たしかに、グランパスのグッズって「いいな」と思うものは多いんですけど、ときどき「あと一歩こうだったら絶対買うのに…」って惜しい気持ちになることもありますよね。
自分で配置やデザインを選べる仕組みがあれば、サポーターとしては純粋に嬉しいですし、クラブ側も「どういう組み合わせが人気なのか」というデータが取れるので、発想としてはかなり面白いと思います。
ただ、ユニクロのUTme!みたいな仕組みをそのまま公式グッズに持ち込めるかというと、これがなかなか難しい。
UTme!って、Tシャツやトートといった定番の無地商品があって、その上に画像やテキストを乗せるだけ、というところに巧妙に範囲を絞ってるんですよね。対応店舗ではその場でプリントもできる。
つまり、商品ライン・販売導線・プリント設備・注文システム・デザイン審査のルールが、ぜんぶワンセットで噛み合っているから成立している、という話なんです。
これをクラブ公式でやろうとすると、プリンターを置けば終わり、というわけにはいきません。
エンブレム、選手名、背番号、ユニフォームスポンサーの表記、Jリーグまわりの権利、画像の著作権、それから誹謗中傷や不適切デザインのチェック、返品対応、在庫管理、品質管理…と、確認しないといけないことがどんどん芋づる式に増えていきます。
特にスポーツクラブのグッズは「公式」として外から見られるので、自由度を上げれば上げるほど、運用側の負担も比例して重くなる構造なんですよね。
それと、これは個人的に結構大事だと思っていることなんですけど、「自由に作れる」って一部のファンにはめちゃくちゃ刺さる一方で、多くの人は「公式が出した良いデザインの中から選びたい」だけだったりもします。毎回自分でデザインしたい人ばかりじゃない、というか。ここを見誤ると、コストかけて作った仕組みが一部の熱心な層にしか刺さらない、ということになりかねません。
なので現実的には、完全自由デザインを目指すより、いくつかの公式テンプレートから選ぶ、名前・背番号・ワンポイントの位置だけ可変にする、人気投票で商品化する、期間限定の受注生産にする、スタジアムでだけ簡易カスタム品を売る、みたいな方向のほうがクラブには馴染みやすい気がします。グランパスレッド、選手シルエット、背番号、過去ユニ風、スタジアムモチーフあたりを公式が安全な素材として用意して、その中で組み合わせを楽しんでもらう、という形なら、サポーターの「自分好み」もある程度満たせるし、クラブ側もリスクをコントロールしやすいですよね。
ということで、まとめると「単純に経費がかかるから無理」というよりは、設備費だけじゃなくて権利確認・デザイン審査・品質管理・販売システム・問い合わせ対応まで含めた運用コスト全体が重いから、完全自由デザインはやっぱり簡単じゃない。ただ、テンプレート選択型の半カスタムとか、受注生産・人気投票型の企画なら、十分に可能性はあるんじゃないか、というのが個人的な予測になります。
正直なところ、自分がクラブに求めたいのも「全部自由に作らせてほしい」ではなくて、「サポーターが欲しいデザインとのズレを、もうちょっと拾い上げる仕組みがほしい」のほうが近いんですよね。
完全カスタムサービスを一気に立ち上げるよりも、人気デザインの投票、試作品への反応確認、受注生産型の企画を増やす、あたりからのほうが、現実的でかつサポーターの満足度も上がる一歩なんじゃないかな、と思っています。
参考:UTme!は「カスタム製造」ではなく「カスタム装飾」
Uniqlo UTのUTme!のようなサービスは、実は専用の縫製ラインを持っているわけではありません。あれは「既製の無地Tシャツ(ブランク)に対して、後工程で印刷だけをカスタマイズする」モデルです。Tシャツ本体は通常のUTと同じ大量生産ラインから流れてきて、最終工程の前で枝分かれして、DTG(Direct to Garment、インクジェット)プリンタや簡易シルクスクリーンで個別印刷される、という構造です。
つまり「カスタムできる範囲 = 表面の絵柄だけ」に意図的に制限することで、製造ラインの大半は標準化されたまま、最後の数分間だけ個別対応する、という巧妙な設計になっています。
カスタマイズのレイヤーで難易度が桁違いに変わる
アパレルのカスタマイズは、難易度がレイヤーによって大きく異なります。表面のグラフィック(プリント)はDTGやDTF転写、昇華転写の技術進化で、ほぼプリント業界の仕事に落とし込めるレベルになりました。色や柄の組み合わせも、ブランクの色バリエーションを増やせばそれなりに対応できます。
一方、本当に難しいのはカット&ソー、つまり「型紙そのものを個別に変える」領域です。これをやろうとすると、生地の自動裁断、個別の縫製指示、検品、梱包まで個別管理が必要で、まさに「専用ライン」の話になります。ZOZOSUITやAdidasのSpeedfactory(2019年に事実上撤退)が苦戦したのもここで、自動化が進んでも縫製工程の柔軟性は人間の熟練に依存する部分が大きく、量産効率と両立しません。
中間に位置するのがニットで、島精機のWHOLEGARMENT(無縫製ニット)のような機械を使えば、データから直接1着まるごと編み立てることができます。これは比較的カスタム適性が高い領域ですが、機械単価が高く(1台数千万円規模)、ニット製品に限定されます。
そう考えてみるとUTme!っていうのはすごくよく考えられたものだと思います。
