グラぽ

名古屋グランパスについて語り合うページ

メニュー

フットボールの主役は誰だ? 名古屋グランパスU-18の二冠に寄せて

クラブの歴史を変える「三冠」へ

「中央から崩すことに固執しなくとも、サイドに展開してピッチを広く使ってもいいのでは?」

YouTubeで放送された準決勝の大宮戦、そしてタイトルを賭けた決勝のガンバ戦でも、解説者からはこんな声が聞かれました。その度に「ふふっ」と笑いを禁じ得なかったサポーターは大勢いたことでしょう。

Jユースカップ2019優勝
Jユースカップ2019優勝

先日のJリーグユース選手権大会(Jユースカップ)を制し、日本クラブユースサッカー選手権(以下、クラ選)に続き二冠を果たした名古屋グランパスU-18。今回は彼らの戦いについて、少しばかり文章を寄せたいと思います。

「主体的に、ボールとともに、そして楽しく」

私が彼らを初めて観たのは、クラ選の決勝戦となった鳥栖戦です。悲しいかな、この試合に至るまで試合を観る機会に恵まれることはなく、初観戦はつい最近。「一体どんなフットボールをしているんだろうか」そこにあったのは、大きな期待、そして未知なるものを見る好奇心。

画面越しに観るピッチ上にあったのは、正確な技術をベースに、主体的にボールを動かし相手を翻弄するユースの面々の姿。出したら寄る、あぁ場所ではなく、人を崩しにかかるその姿勢も、トップチームの志向するそれを見事に体現する彼ら。相手のビルドアップになれば、ツートップと両サイドハーフが高い位置から最終ラインに圧をかける姿も同じ。今となっては、どこか懐かしさすら感じるそのスタイル。

この大会、大活躍だった村上
この大会、大活躍だった11 村上千歩

改めて振り返っても、あのときトップチームが志向していたフットボールは、「アカデミーと連携する」なんて簡単に言える代物ではありませんでした。だって、決まった型がないんです。「あそこに立て」「この場面ではこう動け」そんな常識が通じない。技術をベースに、相手の逆を突いていくフットボール。つまり、「止める蹴る外す」この技術論を実際に選手達に落とし込む指導力に加え、それをチームの「目」にするために、どうこの技術で仲間を繋げていくのか。このフットボールの根幹を成す理論そのものに対する理解力もまた、当然のことながら問われたことでしょう。つまり、それらを選手達に落とし込むには、相応のリテラシーが必要であったはず。誰でも真似出来る、そんな分かりやすいマニュアルが存在するフットボールでは決してなかった。

古賀監督の指導の秘密

何故それがここまでユース年代の彼らに浸透したのか。その答えは、試合後に発せられる古賀監督の言葉の数々に隠されている気がしています。彼の言葉には、このフットボールに対する高いリテラシー、またそれを実現するだけの指導力、意欲の高さが窺い知れます。特に目を見張るのがその高い言語化能力。あれほど難解だったトップチームの理論(というか監督の言葉)を、ここまで分かりやすく噛み砕き話すことが出来るのかと。最初は、ユース向けだからここまで噛み砕く必要性があるのだと思ったのです。ただ最近は受ける印象が変わりました。教える相手がユースだから、いや、もはやその理論が彼の血となり肉となっているのではないか、と。

古賀監督と小西社長
古賀監督と小西社長

彼らを支えたものは「日々の積み重ね」

さて、話を現在に戻しましょう。

おそらく、今回のガンバ戦は、選手達にとって相当厳しい戦いだったはずです。勝ち続けたからこその連戦の日々、当然年間でこれだけ試合数をこなした蓄積もあったでしょう。それは怪我人の多さ、この事実が物語っていました。

それでも彼らは決勝のあの舞台で、見事に大勝を収め、二冠を手中としました。そのパフォーマンス自体は、例えばクラ選の頃に比べれば、若干落ちていたようにも思います。特にボールホルダー(保持者)に対して「顔を隠さないための」細かい動き。それをやり続けることが求められるフットボールです。ボール保持した際のフォローの数、その速さ、つまり味方の動きそのものにそれは如実に現れます。この大会、広島戦、大宮戦、そしてこのガンバ戦とテレビ観戦しましたが、その運動量自体はそこまで豊富とは言えませんでした。

では何故彼らは優勝出来たのか。彼らを支えたもの、それは「技術」であったと思います。彼らが積み重ねた正確な技術が、ボール保持を容易にし、また「相手を走らせる」ことに役立った。ただ走ることではなく、「ボールを丁寧に扱う」ことがベースにあったから、連戦を重ねようともそこだけは衰えることがなかった。今の彼らを支えているもの、それは彼らが積み重ねた日々そのものではないでしょうか。

石田もよくゴール前に顔を出した
9 石田凌太郎もよくゴール前に顔を出した

もちろん試合巧者でもありました。

時間帯によっては、相手を「受ける」場面も多々あった。それでも忍耐強く、粘り強く彼らは守りきりました。それだけでなく、彼らのプレーからはチームへの犠牲心も感じられたのです。

このスタイルを標榜する上で、トップチームにはあって、彼らにはなかったもの。それは「選手を集める術」です。クラブユース年代では、怪我人が出ようとも、当然補強をすることは出来ません。だからこそ、彼らはそれを「チームの一体感」で補った。

戦況によっては、選手達の判断で身の丈にあった振る舞いも可能だった。そう、このフットボールでもう一つ重要な要素は、選手達の「主体性」です。

だってこのフットボールの主役は選手達だから。

それを可能とする自主性を育む土壌がこのチームにはあり、きっとそれは選手達自身が率先して積み重ねてきたのでしょう。このチームを見ていると、表現しようとするフットボールのそれはクラブユースの役割を明確に意識しつつも、一方で個々の振る舞いに目を向けると、古賀監督が持ち込んだ大学サッカーの匂いも感じるんです。この融合が何より素晴らしい。その姿はまさに、ただトップを模倣しただけではない、間違いなく「古賀カラー」に彩られた、U-18オリジナルのそれでした。

目標を現実に。歴史に名を刻む「三冠」まで、あと一つ

2017年、J2からの昇格を目指すトップチーム同様に、彼らもまた、高田監督のもとプレミアリーグ昇格を目指し見事その切符を掴み取りました。その翌年、早稲田大学から古賀監督を招聘し、クラブは明確に「トップチームとアカデミーの連携」をスタートした。そして今年、彼らはこの二年間で撒いた種を、「結果」という形で収穫しようとしています。

残念ながらトップチームは今年、残留争いに巻き込まれその進路を変える決断を下しました。ただそんなトップチームとは対照的に、彼らは目の前の試合に勝って勝って勝ち続けた。先輩達が残してくれたこの舞台で、その道から決してブレることなく、今日まで貫き続けた。そして今まさに、その先輩達すら届かなかった未知の領域に迫ろうとしています。

少なくとも、このユースの舞台において、彼らは最強です。彼らの土俵で、彼らの上に立つものはいない。彼らを倒すには、彼ら以上の技術で打ち負かすしか術はないのだから。

最後に。私よりもきっと、このチームをずっと見続けてきた方々の方が感じているはず。「このチームは、強い」と。

目標とした未知の領域に足を踏み入れましょう。三冠、へ。

もう1つ、栄冠を
もう1つ、栄冠を

本原稿の画像は、すべて月光ながらさんからご提供いただきました。

Leave A Reply

*

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

Share / Subscribe
Facebook Likes
Tweets
Hatena Bookmarks
Pocket
Evernote
Feedly
Send to LINE