません。危険な物は引き続き外す必要があり、危険な物をテープで覆っただけでは認められません。
審判員のボディーカメラ
競技会主催者が用意し、映像を管理する場合には、主審、副審、第4の審判員がボディーカメラを使用できるようになります。
審判員が個人的に持ち込むカメラは認められません。また、VARとの通信を中継する目的では使用できませんが、映像や音声が懲戒手続きに使われる可能性はあります。
間違った再開にもアドバンテージ
フリーキックやスローインなどが正しく行われなかったとしても、相手チームがボールを奪い、有利な状況になった場合には、主審がアドバンテージを適用できることが明確になりました。
再開方法を機械的にやり直すよりも、反則をしていないチームが得た利益を優先する考え方です。
ドロップボール
審判員や外的要因の影響によってプレーが止まった場合、単純に最後にボールへ触れたチームではなく、プレーが続いていればボールを保持した、または再開権を得ていたと考えられるチームへボールを戻す考え方が明確になりました。
A代表の親善試合における交代人数
各国A代表の親善試合では、使用できる交代要員が原則6人から8人へ増えます。両チームが合意し、試合前に主審へ通知した場合は、最大11人まで使用できます。ただし、交代できる回数には原則として3回という制限があります。
また、「キャプテンオンリー」の運用は、2027年7月1日からすべての競技会で必須となることが予告されています。
まとめ――カードを増やすより、時間稼ぎを割に合わなくする改正
今回の競技規則改正を一言で表すなら、時間稼ぎをした選手個人にカードを出すだけでなく、そのチームが競技上の不利益を受ける仕組みに変える改正です。
スローインを遅らせれば相手ボールになる。ゴールキックを遅らせれば相手のコーナーキックになる。交代を遅らせれば一時的に数的不利になる。負傷によって試合を止めれば、原則としてプレー再開後1分間は戻れません。
一方で、主審には「本当に時間稼ぎなのか」「選手が再開や退場の動作に入っているか」「安全上や医療上の事情がないか」を判断する余地も残されています。
そのため、シーズン序盤は「5秒を超えたのになぜ反則にならないのか」「負傷したのになぜ選手が残っているのか」といった疑問が出てくるかもしれません。
大切なのは、数字だけを見るのではなく、それぞれのカウントがいつ、どのような条件で始まるのかを確認することです。
2026/27シーズンは、主審が手を上げて行うカウントダウンにも注目しながら観戦すると、新しい競技規則の狙いがより分かりやすくなるでしょう。
参考資料:
※すごく長いですが、これを見れば事例付きで解説がありますので、余裕のある方ご覧下さい